2011年07月16日

◆いまからはじめる俳句入門 (後編)

朝妻 力(雲の峰主宰・蕪村顕彰俳句大学講師)
 
 <基本をひとつひとつ>

これから、「三つの力」へと移ります。

B表現する力
三番目は、季節感を生かし、定型で表現するという力です。実は、初心の皆さんに共通した課題に、切れや句形を理解していないということがあります。
 
俳句の文体を決めるのは切れです。切れと言いますと何か特別な存在のように思えますが、実は句読点の句点( 。)にほかなりません。前項で紹介した〈いくたびも雪の深さを尋ねけり〉に句点を打つと

いくたびも雪の深さを尋ねけり。

となります。

いくたび・雪・深さは助詞「も・の・を」によってつながっています。「尋ね」は「尋ぬ」の連用形ですので、助動詞「けり」につながります。結果的にこの「けり」によって終止します。

文章ですと「けり。」と表現される、この終止形が切れです。つまり、切れとは句点と同じということです。この作品は句点が一つですので一句一章の俳句と呼ばれます。

参考までに書くと、
・句点が一つで一つの俳句 一句一章
・句点が二つで一つの俳句 二句一章
・句点が三つで一つの俳句 三段切れ・三句一章

となります。切れと句形、句形と句意の関係について、詳細は省きますが、ここでは、切るべき所は切る。つなぐべき所はつなぐ、と覚えていただけたらと思います。俳句は日本語の文であるということを大前提に表現します。

C推敲する力
俳句は読者があってこそ成立します。その読者の評価を最も生々しく感じることのできるのが句会です。初心者だから……ということで句会への参加を迷う人もいますが、句会は学習の場。上手下手は考えずに参加し、学習の材料として、作品を投句しましょう。

ここで、投句する前に作品を見直す、つまり推敲するということに触れておきます。初心のうちは、多かれ少なかれ、感動したこと全てを言おうとする傾向があります。つまり原因と結果、全てを報告してしまうのです。例えば、

つり橋で足すくむなり冬紅葉

という作品があったとします。吊橋で足がすくむという状態を全て言ってしまいました。読者は余りにも分かりすぎて、面白くもなんともありません。これを

下は見ぬやうに吊橋冬紅葉

としたらどうでしょう。読者は「こわごわと渡っているのだな」と思います。読み手が心を動かす、これがいわゆる余韻余情の正体です。全てを言わず、感動を生んでくれた情景に焦点を絞るという観点から推敲し、句会に臨みましょう。

D選句する力
句会に参加しますと、漢字が読めない、読めても意味が分からないなどという句がたくさん出てきます。

実は作句は、自分一人の力量でできます。しかし選をするとなりますと、例えば三十人の句会であれば他の二十九人の知っている季語・語彙・言葉遣い・語法・歴史などを理解できないと良い選はできません。

選句力を高めるためにお奨めしたいのは、指導者が入選としたのに、自分は入選としなかった作品について徹底的に復習するということです。句会の間に電子辞書を引きます。

できなかった分は帰宅してから調べましょう。選句を見ればその人の実力が分かるといいますが、選句する力とは、その人の総合力、言い換えればその人の俳句力であると言えます。ここでは、

分からなかったことはその日のうちに調べるということがポイントとなります。

俳句を学ぶということは、季語・語彙・言葉遣い・語法・歴史などを同時進行で学ぶということです。それだけに難しい。難しいけれども、学ぶこと、知ることは俳句力を確実に向上させてくれます。(完)
              (月刊「角川俳句」平成23年5月号より転載)

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