2011年03月06日

◆スカイツリー 徹底解剖

渡部 亮次郎

自立型では世界一高い電波塔「東京スカイツリー」が今年12月にいよいよ完成する。3月1日に高さ604メートルを突破して世界一となり、634(ムサシ)メートルまであと30mを残すのみ。

書斎でPCから目を上げれば、1週間に10mの勢いで伸びているから、3月末には本体だけは完成するだろう。

室内から目を東に転ずれば、朝日を遮るように猿江公園脇に建設中だったあの8階建ての総ガラスビルはコンピュータ製造会社、日本ヒューレット・パッカードの本社であることが分かった。今は千代田区にある本社をここに移すことにしたのだという。5月中ごろ移転してくる。

墨田といい江東区といい、学生時代は井戸水の汲みすぎで地盤沈下、海抜0m地帯と揶揄されたものだが、世界一の電波塔が建ち、コンピュータ会社が移ってくるとなり、「川向こう」は一挙に明るくなった。

スカイ・トゥリーの周辺にはエンタメやショッピング、レストランなどの商業施設も整備され、東京の新しいランドマークとなる観光名所が誕生。地域活性化の起爆剤になると期待されている。

地デジ電波を送信

<区内の8割以上が海抜ゼロメートル地帯という東京都墨田区で東京スカイツリーの建設が始まったのは2008年夏のこと。そもそも、これほど高い塔がなぜ必要になったのか。

背景にはテレビの地上デジタル放送(地デジ)への移行と、超高層ビルが林立する都市構造がある。これまでのアナログ放送用電波に比べ、地上デジの電波は周波数が短い。大容量の情報を乗せて送信できる一方で、直進性が強く建物や山などに遮られやすい弱点がある。

特に都心部では200m級の超高層ビルが林立しており、難視聴エリアが多く生じる懸念があり、現在の電波発信拠点である東京タワーよりも高い、600m級の新タワーが必要になったというわけだ。

東京タワーの2倍近いスカイツリーが完成すれば、超高層ビルや山などによる電波障害が低減されると期待される。ワンセグの受信エリアも広がる。

スカイツリーの建設は平成15年に、在京放送事業者6社が「在京6社新タワー推進プロジェクト」を設立し、立地のほか、建設工事の事業主体や経営形態などの検討を開始。

さいたま市や東京都豊島区のほか、東京タワーの立て替えなど、多数の案が検討され、激しい誘致合戦が繰り広げられた。

在京6社新タワー推進プロジェクトは2006年に東武鉄道の貨物駅跡である「押上・業平橋駅周辺地区」に建設することを決定し、工事がスタートした。今年暮れにはタワーの工事が完成し、24年春の開業を予定している。

日本刀など和の技術

東京スカイツリーは、空に向かって伸びる大きな木をイメージしている。彫刻家で元東京藝術大学学長の澄川喜一氏が監修したデザインは、地上から高さを増すにつれ、断面が三角形から円形に移行。日本刀のような「そり」と、寺院の柱などで見られるふっくらとした「むくり」の構造を取り入れている。

また、地震や風による揺れを防ぐ制振技術では、五重塔の仕組みが生かされている。五重塔は、地面から頂上までを心柱と呼ばれる太い柱が貫いており、地震時には心柱と各階層が異なる動きをすることで、揺れを防いでいる。

スカイツリーでは、この建築技法を現代風にアレンジして採用。万が一の巨大地震にも耐えうる構造としている。設計は、タワーや大型建造物の実績のある日建設計が担当した。

建設工事を請け負っているのは大手ゼネコンの大林組だ。これまで日本一高い建造物だった東京タワー(332・6メートル)を超える高さでの建設作業は、ゼネコンにとっても未知の領域。このため、今回の建築方法は、基礎部分から頂上部にいたるまで、工夫に満ちあふれている。

例えばタワークレーンの風対策。スカイツリーの建設現場では3基のタワークレーンが稼働している。暴風時には作業を停止。想定以上の突風が吹き付けると、アーム部分を垂直近くまで起こしたうえで、3基が同時に風見鶏のように風上を向くよう自動制御されている。

また、クレーンで荷物をつり上げる際、風の影響でつり荷が回転し事故が起きる心配もある。このため、ジャイロの原理を応用し、つり荷の回転を強制的に止める「スカイジャスター」を開発して導入。大きな成果を上げている。

今後の建設で予定されている心柱の導入やハイライトとなる頂上部分「ゲイン塔」の設置でも、「スリップフォーム工法」や「リフトアップ工法」といった、独自技術を積極的に採用。安全かつ迅速に工事は進んでいく。

特需は年500億円

東京スカイツリーの建設は、3万6千平方メートルの周辺敷地の再開発とともに進められている。タワーの足下を固めるように、東西400メートルにわたり、各種の建物が建ち並ぶ。東側には地上31階の高層ビルが建設され、低層部(地下3階〜地上6、7階)は東西につながる大規模な施設となる。

低層階にはファッションや雑貨ショップ、レストランなど、300近い店舗が入居するほか、西側5〜6階には水族館が、東側7階にはドーム型シアターが設けられ、プラネタリウムとして営業する。

東側高層ビルの中層階(8〜11階)には大学や専門学校などを誘致し、29階まではオフィスとして活用。30階以上にダイニングレストランが開業する予定だ。

開業後には、年間300万人もの来場者が訪れ、500億円近い経済効果があると試算されている。すでに事業主体の東武鉄道をはじめ、JTBなど旅行会社もスカイツリーを核としたツアー事業に力を入れ始めている。
>産経新聞2011.1.1  07:00


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