2010年10月03日

◆問われる検察の存在

増田健一

郵便不正事件を巡る大阪地検特捜部の主任検事による押収資料改ざん事件で、上司だった前特捜部長と前副部長が、犯人隠避の疑いで1日午後9時45分最高検に逮捕された。

故意の改ざんと知りながら過失として問題を処理し、地検の検事正らに「問題はない」と虚偽の報告をした疑いによるものだ。

翌2日、最高検はすぐに動き出し前特捜部長らが勤めていた京都地検(京都市上京区)や神戸地検(神戸市中央区)などの捜索に乗り出した。最高検が「身内」を自ら捜索するという、検察組織を揺るがす事件の解明にのり出した。

怒りがこみ上げてくるのは、「法と証拠」を盾に巨悪に立ち向かう筈の検察庁特捜部が、意図的に証拠を改ざんしたこと目をつぶり、誤って書き換えたように組織的な画策の容疑が浮かび上がってきたことだ。

朝日新聞によると、<その疑惑が表面化する発端は、1月にあった元局長の初公判だった。改ざん前のディスクのデータが捜査報告書に残り、それが検察の主張と矛盾することを弁護側が指摘したのだ。

主任検事は検察の主張とつじつまが合うようにデータを書き換えており、同僚検事に改ざんの事実を告白していた。こうした情報はすぐに前副部長に伝わり、前部長にも報告された。 前部長らは主任検事から事情を聴いたものの、検事正ら上司には「問題ない」と報告していた。>という。

となれば、データ改ざんがわかった時点で検察庁内部で適切に対応していれば、厚生労働省の元局長、村木厚子さんの無実はもっと早く証明されたことは論を待たない。

どうしてそのような「法と証拠」を踏みにじり、罪も無い被告を有罪に持ち込むシナリオを描き、獄中に放り込む強権行使を行おうとしたのだろうか。

産経新聞によると<「捜査はやるかやられるかの闘い。容疑者に負けて帰ってくるようなやつは許さない」。平成20年10月、特捜部長の就任会見で大坪弘道はこう強調した。そのためか元大阪府議の弁護士による脱税事件や、音楽プロデューサーの小室哲哉を逮捕した詐欺事件など、耳目を集める事件を好んだ。

郵便不正事件は当初から大物国会議員の関与があると吹聴し、東京地検特捜部から「大阪特捜はすごい」と羨望の声を湧き立てた。華やかな活躍の陰で、部下の検事からは「ついていけない」とこぼす声が漏れた。大坪には「瞬間湯沸かし器」というあだ名がつき、佐賀にも「策士」という評価が定着。人心は離れていった>という。

早い話、逮捕された前特捜部長と前副部長らは、自己の立身出世と名誉欲、実力を誇示したいががために、権力の頂点座を利用して、「冤罪」をつくり出すことも意に介さない改ざんと組織的な隠蔽を試みたと見るのだ妥当のようだ。

余談ながら筆者は、10数年前大阪の経済事件の参考人として地検特捜部検事から事情を聞かれたことがある。聴取されたことは、事件に関わった複数容疑者の業務範囲や容疑事実の証拠証言だった。しかし同事件には筆者自身全く埒外にいたので、特捜部が期待する証拠を証言することは出来なかった。

後になって感じたことだが、特捜部の捜査には最初からしっかりした「捜査シナリオ」が組み立てられていたということだった、そのために参考人にも証拠証言の聴取に全力を傾注していたことを実感した。しかも参考人とはいえ、特捜検事と向かい合うことには極度の緊張を憶え、同時に「権力」の実態を窺うことができたことを思い出す。

今回の事件は、検察の「正義」を自ら否定したものであり、検察組織の中で「ヒーロー」とされてきた特捜部が、「解体」さえ招きかねない重大な危機に立たされている。
検察は、捜査結果をつぶさに国民に知らせ、検察自体の抜本改革を進めなければならないのだが、出きるだろうか。     2010.10.02





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