城北 勝二
統一地方選の道府県議選、政令指定市議選が、4月1日に告示された。この統一地方選で、大阪の府議選、大阪・堺両市議選が過去にない激戦になることは必至の情勢だ。
どうして大阪の府議選・大阪、堺市議選が、激戦の様相を示すのか。
それは大阪府の橋下徹知事が、大阪市を解体・再編する「大阪都構想」を打ちあげ、同知事自ら代表となって立ち上げた地域政党「大阪維新の会」の先頭に立って、この「都構想」の是非を府・市民に問うという、過去に例の無い闘いに挑みだしたことにある。
しかも橋下知事は、圧倒的な人気を背景に、維新の候補者が3議会の過半数を制することを出来たら、今年の秋の「大阪市長選挙」に自ら出馬して市長の座を確保し、一人だけの為政者となって「都構想」を実現させたい腹だ。これが知事の描く極め付きのシナリオである。
これに対し大阪市の平松市長は、「大阪全体を王冠に例えれば大阪市は中央の宝石だ。大阪府がなすべきことは宝石を磨くことで、王冠をバラバラにすることではない。大阪都構想は『大阪都妄想』でしかない」と、知事の「都構想」を厳しく批判しており、両者の対立を受けて、維新党と既存政党が真っ向から対立し、選挙戦に突入した。
産経新聞によると、<30日現在のまとめでは、3つの選挙で前回の計395人を上回る432人前後が立候補する見通し。
「都構想」を旗印に3議会すべてで過半数獲得を目指す維新は、計119人を擁立。
堺市議選では定数52に対し立候補予定者は15人にとどまり、目標達成は困難になっている。
44人を擁立する大阪市議選(定数86)でも、1人落選すれば過半数獲得は無理な状況。
政権与党になった民主は、前回より8人多い計69人を擁立する予定。しかし政権運営を巡る逆風に危機感を募らせており、「民主離れ」とも言える現象が起きている。
維新に移った所属議員の大量離党に揺れた自民の立候補予定者は計66人。前回の候補者数計101人から3割以上少なくなる見通し。ただ、選挙後の情勢によっては自民への復党を望む維新議員は少なくない。
公明は、候補者数を前回より3人少ない計53人に絞り、「守りの選挙戦」(府議)に徹する構え。
共産の公認も前回より8人少ない計72人にとどまっている。このほか、みんなが計5人、社民が1人を擁立する予定になっている>。
こうした中、東日本大震災の発生により、肝腎の「大阪都構想」を目玉に訴えづらくなり、結局橋下徹知事も「大阪市役所をぶっこわす」「市長の退職金は全国一」などの言葉で繰り返してきた攻撃の戦略を見直しせざるを得なくなった。
このため作戦変更。防災、危機管理を前面に打ち出し、「日本全体の安全安心のため、もう一つの首都機能を作ろう。日本の司令塔が東京ひとつでは危険。いざという時、内閣に変わり西日本の安全を守る大阪都庁をつくりたい」に切り替えている。
これに対して、大阪市は震災発生当日に即「災害対策本部」を設け、これまでに延べ600人の職員を震災地に派遣するなど、政令都市としての機動力発揮能力を市民にアピールし、政令都市の存在意義を強調している。
橋下知事はこの統一地方選挙の結果に政治生命を賭けている。3議会で維新が過半数を取り、なんとしてでも「大阪都構想」を実現させたいと企図している。
「都構想」を争点とする3議会選挙への府・市民の関心は、原発被災などによって震撼させられている東日本大震災の状況下で、事実上宙に浮いている。この府・市民の意識をどう捉えられるのか。これが大阪選挙選の帰趨を決めることになるだろう。 2011.04.01 <評論家>