渡部 亮次郎
<地熱発電と言えば、もう大分昔になりますが、九州電力の地熱発電所を見学したことがあります。
その時、案内して下さった職員曰く、地中深く掘った井戸も時期がくると涸れてしまうので、又、あちこちボーリングをしなければならず、しかも、井戸も掘ったら百発百中ではなく、蒸気のとれる井戸に当たるまで何本か掘らねばなりません、1本掘るのに1億円程かかります、と。当時で1億円かかった費用が現在の技術ではどれぐらいかかるのか。
地熱発電が商業的に採算が取れにくいのはこのあたりに理由があるのかも知れません。大阪の頑固親父 2011・8・17>
<費用の件はよく解りませんが、開発の隘路として立地適地に国立公園が多いとか温泉地に与える影響とか多くが有り、一筋縄ではいかないという事を随分以前から聞いて (記事で見て) おりますが。>佐藤雄一 2011・8・18
郷里の秋田県で、友人の佐藤和志さんは仙北市田沢湖の国有林近くで「鶴の湯」という温泉宿を経営し、まあまあの実績をあげているが、原子力発電所の事故をきっかけに広まった脱原発の世論と、それに伴って急速に再浮上した地熱発電論に神経を尖らしている。
例えば、そう遠くない八幡平や湯沢での地熱発電への動きなどを考えると、悠長に構えはいられない。温泉が涸れないよう、反対への「武装」を早めに用意しなければならないと焦りの気持ちは高ぶる。
<岩手県八幡平市で地熱発電を検討
岩手県八幡平市、日本重化学工業、地熱エンジニアリング、JFEエンジニアリングは、岩手県八幡平市八幡平御在所地域で地熱発電の事業化に向けた検討で合意した。
同地域は、全国でも有数の地熱地帯だ。4者はこれまで、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から委託を受け、同地域の地熱開発促進の調査を行ない、最大で20〜50MW相当の地熱資源の腑存を想定した。
資源としてのポテンシャルの高さから地熱発電可能と判断し、今後、具体的に事業化の検討を進めるとともに、関係諸官庁と許認可の取得などについて協議する。
八幡平市は、再生可能エネルギーの実用性を探り、二酸化炭素排出量削減などの地球温暖化対策に取り組んでいる。日本重化学と同社グループ会社の地熱エンジニアリングは、日本初の松川地熱発電所を立ち上げるなど、地熱発電のパイオニアで、地熱探査や掘削、分析、蒸気生産管理などの資源開発で国内トップクラスの技術力を持つ。
JFEエンジニアリングは、地熱発電分野で全国18か所の発電所のうち、9か所で蒸気設備を建設しており、昨年度にはバイナリー発電システムを商用化した。今後は発電事業への参入も視野に入れている。
4者は早期に検討を進め、2015年には出力7000kW級の発電設備による送電開始を目指す。>2011年7月11日(月) 14時40分 JFE 特別編集
地熱発電は探査・開発に比較的長期間を要し、探査した結果地熱利用がかなわない場合もあり、火山性の自然災害に遭遇しやすいリスクもある。
しかし、運転に際して温暖化の原因となる指摘されているいわゆる温室効果ガスの発生が火力発電より少ない点、燃料を必要としない点、燃料の枯渇や高騰の心配が無い点で、優れたエネルギー源とされる。
また再生可能エネルギー(自然エネルギー)の中でも、安定的な出力が期待できない太陽光発電や風力発電とは異なり、需要に応じて安定した発電量を得られる地熱発電は、ベースロード電源として利用可能である。
地球全体でみた資源量も大きく、特に日本のような火山国においては大きなポテンシャルを有すると言われる。近年の枯渇性燃料の高騰によってコスト的にも競争力が増し、見直されつつある。
日本では1919年に帝国海軍中将・男爵山内万寿治が、軍人として国のエネルギー安全保障に興味を示し、大分県別府で地熱用噴気孔の掘削に成功した。
これを引き継いだ東京電灯研究所長・太刀川平治が1925年に出力1.12kWの実験発電に成功したのが最初の地熱発電とされる。しかし、微力だったことから、山内の死後程なくして地熱発電の実用は立ち消えとなった。
実用地熱発電所は岩手県八幡平市の松川地熱発電所(日本重化学工業株式会社)が1966年10月8日に営業運転を開始したのが最初である。私はこの前後、NHK記者として岩手県内に駐在していたので現地見学を果たした。
地熱発電は石油などの化石燃料を使わないクリーンエネルギーであり、日本では約5%しか自給できない天然ガスにも匹敵する貴重なエネルギーを国産で採掘できることから、原油価格やウラン等の核燃料価格の変動リスクがない国産エネルギーとして、見直しが進められている。
