毛馬一三
学校同窓会の集まりとは、せいぜい暮らしぶりや同窓生同士の去就などを、一杯飲みながら当り触り無く交わしながら終わるのが関の山だ。
お互いの喜怒哀楽に満ちた生き方などを、心の底から語り合うことなどはまず無い。結局、集まりは単なる顔見世行事で、たまのお付き合い程度にしか過ぎない。
ところが、こんな空疎な間柄だと思っていた同期生同士の間で、「心の真のふれ合い」を感じ合う新たな舞台が、意外なキッカケから生まれた。それはこれから追々―。
私の主宰する「NPO法人近畿フォーラム21」が、講座「蕪村顕彰俳句大学」講座を開講したのが、今年の4月。江戸時代の3大俳人与謝蕪村の生誕地・大阪毛馬町に昨年、蕪村18句碑を林立させた市営「蕪村公園」が造営されたのを機に、大阪俳人蕪村の高揚を兼ねて同講座を設けたものだ。
講座には大学教授や俳句結社の主宰者を講師に招いて開講した。受講生は40余人から始め、その中に同窓会(関西福中・福校同窓会)同期生の、津嶋礼文、増田忠勝、香月英夫、橋本紘、渡邊征一郎の5畏友に声を掛け、快く参加してもらった。
同講座は、「趣味の会」とは異なる専門講座を目指した。「俳句の歴史講座」に加え、五七五の17文字に「季語」を軸に、俳人蕪村が目指した「写生」の精神や自己の独特な感性を伝えることに心がけて出句する「句会」の開催だった。
この講座が、実は思いがけなくも「本題」を導いたのだ。
5人の畏友たちは当初、「季語」に沿う想いとそれを表す言葉の駆使に、正直当惑と苦渋を心の底から滲ませる姿がありありと窺えた。しかし句会を重ねていくうち、17文字に巧みに思いを折り込んで出句する上達ぶりが際立ってきた。
流石、福岡高校の畏友たちだけに、その「感性」と「視点」は確かなもので、講師からも高い評価を受けるまでに至った。
第1期講座が終わる9月の締め括りの焦点は、受講者全出句800余句の中から「大阪知事・大阪市長・俳句大学学長」3賞を授与する優秀句を選び、それらを「表彰」する式典開催にあった。
ここで驚くべきことが起きた。なんと5人の畏友の一人の増田忠勝君が「学長賞」に選ばれたのである。講師で構成する審査委員会が非公開で厳選したものだが、3賞句の評価には優劣は無かったという。
さて、その増田忠勝君の学長受賞句―。
◆「雨きざす 風をふふめる 牡丹かな」
審査委員・山尾玉藻講師の論評だは、
<自ずと多くの類句、類想の生まれる中、この句は独自の視点で牡丹の豊饒な美しさを再現しています。雨の気配のする湿った風を孕んで、牡丹の花に一層の重量感や潤沢感が生まれました。この句の切り取りもなかなか際立っていて、与謝蕪村の画人としての俳人としての魂を大いに触発することでしょう>と、絶賛している。
「表彰式」終了後、同公園内の一角に設置された増田君ら3賞の授賞句刻字の「記念プレート碑」の除幕式が行われ、マスコミも取材した。ここに至って増田君は初めて受賞の喜びを実感したらしい。
「表彰式」が終わった後、私と畏友全員が集っまった。
「お互いの心と感性をじっくりふれ合わせられるこのご縁に出会えたのは、最高だった。まさに老後の楽しみに結びつくね」と述懐する香月英夫君の言葉が心に響く。
「蕪村公園の刻字プレート碑に永久に名前が残るようにこれからも頑張ろう」。渡邊征一郎君の囁きも心を揺さぶる。それ以来、同期生同士の心のふれ合いが急激に濃密になってきた。
ところで、第2期講座は、今年10月から来年3月までの日程で進められており、受講生も6倍に増えた。勿論畏友たちは継続受講し、真剣に「句会」と向かい合っている。
12月22日の今年最後の2期講座の後、「忘年会」を兼ねて畏友同期会を初めて開いた。そこで飛び出したのが、畏友の一人が瀬戸際人生を何度も繰り返した苦難を初めて明かしたことだった。どちらからと云えば無口なこの畏友の予想外の語りに皆の涙を誘った。
この畏友の述懐を機に皆からも、身内の苦労話から苦節の経験、充足した達成感などを含め、過去耳にしたことも無い心境の吐露が次々と飛び出した。畏友同士の心の距離が、一挙に縮まった。
大阪俳句文化振興を目指す当NPO法人活動が、思いがけなく「俳人増田」を誕生させただけでなく、今まで微塵も無かった同期生の深層の心のふれ合いを繋げる場になったのかと想うと、これに優る欣快事はないと胸が打ち震える。
この「心の真のふれ合い」は、講座が続く限りもっと盛り上がってくるだろう。
そうなれば私の責務も、限りなく重いことになる。来年も一層頑張ろう。
今年もご拝読に深謝します。よいお年をお迎え下さるようお祈り致します。(了) 2010.12.31
◆反響 溝川茂久氏より
心温まる記事です。わたしは元都島区長です。「蕪村のふるさとにその名を冠した公園を」の要望をしたのが10数年前、完成しバス停の名称も変更された。俳句愛好家のみなさんが盛りあげてくれてなによりです。5年後は蕪村生誕300年です。全国の蕪村フアンにもアピールしていきたいものです。