川原 俊明
弁護士:今日は、交通事故の損害賠償請求訴訟で争点の一つとなる「逸失利益」について、お話したいと思います。
Aさん:逸失利益って何ですか?
弁護士:例えば、交通事故で不幸にも被害者が亡くなったとします。そうすると、その被害者が事故に遭わなければ得られたはずの収入が得られなくなってしまいますね。その本来得られたであろう利益、が逸失利益です。
Aさん:被害者が亡くなった場合にのみ問題になるのですか?
弁護士:いいえ。後遺症が残ってしまった被害者に対しても、その後遺症の程度に応じて逸失利益が算定されるのです。
Aさん:具体的には、どうやって算定されるのですか?
弁護士:「基礎収入から被害者本人の生活費として一定割合を控除し、これを就労可能年数に応じたライプニッツ係数を乗じて算定する」ことになります。
Aさん:・・・?
弁護士:いろいろ専門的な単語も出てきているのですが、要は、被害者の年収から生活費に使う分を引く。その額を就労可能な年齢分足す。そして、将来に渡って少しずつもらえるはずの収入を、今一括してもらえるわけですから、その分の利益を引くという計算になります。
Aさん:なるほど。でも、今の話は、被害者に収入のあることが前提になっていますよね。例えば、被害者が専業主婦の場合は、逸失利益は0になってしまうのですか?
弁護士:いいえ。そういうときのために、職種別・年齢別の賃金に関する統計、すなわち「賃金センサス」が参考になります。インターネットでもみることができますよ。これをみれば、自分と同じ年齢、性別、学歴の人の平均収入を知ることができます。そして、これを専業主婦の年収と仮定するわけです。
Aさん:子供の場合はどうなるのですか。
弁護士:裁判所では、賃金センサスの女性労働者の平均賃金を基礎収入とすることが多いようです。でも、今は、女の子でも大学進学率や就職率が高くなっていますね。そのため、全労働者の平均賃金を用いるべきだとの裁判例も増えつつあるようです。
Aさん:無職の人の逸失利益も同じように判断するのですか
弁護士:無職であっても、年齢や職歴、勤労能力、勤労意欲をみれば、就職していてもおかしくない、という人もいますよね。そういう場合は、逸失利益が認められることもあります。その場合の基礎収入は、年齢や失業前の実収入額などを参照して、個別に判断されることになります。
Aさん:私は、仕事もしていて、家に帰れば主婦として家事もしています。基礎収入は、給与所得分と家事労働分の合計額になるんですよね!
弁護士:残念ながら必ずしもそうではありません。一般論をいえば、実収入が賃金センサスの学歴計・女性全年齢平均賃金を上回っているときは実収入額により、下回っているときは専業主婦の取扱いと同様になります。
Aさん:なんだか不公平な感じがしますね・・・。
弁護士:逸失利益は、言ってしまえば「事故に遭わなければ得られた」という仮定のうえで語られるフィクションに過ぎません。それでもできるだけ実体に合った評価がなされるよう、弁護士も裁判所も日々努力しているところです。