地熱発電はコストが高いとされているが、近年になって費用対効果も向上しており、近年の実績では8.3円/kWhの発電コストが報告されている。
特に、九州電力の八丁原発電所では、燃料が要らない地熱発電のメリットが減価償却の進行を助けたことにより、近年になって7円/kWhの発電コストを実現している。
現在のところ、日本において地熱発電によって生産されている電力の総容量はおよそ535MW(53万キロワット)で2010年段階で世界第8位である[22]。地熱発電に関わる技術は高く、140MWと1基としては世界最大出力の地熱発電プラント(ナ・アワ・プルア地熱発電所)を富士電機システムズ(現在は富士電機(旧富士電機HD)に吸収合併)がニュージーラン
ドに納入するなど、2010年の時点で、富士電機、東芝、三菱重工の日本企業3社が世界の地熱発電設備容量の70%のプラントを供給している。
H22年度の環境省によるポテンシャル調査では、理論的埋蔵量である「賦存量」は設備量にして約3300万kWと見積もっている。
そのうち、地形や法規制等の制約条件が考慮された「導入ポテンシャル」は約1420万kW、経済的要因等の仮定条件に沿った「シナリオ別導入可能量」は、シナリオによって108〜518万kW(温泉発電を含む)と見積も盛られている。
日本国内の地熱発電による発電量は世界的に見ても上位に位置するが、経済大国である日本全土の莫大な総発電量からすると、国内地熱発電の割合は0.2%を担うに過ぎない。
53万キロワットは、福島第一原子力発電所や美浜原子力発電所などにある中型原子炉1基分にすぎない。九州電力では比較的に地熱発電が盛んでが、それでも九州地方全域で生産可能な電力の総量の2%を占めるにとどまる。
日本で地熱発電が積極的に推進されにくい理由は、国や地元行政からの支援が火力や原子力と比べて乏しいこと、地域住民の反対や法律上の規制があるためである。
候補地となりうる場所の多くが国立公園や国定公園に指定されていたり、温泉観光地となっていたりするため、景観を損なう発電所建設に理解を得にくいこと、温泉への影響に対する懸念があること、国立公園等の開発に関する規制があることが地熱発電所の設置を難しくしている。
例えば、群馬県の嬬恋村では2008年に地熱発電の計画が浮上したが、その予定地が草津温泉の源泉から数kmしか離れていないため、温泉に影響が出る可能性が必ずしも排除できないとして草津町が反対している。
草津温泉では、地熱発電と温泉との因果関係の有無を検証するための地下ボーリング調査等を行うことにも断固反対している。
これら諸問題について、地熱発電を推進している日本地熱学会などの推進派グループでは、国立公園内にも巨大ダムや大型施設が立地していることから、環境省の裁量次第で建設できると反論している。
また、地下の地熱エネルギーおよび温泉資源についての科学的調査の結果、日本において地熱発電所が温泉などの周辺環境に影響を与えた事例が一例もないこと(ただし、外国では熱水の還元不足などから温泉に影響を与えた例がいくつか確認されている)から地熱発電所と温泉・観光地との共存共栄は可能であるとの見解を示している。
日本は火山が多く地熱発電に適しており、太陽光発電や風力発電に加えて地熱発電の開発も進めるべきだ、との指摘がなされてきた。
2009年1月には、20年ぶりに国内で地熱発電所を新設する計画が報道されている。2010年には、秋田県湯沢市での事業化検討に向けた新会社の設立や大霧発電所での第2発電所建設計画が進行している。
行政も、2008年には経済産業省で地熱発電に関する研究会を発足させたり、 2010年度には、地熱発電の開発費用に対する国から事業主への補助金を、 2割から3分の1程度にまで引き上げることを検討するなど、2008年から 2009年にかけては地熱発電の促進が積極化しつつあった。
しかし、2010年5月、民主党政権による事業仕分けにより、「地熱開発促進調査事業」と「地熱発電開発事業」の2事業が 廃止や白紙化を前提とした「抜本的改善」の措置をうけることが決定された。このことについて、日本地熱学会は懸念を表明している。
東日本大震災とそれに伴う福島第一原子力発電所事故により、再生可能エネルギー開発が喫緊の課題となったことを受け、2011年6月、環境省は、熱発電所設置における二大課題である「国立公園に関わる規制」および「温泉施設に対する影響評価」の見直し作業に入った。(ウィキペディア)23011・8・17