2010年06月28日

◆山科だより「"クワガタ虫"、"糞虫"」D

                 渡邊好造
DSC00085.JPG
山科疎水道で採集された昆虫標本については5回目。この稿に対し気持ちが悪いとの悪評もあったが、山科にまだこれだけ自然が残っていることに驚きの声も多かった。

 写真の標本箱左側は"クワガタ虫"。甲虫目クワガタ虫科に属し、日本では約40種。雄の大きな顎が戦国時代の兜についている鍬形に似ていることからこの名前がついた。山科で採れたうち立派な顎をもつのは写真左端上の「ミヤマクワガタ」1頭のみで、顎をもつ雄は2段目の3頭と最下段2頭目のわずか5頭。どういうわけか採れるのは「コクワガタ」(胴長2、5センチ)の雌が大半である。

 "クワガタ虫"は樹の枝にいるのと樹の穴に潜むのとの2種類がいる。枝にいるのは樹を蹴飛ばせばすぐに落下するが、白布などを敷いておかないとどこに落ちたかわからなくなる。穴に潜んでいるのは煙草を水に浸けて作ったニコチン液を注入すると這い出す。写真にあるのは全て疎水道を歩いていたもの。

 写真真ん中は蜻蛉(せいれい)目の"トンボ"で、日本では約200種、かっては都会でも数多くみられた。山科疎水道では最下段の「オニヤンマ」を時折見かけるものの、よく知られた「ギンヤンマ」の姿はない。"トンボ"の採集には捕虫網を必要とするが、写真の標本は蟻に食われる寸前の死んでいたものばかり。

 右下の2頭は、甲虫目コガネ虫科の「カブト虫」の雌(胴長4、5センチ)で、立派な角をもつ雄は未だ採れない。「カブト虫」は、昭和60(1985)年天然記念物・絶滅危惧種に指定された沖縄の「ヤンバルテナガコガネ(山原手長黄金)」(同6センチ)につぎコガネ虫科で日本2番目の大型種である。「カブト虫」は養殖が盛んで雌雄ペアで飼育用に売出され、子供に大人気である。樹液にたかるが、写真の2頭は夜間の街灯に激突し落下していた。
なお、新種「ヤンバルテナガコガネ」の発見が昭和58(1983)年と遅れたのは、生息地の毒蛇ハブの危険と米軍基地周辺の立入禁止のせいだったらしい。

写真右側7段目まではコガネ虫科の3種類の糞虫で、日本には百種類以上いるらしい。上から3段目までが「センチコガネ」、その下3段分は「オオセンチコガネ」、ついでその下は山科周辺固有種の「ミドリセンチコガネ」である。
 この種は糞虫の名前の通り動物の糞(人糞も含む)を食べ、そこに卵を産みつける。さらに糞の下に穴を堀り巣をつくっている。”センチ”の名前は、便所のことを"雪隠(せっちん)"と称したのが訛ったらしい。山科疎水道では糞をひっくり返してまで採集したわけではなく、歩行していたのを拾った。しかし、この種の虫を本格的に採集するには動物の糞を見つけるのが先決で、糞が見つかると30センチ程の長いピンセットで辺りを掘って掴み出す。

 糞虫の採集は、奈良県の若草山の奥「奈良奥山ドライブウエイ」周辺がまさに宝庫で、特に「ルリセンチコガネ」はここでしか見かけなかった。そして"カミキリ虫"、"オサ虫"など数多くの甲虫類も採れた。奈良固有種として昭和7(1932)年天然記念物に指定された小型の蝶「ルーミスシジミ(2、5センチ位)」保護のために常駐監視員が周辺を巡回していて捕虫網の使用は絶対禁止。奈良の「ルーミスシジミ」はその後の薬剤散布で絶滅した。

 筆者が中学生の頃、虫仲間3人で糞虫採集の糞を探す手間を省こうということになり、近所で貰った牛と馬の糞(牛馬を飼っている家がまだあった)を3杯のバケツに詰め込み新聞紙を被せただけで奈良行の近鉄電車に乗った。途中の生駒駅辺りで車掌室に連れていかれ「乗客から臭いという苦情がある。そのバケツの中は、、?」、説明しても理解されない。あげくがすぐに下車しろとのこと。「もう二度としません。今回だけは、、」と謝っているうちになんとか奈良駅に到着し無罪放免。
 その日、一周10キロ位のループ状となった「奈良奥山ドライブウエイ」のここぞと思う所に牛馬糞を設置し、もう1周して再び同じ場所に戻るまでの全行程休憩なしで約6時間の強行軍。糞虫の大収穫はあったがくたびれ果てて二度とやらなかった。(完)
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