毛馬一三
名古屋市長選、愛知県知事選、名古屋市議会の解散の是非を問う住民投票が6日、投開票された。
市長選では地域政党「減税日本」代表の河村たかし氏(62)が再選を果たし、知事選では同党推薦の大村秀章氏(50)が初当選。河村氏が主導した住民投票は賛成多数で、政令指定市で初めてリコールが成立し、即日解散された
ところで、この選挙結果に欣喜雀躍しているのは、「大阪都構想」を掲げてこの春の統一地方選挙に臨もうとする大阪府の橋下徹知事ではないだろうか。
橋下知事の目指す「大阪都構想」とは、大阪府庁と大阪市役所を解体し、広域行政は大阪都、住民サービスは特別区が担い、区長は公選制にするというもの。
この「大阪都構想」を実現するため、地域政党「大阪維新の会」を昨年立ち上げ、自ら党首となって今回の愛知県知事選・名古屋市長選挙に70人の党員とともに現地入りし、応援演説などに駆け回った。
確かに、名古屋市が主張する「中京都構想」は、広域行政を一本化するものの、名古屋市は存続させ、区長公選は想定していないなど、具体的な仕組みの点では「大阪都構想」とは異なる。
構想自体が異なっていたとしても、自治体の長が今春の統一地方選に向け新党を結成し、目指す構想を訴えて勝利したという斬新な事例については、これからの橋下知事の挑戦と重なって映ったのだろう。
「沈み行く“大阪丸”の都市制度を一度壊し、大阪都として再生させるしかない」。橋下知事は、こんな論旨で有権者とのタウンミーティングで訴えてきている。
ところが、愛知県知事選と名古屋市長選の勝利とは裏腹に、大阪都構想を進めたい橋下知事には、異常な事態が立ちはだかって来だしている。事態は急転しているのだ。
橋下知事の当初の戦略は、今春の統一地方選挙の大阪府会・大阪市会・堺市会3選挙で議席の過半数を獲り、過半数が確保出きれば、任期途中で知事を辞任し、今秋予定される大阪市長選挙の出馬、市長に収まって「大阪都構想」を実現するものだった。
しかも、「もし、過半数取れなければ、知事を辞職し自宅に籠もる」とまで言い切った。つまり、過半数獲得には、70%余の異常な高支持率の知事に支えられた維新の党の候補者はほぼ当選し、結果として3議会での過半数は確実に握れるとの自信があったのではないか。
ところがその思惑が今急激に崩れ出している。有権者の意向も知事の「都構想」の説明不足に不満を募らせている。しかも市長選出馬にも諸手を上げていない。
<知事が可能性をちらつかせる自らの大阪市長選出馬については、知事支持層からも反対意見が強かった。 知事が可能性を言及している自らの大阪市長への転身は、都構想に賛意を示す人でも賛成46%、反対40%と意見が割れた。知事の支持層では反対が45%で、賛成の39%を上回った>。 <朝日世論調査>
こうした中、知事と平松市長のバトルは、日増しに激化している。「大阪府にとって大阪市の存在は目の上のたんこぶかもしれない。ずっと我慢してきたが、大阪都構想は『大阪都妄想』でしかない」と、平松市長は厳しく「大阪都構想」を批判している。
これに加え、民主・自民・共産各党は反対し、公明党も知事と一線を画す。
となれば、知事が目指す大阪市議会での「過半数獲得」の読みは、事実上崩れた格好になっている。
さらには、これまで知事と親密だった竹山修身堺市長までもが、「大阪都構想」と距離を置くことを表明した。しかもこの動きを受けたためか、堺市議会の会派からは「維新の会」の候補者として出馬する議員が出ない事態がおきている。
となると、知事の当初の戦略は、根本から見直さなければならなくなってくる。議会の「過半数獲得」が不能であれば、大阪市長選出馬も現実味が薄れてくる。
はたして、「過半数獲得」を反故にし、それとは切り離して強引に市長選出馬を目指す政治手法を選択するだろうか。府民の動向に敏感な知事の選択肢にはおそらく、それはないだろう。(了) 2011.02.06