2011年06月14日

◆テレビ報道の世論ミスリード

渡邊 好造

新潮新書『テレビの大罪』を読んだ。著者は精神科医・和田秀樹氏で、テレビ報道による世論のミスリードを厳しく批判しておられる。

まず、まえがきにはこうある。

<表沙汰になっていない数々の偽装や情報操作によって、多くの人の命を奪っている業界があります。それがテレビです。彼らの不見識は老若男女を死に追いやり、心身の健康を害し、知性を奪い、すなわち日本という国に大きな損害を与えています。

ひとりの精神科医として、父親として、教育に携わる者として、高齢者医療に関わる者として、この深刻な状況を見過ごすわけにはいきません。、、、テレビの罪について私見・暴論もまじえつつ問題提起していきたいと思います、、、」>。

テレビが生み出す「世論のミスリード」について、和田氏が主張する具体例を拾ってみると、

<1)若い女性のウェストサイズ58センチを理想として、拒食症で毎年100人の命を奪い、不妊を増加 させている。
2)新しい事件が起ると被害者と一緒になって大騒ぎするばかりで、問題の本質がどこにあるかを追求しない。例えば、六本木ヒルズの回転ドアに6歳の子供がはさまれて亡くなった事件。ドアに問題があったことはいうまでもないが、連れていた親の監督責任には一切触れようとしない。

3)医療過誤で患者が亡くなったりすると一大キャンペーンをはって医者を殺人犯にしてしまう。結果、小児科や産婦人科のような訴えられるリスクの大きな科の医療崩壊を招いている。
4)医者、弁護士、大学教師などでテレビの 出演回数が多いほど偉い人で、いつの間にやら政界に進出している>。
などなどである。

この本を読んですぐ思い至ったのは、「菅直人内閣の不信任案」が、国会に上程され否決に至るまでの報道内容の変化である。

つい先日までは、「とにかく菅首相は頼りない、何も実行しない、無能だ、直ぐ辞めさせろ、菅以外なら誰でもいい」の”退任要求”の大合唱であった。それがいざ辞めさせるための「内閣不信任案」が提出され、審議の前日と当日のこの件のニュース報道はガラリと様子が変った。

東日本大震災による避難民の人たちに政治に焦点をあてて問う。

"今の国会騒動をどう思われますか"。避難民は口を揃えて「こんな政権争いをしている場合じゃない」、「政治家は避難民がどんな生活をしているか理解していない」、「首相が誰であろうと関心はない」、「民主党も自民党も頼りにならない」、「今内閣を変えたら軌道に乗るまでまた復興が遅れる」、、、といったものばかり。

誰も政治の動きに関心を示すことなく、内閣再編についての建設的な意見をテレビのニュース報道で取上げなくなった。テレビ報道はガラリと変り、内閣不信任案に対して否定的な意見ばかりを並べ始めた。

本当にこんな意見ばっかりだったのだろうか。疑問に思った人はいなかっただろうか。

”内閣不信任案騒動”に対する一連の否定的報道をみた鳩山一派などは、世論すべてがこんな様子では不信任案が可決されたら自分たちの身が危なくなって大変なことになる。そこに気づいて賛成から反対へと寝返ったということもあったのではないか。

テレビ局側は「いや、あの報道は公平で正確だった、避難民の意見に偏った編集はない」と主張するに違いない。

それなら問う。

これまで原発のおかげで交付金と税金で潤ってきた福島県の知事が、東京電力社長に「原発は再開しないとここで約束してください」と怒鳴っていたこと、同様に東電社長に「土下座して謝れ」と意味もない詰めより方をした人、被災地を慰問した菅首相に「もう帰るのですか」と大声を出した人、

「首相にお願いがあります」、”なんでしょうか”と問い返した菅首相に対して「すぐ首相を辞めてください」と詰め寄った失礼なオバサン、天皇皇后両陛下が膝を折って声をかけておられるのに胡坐をかいていた礼儀知らずのオッサン、、、。

こうした避難民のマイナス映像が各局で何回も流されていた。

東日本の全ての避難民は、みんなこんなに礼儀知らずの失礼な人たちばかりだったというのか。この報道内容に偏重はなかったと自信を持って言えるか。礼儀知らずの失礼な輩は避難民のうちのほんの一部の例外ではないのか。

そう考えると内閣不信任案のごたごたを批判している避難民の言い分についても、テレビ局担当者の意図的な誘導ではないか、との疑問が沸く。

テレビ報道は、ある時は少しの例外事例を大勢を占める意見のように、さも真実かのようになんの裏付けもなしに得意気に映し出す。

画像を伴うだけに新聞よりたちが悪い。証言者の顔にボカシをかけ、音声を変えてしまえばどこかの劇団研修生をそれらしく起用していても視聴者には分らない。和田先生の言われる通り、テレビ報道による世論のミスリードは数多いことに違いはない 。
(完)


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