渡部亮次郎
東京の街を見回して気の付くことだが「喫茶店」が殆ど姿を消し、新たに登場したのが単身客相手のコーヒー屋だ。友達同士、喫茶店に入って音楽で癒しながら話に興じると言うことが無くなった。
コーヒー屋では自分だけを癒している女性や男性を目にするが、話し込んでいる客は皆無だ。なんとなく「孤独」でパーソナルな時代になった。
企業や団体で、慰安旅行が忌避されてもはや久しい。会社の上役や同僚といること自体が「ストレス」であるから、温泉宿で一緒に酒を呑んでもストレスがたまるだけ。
だからストレスが溜まったら、こっそりコーヒー屋に一人で入り、独りで癒すのだろうか。団体を忌避し、孤独が癒しになる時代が到来したのだろう。
そうかと思うとNHKはいつまでも「皆さんの」を叫んでいる。ラジオ深夜便では午前4時の直前「何時でも何処でも安心をお届けするNHKラジオ。NHKのラジオとテレビの放送は皆さんの受信料で作られています」とコマーシャルを必ず放送している。
あれを聴くと「皆さん」というグループか階層があって、その人たちの出す受信料なる資金で、番組がNHKじゃない場所で制作されているのだ、と聞える。NHKが制作しているのではなく別の会社によって制作「されている」と。
「あなたの払って下さる受信料で私共が番組を作っているのです。ですから受信料は必ず払って下さるよう御願します」とは聞えない。
聞えないコマーシャルは無駄。誰一人これに気が付かないというのだからNHKには人が沢山いるようで、「誰もいない海」なのだ。
日本でも、初め、ラジオの放送が始まった時、それは高価であって、番組は各家庭が家族一緒に茶の間で楽しむものだった。だからNHKも聞いているのが「あなた」ではなく「みなさん」だった。
だが、いまやテレビもラジオも一人ひとりで視聴する時代になっている。パーソナルなものに変化したのである。喫茶店がなくなったと同様、放送は家族団らんの道具ではなくなったのである。
だからNHKの呼びかけは「皆さん」から「あなた」に切り替えなければ時代遅れなのである。NHKは「みなさまの」から「あなたの」NHKにならなければならなくなっているのである。
あるいはNHKの経営陣はNHKを受信していないのかも知れない。少なくともラジオ深夜便の午前4時直前の「コマーシャル」を聞いてないのだろう。
聴かされて高価の全く無い、それよりも逆効果のコマーシャルは明日も流れるだろう。NHKには人はいるが人材はいないからなぁ。
(2010・10・26)
◆本稿は、10月27日(水)刊の「頂門の一針」2077号に
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◆<同号 目次>
・何時まで「皆さんの」NHKか:渡部亮次郎
・反政府、反共産党への起爆剤を狙う:宮崎正弘
・悪装も米国の謀略だった:前田正晶
・気になったベタ記事・ミニ記事: 阿比留瑠比
・裏切り者の仙谷由人:平井修一
・話 の 福 袋
・反 響
・身 辺 雑 記
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