2010年03月26日

◆癌ではないのか金総書記

石岡荘十

北朝鮮の金正日総書記の余命についての情報が飛び交っている。万が一のことがあれば日本を含む極東情勢に激震をもたらす可能性が高いだけに、安全保障上、あるいは拉致事件関連でも重大な関心が集まるのは当然だろう。

本メルマガ1854号(3/19)で、古澤氏が集約した情報によると、キャンベル米国務次官補は、韓国滞在中に非公開な席上で、北朝鮮情勢や金総書記の後継問題についてかなり踏み込んだ情報を提供していた。とくに金正日総書記の健康について、「寿命はあと3年ぐらいだろう」と述べたという。

ところが記事を読み進むと、医学的に頭をかしげるところがある。

<脳卒中で倒れて以降、金総書記のここ1年間の写真や映像を分析すると、手の色が黒ずんでいる一方で、爪は非常に白いことから、腎臓にも問題があるのではないかと推測されている>

この部分だ。
普通、医者が余命宣告をする病気は進行性の病に罹った患者に対してだ。典型的なものが癌だ。最近は早期発見で完治に近い健康を回復する症例が増えてきている。有名人で言えば、プロ野球の王監督(胃がん)、仙石大臣(胃がん)、与謝野財務大臣(喉頭がん)などのケースがそうだが、これらはいずれもがんが転移をしていない症例であって、転移をした癌について現代最新医学はまだ完治する治療法には到達していない。

転移が確認された進行性のがんの場合、その進行の度合いによって、多くの患者が余命宣告を受けている。

そこで、金総書記の病名は脳卒中だと言われている。脳卒中はいうまでもなく脳の血管が詰まったり破れたりし、そこから川下の細胞が壊死する病だ。これによって壊死した細胞がつかさどる運動機能が損なわれる。

金総書記の場合は、公開された映像などから判断すると、右脳の細胞が詰まったか切れた。損傷したところが比較的細い血管だったため、軽症で済んだということだろう。

だが、脳卒中のほとんどは、それらしき前兆はあってもある日突然、発症する類の病気だ。進行性の病ではないので、発症を根拠に「あと何年で死ぬ」などと余命を推測することは出来ない。

<腎臓が悪いらしい>とも言っているが、同じ理由で、「余命3年」と推測する根拠にはなりえない。

ただ、脳卒中も、心臓病、腎臓病も生活習慣病のひとつではあるから、広義の進行性の病ではある。が、それを根拠に余命を予言することは医学的に不可能である。

<昨年8月にクリントン元大統領が金総書記と面会した際には、米国は応急医学の専門医を同行させるなどして、金総書記の健康状態に関する情報をさまざまな角度から収集した>という。

だから「あと3年発言」が信憑性の高い情報だというのか。頭をかしげる。

クリントン氏に同行した医師らが「まあそう長くないな」という程度の発言はしたかもしれないが、伝えられた情報だけを手がかりに「あと3年」と判断するのは無理がある。
では「あと3年」が伝言ゲームのように流布しているのはなぜか。
考えられるのは次の2つのケースだ。

まず、公表されていない確度の高い情報が他にある。たとえば、金総書記がじつは癌であるという情報を米情報機関が得ている可能性はないか。それなら、余命を云々する根拠にはなり得る。

もうひとつ考えられるのが、何らかの理由で韓国での米軍存在意義・重要性を高め、危機感を煽る必要があった。その口実に金総書記の健康情報が使われたのではないかという見方だ。

古澤氏の記事によれば<マレン米合同参謀議長は昨年10月にソウルで開催された韓米軍事委員会(MCM)の会合で、さらにシャープ駐韓米軍指令官も今年の初めに、韓国軍に対して急変事態に備えた合同訓練の実施を提案した>という。軍事訓練の口実に、総書記の健康問題を利用したのではないかという疑いである。

今回、訪日をスキップしたキャンベル氏は改めて日本を訪れるといわれる。政治的な関心はまず在日米軍基地の問題だろう。が、「あと3年情報」の根拠についても、しかと確認する必要がある。         20100319
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