2010年10月01日

◆消費者金融業「武富士」の倒壊

渡邊好造

消費者金融業の大手「武富士」が会社更正法の適用申請をするというので、新聞テレビなどマスコミのトップニュ-スになっている。銀行借入れや社債など負債総額は判明しているだけで約4千億円に上り、今後さらに増えるらしい。

同社は、2002年3月末融資残高1兆8千億に達したこともある。今ではプロミス、アコム、アイフルについで営業収益4位であるが、かっては断然他社を引離し融資残高、収益ともにトップだった。

他社に離された最大の要因は、大手銀行系列などの傘下に入らず独立系として歩み、資金繰りに苦しんだことによるらしい。その代り資金導入先からヤイノヤイノと注文を付けられ、顔色を伺ったり、役に立たない人を押付けられたりもなかったはず。

そして、20年ほど前のようにトップ街道を常に歩んでいたことを意識さえしなければ、左団扇ではなかったか、、。それが一変したのは一連の過払い利息返還請求騒動で、これさえなければ経営内容が悪化することもまずなかった。

念のために消費者金融業界にからむ法律を整理すると、、。

融資利息は、出資法の上限が年29、2%、利息制限法が年20〜15%の2本立てで、業者は客と契約さえすれば高い方の29、2%が許されていた。これがいわゆる「グレ-ゾ-ン金利」である。

ところが、2006年に上限金利は20〜15%以下でないと違法だとの最高裁判決があり、それも客がこれまで余分に払った以前の利息、過払い利息も遡って返すべしとなった。

過払い利息が返ってくるとして喜んだのは客だけではなく、業者を相手に返還請求業務手続きを請負う弁護士、司法書士も仲間入りし、なかには法外な手数料でボロ儲けしている輩もいるらしい。最近のテレビ広告で「法律相談は○○法律事務所へ」が目立つのにすでにお気づきだろう。

ともあれ、消費者金融業者はこの過払い金返還請求に追いまくられ、そのために一体幾ら準備すればいいのか不明で中小業者は次々と廃業していった。武富士もその例外ではなく、分っている負債総額以外に未請求分も含めた過払い利息は数千億円、このままだとまだ増え続けるに違いない。

これに追いうちをかけたのは、本年6月18日施行の新貸金業法で「総量規制=貸付は年収の3分の1以下、年収証明の提出、収入のない主婦は夫の要了解、情報センターへの登録」が課せられ、残高を伸ばせないから利益があがらず、各社音を上げることになった。

筆者に言わせると、この業界がこんなに大きくなったのは間違いなのである。実業でなく虚業が大きくなり儲けすぎると袋たたきに遭うのは世の常である。

業界が注目され始めたのは1964年の東京オリンピックの前後といわれている。当時は日歩30銭(100円につき1日30銭=109、5%)という超高金利にもかかわらず利用者は店頭に列をつくり、新聞、週刊誌では庶民に手軽に金を貸す便利なところができたと賞賛された位であった。

その秘密は、銀行など他の金融機関が目を向けなかった個人への融資を始めたことで、担保、保証人や印鑑証明なしで、比較的簡単に金を借りられたことにある。しかも対象がサラリ-マンで印鑑証明をとることも知らない連中であった。印鑑証明がすぐにとれるのは逆にいうとすでに借金があるということに注目した。

従来の金融機関では考えられなかった常識破りの簡便システムである。一時、業界は「団地金融」と呼ばれたこともある。自宅が公社公団の団地であれば、最優良顧客だった。団地は収入レベルの基準が厳しく入居者はエリ-トであり、公社公団が保証人になったようなもの、、。

貸付は店頭とは限らず、会社・自宅へも配達したが、これで本人の所在確認ができた。自宅の玄関の履物が揃えてあれば几帳面な人だと分る。常連客になると麻雀荘に部下のような振りをして”会社の書類をお持ちしました”として現金入りの封筒を届け、書類作成は翌日。

客はいても、問題は資金がない。ある会社では給料と引換えに自社株を渡したというし、水商売のオネ-サンに借りたり、高金利の社内預金もあった。そのうちに大手銀行が保険会社経由で秘密融資するようになったが、代りに定年退職した役にたたないオッサンを送り込んできた。

1980年代半ばころだったか、武富士が百億円の融資残高になったと聞いて驚いた記憶がある。それがいつの間にこんなドデカイ業界になってしまったのか。


業界の任意団体「日本消費者金融協会(略称・JCFA)」の全盛時の優良加盟社は150社だったのが、この7月末で大手のみの27社にまで減ってしまって、まさに寡占状態である。
 
消費者金融業は、もともと歩道の隅にヒッソリ咲いた可愛い花だったのである。ここまで大きくなれば当然のこと歪が出てくる。業界は原点を思い出せ。(完)

 

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