2011年03月27日

◆脳卒中予防に半世紀ぶりの新薬(2)

石岡荘十

この半世紀、脳卒中の唯一の予防・治療薬だったワーファリン。

そこに出現したのが「ダビガトラン」(発売元:日本ベーリンガーインゲルハイム 本社:東京・品川区)だ。半世紀ぶりの競合品の登場である。

今年1月21日、申請から10か月の短期間で製造・販売承認を得た。異例のスピード承認である。小川聡日本循環器学会長は「4月ごろから診療現場で使われることになるだろう」と期待を込める。

(1)ビタミンKの影響を受けるワーファリンでは納豆や緑黄色野菜などの摂取制限があるが,ダビガトランでは食事制限がない,
(2)ワーファリンは肝臓での代謝酵素の影響は受けるが,ダビガトラン薬剤相互作用がほとんどない

(3)ワーファリンでは薬の効果に個人差や変動があるが,ダビガトランでは一定の効果が個人差なく発揮されるためPT-INRなど面倒な血中濃度の検査、モニタリングの必要性がない。

(4)効果の出方が早い
などワルファリンと異なる薬理作用,利便性が大きく向上したと評価されている。
商品化されるのに先立って行われた大規模試験では、ワーファリン群に比べ34%のリスク減少効果が認められたほか、頭蓋内出血のリスクでもワーファリンを下回る結果となったと報告されている。

こうしたことから、「世界的にも抗凝固療法は大きく変わろうとしている」と何人もの内外の研究者が期待を寄せている。半世紀にわたるワルファリン時代に終止符が打たれることになるかもしれない。

東京女子医科大学神経内科主任教授の内山真一郎氏は「半世紀にわたり続いたワーファリン時代に終止符を打つ画期的な新薬の登場」と同薬への期待を述べた。(NM online 2009.11.24)。

ただ、日本人は出血リスクが高いと言われるだけに、今後は日本人を対象とした臨床現場でのエビデンス構築が重要になるという研究者も少なくない。

いいことずくめのようだが、問題がないわけではない。適用症例と薬価の問題である。

まず、ダビガトランは「非弁膜症患者に適用」となっており、私のように弁置換手術経験者には使えない。弁膜症患者に対する治験のデータはまだ国としても把握していない。今後の治験にまたねばならない。時間がかかるだろう。

つぎに、薬価である。

3月2日開かれた中央医療協議会で、投与の方法と薬の値段が了承された。それによると、発売されるダビガトランは750mgと110mgの2種類のカプセル。標準的な投与量は750mgのカプセルを朝晩2つずつ、つまり1日4カプセルを処方する。腎機能障害が心配だがそのときは110mg×2回/日に減量する。

これを日本人の適正量とすることが決まった。で、注目の薬価は---
・750mgが132.60円
・110mgが232.70円
となっている。

結果、心房細動患者や脳梗塞予防の必要な患者は、132.6×4=530.04円のカプセルを毎日飲むことになる。一方、ワーファリンの値段は9.6円。ワーファリンの場合は少なくとも月1のPT-INRでチェックする費用と時間がかかるが、それでも、ダビガトランに切り替えた場合は相当な負担増を覚悟しなくてはならないだろう。ダビガトラン処方にはPT-INR検査の必要は無い。

さて、どっちが得か。メリット、デメリットは患者が判断することになるが、値段の関係で、雪崩を打つように新薬に切り替わることはないのではないか、と親しい循環器内科医師は言っている。

新薬が登場した後に,すべての患者がワーファリンから新薬へ移行していくのかどうかについて東京女子医大神経内科主任教授の内山真一郎氏は、一部の患者ではワーファリンの薬価のほうが低いことや専門医への受診継続という点などから「ワーファリンの続行を希望するのでは」と推測。しかし,全体としては「圧倒的に利便性が高い新薬への切り替えを望む患者が多いだろう」と予測している。(MT Pro 2011.2.17)。

一方では不安を口にする開業医もいることは事実だ。こんな声もある。

「110mgという中途半端な用量はどのような経緯で決まったのでしょうか。心房細動は高齢者に多い疾患です。体重の少ない方も多いはずです。諸外国と同じ用量というのも何だかシックリ来ません。 モニター不要ということは逆にモニターが出来ないともいえるのではないでしょうか。ワーファリンのINRモニターに慣れているために何だか心配です。 (MT Pro 2011.2.17)。

今月11日、国の製造・販売に必要な手続きがすべて終わる。メーカーが急げば、4月中には医療現場に新薬が届く見通しだ。

ダビガトランをめぐる論議は、専門的で素人には分かりにくいが、これは“業界”の話ではない。一人ひとり、なかんずく高齢者に多い病気の患者に関わる問題なのである。と同時に、循環器の開業医の仕事の仕方にも影響を与えていくだろう。

なんといっても半世紀ぶりの新薬の登場である。更なる議論を期待している。

この記事へのコメント
この薬の効果はよく分かりました
私がこの薬を飲むにして、はたしていいのだろうか
不安があります
やはりここはひとまず様子を見ることにした方がいいように思うのです
いかがでしょうか
Posted by 戸枝 浩 at 2011年04月01日 12:45
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