石田 岳彦
まず、見えてきたのは、参道の階段の両側を飾る鮮やかな彼岸花の群れ。
近鉄大阪線榛原駅から1時間に1本のバスで高井バス停まで。さらに20分以上歩いて(微妙に登りのうえ、歩道も整備されていないので、時間以上に疲れます。)ようやく到着しました。
交通の便の悪さもあり、観光ガイドにはまず載っていませんが、思いのほか人が多いです。駐車場にも多くの自動車がとまっています。おそらく彼岸花目当てで近隣の県から来た人たちでしょう。
(写真―彼岸花畑)
仏隆寺は山1つ超えたところにある室生寺の末寺です。室生寺までの道がハイキングコースにもなっていて、「室生寺まで〇km」といった立て札も見えます。
お寺の創建については、平安時代に空海の弟子の堅恵(けんね)が建てたとか、それ以前に別の僧侶が建てていたとか、幾つか説があり、はっきりとしないそうです。
いずれにしても地味な(失礼)縁起ですが、その分、リアリティは感じます。
地方の比較的小さなお寺の縁起話に聖徳太子や行基菩薩が出てくると(「言うだけなら只だと思っているだろう。」と思わず突っ込みたくなるくらい、よく聞きます。)、
それだけで眉唾ですから。
階段を上る途中の右手に桜の大樹があります。「千年桜」と呼ばれているそうで、確かに千年生きていそうな堂々たる姿です。花の季節にもう一度訪ねてみたいですね。
(写真―百年桜)
もっとも、文化財ファンの私のお目当ては実のところ、彼岸花でも千年桜でもありません
(そもそも彼岸花の名所ということも、千年桜の存在も知らずに仏隆寺に来たわけですが、それでいて、偶々、彼岸花の綺麗な季節にやってくることになったのは、幸運でした。
御仏のお導きでしょうか。お賽銭を少し多めに入れておきましょう。)。
本堂の右奥にある石造りのそれは、石室と呼ばれています。そのまんまです。
立方体の上に四角錐の屋根を載せたような形をしていて、正面中央に狭い通路があり、内部に入ると、一番奥の窪みに小さな石塔がすっぽりと収まっています。この塔が上記の堅恵のお墓といわれているそうです。
(写真―石室)
世の中には、比較的きれいにピラミッド状になっている山を人工物だと決めつけて「日本のピラミッドだ!」と騒いでいる人も少なからずいるようですが、丸ごと石造りで、(上の方のみだけど)
四角錐になっていて、しかもお墓ということを考えれば、仏隆寺の石室こそ、「日本のピラミッド」の名にふさわしいかも知れません。サイズはかなり可愛らしいですけど。
境内には他に鎌倉時代末の十三重石塔と大和茶発祥の地という記念碑があります。
空海が唐から茶の種を持ち帰ってこの地で栽培したそうで(最澄にも似たような話があり、大津市坂本に日本最古の茶園の記念碑があります。)、
現在に至る大和茶の起源となったとのことでした。
交通の便は悪いですが、見所はそれなりにあります。車で行くか(その場合、かなり遠回りになりますが)、ハイキングを楽しむ時間と体力の余裕があれば、室生寺とセットで見て回るのも楽しいかも知れません。(完)