2010年07月16日

◆復活イタセンパラに早くも危機

毛馬一三

5年ぶりに復活した大阪淀川に国の天然記念物のイタセンパラが、早くも“危機”に見舞われている。予想もしないことだっただけに、信じられない。

本誌(7月9日刊1973号)で、絶滅同然の大阪淀川のイタセンパラを復活させようと、国土交通省淀川河川事務所などが昨秋放流した人工繁殖の雄と雌の成魚500匹が、今年6月までの調査で、全長10〜15ミリの稚魚133匹の生息が確認されたことを掲載した。

大阪に住む者として手放しで歓喜したのだが、何と1週間もたたない内に、生息が確認された稚魚の133匹に危機的環境が迫っているということが、明らかになったのだ。(読売オンライン)

それによると、
1)イタセンパラが卵を産み付ける二枚貝の大量死が、淀川で相次いでいる。
2)数年前から住み着いた外来魚で、ネズミの仲間のヌートリアがイタセンパラの稚魚を食べている。
という。

イタセンパラは、全長7-8 cm、最大で12 cm以上。タナゴ類としては比較的大型。体形は著しく左右に扁平で体高比1.9-2.3と体高が高く、オスメス間の体格差はあまりない。寿命は1〜2年。95年に「種の保存法」の国内希少野生動植物種に指定されている。わが国の貴重な天然記念物だ。

確かに、イタセンパラに懸念される危機的環境とは、第一に生息基地「天然ワンド」への、国の無謀かつ無思慮・無計画な河川改修が要因であり、第二には周辺の都市化にともなう生活・工業排水による水質汚濁や河川用水路への農薬流出だった。

この影響で、イタセンパラは、5年も淀川から姿を消したのだ。

ところが、今度の危機環境は情況が違っている。つまり一つはイタセンパラの産卵に欠かせない二枚貝類の大量死が明らかとなりだし、イタセンパラの繁殖環境が劣化して、稚魚を生むことが不可能な新事態が現実となってきたのだ。

30年以上淀川の生物を観察している大阪市立大桐中学の河合典彦教諭によると、二枚貝の被害は、イシガイ、トンガリササノハガイの2種類。今年複数回、ワンドで、中身をえぐられた同貝の死骸を多数見つかったという。貝柱は残っており、動物に食いちぎられた可能性が高いという。大切な二枚貝が死滅の方向に向かっている。

もう一つは、増殖した体長50〜70センチの外来魚で、ネズミの仲間のヌートリアがイタセンパラを食べて仕舞う悲惨な要素が目立ち出してきているというのだ。国土交通省淀川河川事務所の河川敷観測カメラも、ワンド内を盛んに動き回るヌートリアを確認している。

外来生物に詳しい村上興正・京都精華大非常勤講師(保全生態学)は、「ある個体が偶発的に味を覚え、群れの中で広がったのだろう。放置すれば、淀川全体の生態系に悪影響を及ぼす」と警告する。(読売オンライン)
とにかくこの2つの環境悪化がイタセンパラノ復活の可否に影響を及ぼすことは予測されてはいたが、こんなに早く稚魚133匹の生存と増殖を阻害していく要因に浮かび上がってくるとは、関係者も予想外だった。

環境委員会メンバーでもある河合教諭は「イタセンパラの復活のためにも、早急に対策をとる必要がある」としている。

となればイタセンパラが卵を産み付ける二枚貝の保護とイタセンパラを食べる外来魚のヌートリア撲滅の2対策を緊急課題として、さしあたりは、立ちはだかる思わぬ敵にたいし駆除や囲いの設置などの対策を国と大阪市が真剣に取り組むことが急務となる。

喜びに心が躍ったイタセンパラノ復活が、本当にぬか喜びに終わっては欲しくはない。わが国の天然記念物イタセンパラの「絶滅」など考えたくもない。保護対策のために関係者の知恵と行動に期待したい。(了)

■本稿は7月17日(土)刊全国版「頂門の一針」1981号に掲載
されました。
<目次>
・潰れた「輿石参院議長」:渡部亮次郎
・中国はなぜ脅威なのか:古森義久
・立場の逆転、位置の転換の理論:宮崎正弘
・復活イタセンパラに早くも危機:毛馬一三
・殿、「常在戦場戦間期」のご覚悟を:平井修一
・當局はローマ字をどうするつもりなのか:上西俊雄
・話 の 福 袋
・反     響
・身 辺 雑 記
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