渡邊好造
本誌平成21年4月30日号「入院生活とトイレ」で紹介した71歳の知人が、また入院、手術することになりそのあらましを話してくれた。知人の話はこうである。
”本年5月初め頃から歩くと左足太股が締付けられるような感じで痛み始めた。座っていたり寝ている時は何の痛みもなかったものの、1ヶ月後には自宅2階の昇り降りにも痛みで動けなくなった。
近くの整形外科開業医の診断によると、腰骨の故障によるもので4年前に手術した「椎間板ヘルニア」が影響しているかもしれない、もう一度その私立O病院(以下、O病院)の同じ整形外科医の診断を受けては、、、との指示がでた。
O病院でのMRI検査などの結果、「脊椎管狭窄症と腰部側湾症」と判明。まず手始めに痛み止めの座薬を使ったが効果なし、次は腰への神経ブロック注射を3回、これでも痛みは止まらない。7月中旬、あとは手術するしかないとなった。
しかし、同じ手術をするにしてもこのO病院への入院はなんとしてもご免である。
過去2度のO病院入院経験(「椎間板ヘルニア」と「アキレス腱断裂」の手術)によると、65歳以上の高齢者を集めた1フロア4人部屋14室男女56名(リハビリ病棟、個室はない)、その大半がまともに話の通じない認知症患者で、食事は病室毎でなく一堂に会する方式をとっていて、自分はまともだ、我関せずとはいかないのである。
認知症患者には気の毒ではあるが、多勢に囲まれるとこちらも頭が変になる。
そこで、8月初め普段かかりつけの内科医に別の整形外科病院の紹介を依頼したところ、公立のK医大付属病院(以下、K病院)整形外科H医師への書状を貰った。初診の予約は20日後の8月23日。インタ-ネットで検索すると、H医師ともどもこのK病院整形外科は設備、技術ともに超一流で、腰の手術は内視鏡が主流とあった。
初診日まで待つ間、足の痛みはひどくなる一方だが辛抱するしかない。まずは問診で「前のO病院担当医の診断書を9月15日に持ってきなさい」、いわゆるセカンドオピニオンである。
"他に適当な医者が見つかったのでこれまでの診断書を、、"というのは言い辛かったが依頼書式を自分なりに作成し、DVDに記録された診断書を手にいれた。
初診から9月15日までのその後の23日間、足の痛みはよりひどくなる。待ちに待った15日から17日にかけて診察、検査、ブロック注射があり、次回予約は10月6日。
ところがどうにも痛みに耐えられなくなり、1週間後の22日に予約なしにK病院に飛び込んだ。約2時間待っての診察で「手術で治るなら明日にでも、、」と頼んだが12月まで病室の空きなしとのこと。
「手術は当K病院の医師が担当するが設備も同じ別の病院になってもいいか」といわれOKの返事をした。それほどこの病院の人気は高く、患者殺到だったのである。入院中の同病女性は半年待ったらしい。有名病院の名医の診断治療を受けるには根気がいる。
ラッキ-なことに「明後日10月8日から入院可能な病室が空いた」との担当医師自らの電話がきた。あまりの苦しみように特別配慮してくれたに違いない。
入院4日後の12日、全身麻酔で約2センチずつ2箇所に開けた穴から内視鏡と顕微鏡を駆使しての6時間の手術だったが、手術当日から10月27日の退院までの16日間、足も手術跡も全く痛みなし。
手術後翌日朝まで寝返りの際ナ-スコ-ルするのが厄介だっただけで、2日目の昼には車椅子でトイレ、3日目は歩行器で歩行訓練が始まった。実に見事な手術であった。杖もなしに自由に動ける退院後の現在、長期間痛い左足をかばっていたので筋力が落ち、普通には歩けず完全回復には少し時間が必要だ。次回の検診予約日は11月24日、それまでなんとか筋力を取戻さねば、、。”
以上、知人のK病院での腰部手術の話を聞いて、筆者は医学の進歩に驚きの声をあげた。腰の故障で悩んでいる人は多いと聞く。病院を慎重に選び、思い切って手術を受けてみてはどうか、とお勧めしたい。
驚きはもうひとつある。”病院に入院するのは病人とは限らない”ということ。6人部屋で知人とベッドを並べた何人かのうち3人は五体満足全くの健康体の人だった。
3人とも生体臓器移植提供者(ドナ-)で、21歳の男子大学生は余命1年と宣告された母親に肝臓、72歳の父親は息子に腎臓、28歳の娘婿は義父に腎臓、をそれぞれ提供するための検査と手術待ちの入院である。もちろん生体臓器移植を受ける側の患者もいて、肝臓と腎臓の2つの移植後無事退院した人もいたらしい。ある国立病院の医師がわざわざK病院での入院手術を希望したというほど臓器移植でも有名を覇せている。(完)