2011年11月13日

◆松茸がスカンク?

渡部 亮次郎


幸いにして私は松茸が好物ではないから、1本何万円もする物を買おうとは思わない。田圃の真ん中に育ったお陰である。しかし周囲の人たち、特に江戸っ子は食べたがる。北朝鮮産でも中国産でもいいのだそうだ。

日本にはそのほか韓国、カナダ、米国からの輸入品は今やおなじみだが、トルコやメキシコ、モロッコ、ブータン、ウクライナからの輸入もあるという。

マツタケが英語圏では「スカンクマッシュルーム」と呼ばれているそうだ。古い毎日新聞のコラム「余禄」に出ていた。スカンク=イタチ科の哺乳類お一群。敵に襲われると猛烈な悪臭を放つ(広辞苑)。

▲話題のネット百科「ウィキペディア」を見ていて、マツタケが英語圏では「スカンクマッシュルーム」と呼ばれているという記述に出合った。

ずい分ひどい命名と思うのは日本人だからで、その香りを嫌う人々には音楽どころの話ではないらしい

▲だから世界でも珍しくマツタケの香りを愛する日本人のもとには、地球の裏側からもマツタケが集まる。近年輸入が急増した中国をはじめ、北朝鮮や韓国、カナダ、米国からの輸入品は今やおなじみだが、トルコやメキシコ、モロッコ、ブータン、ウクライナからの輸入もあるという

▲このうち05年の輸入量の27%を占めた北朝鮮産マツタケも、核実験に対する政府の追加制裁によって輸入禁止となる。もっとも7月のミサイル発射の影響で、すでに北朝鮮産の輸入は昨年の1割以下に激減しており、今後の消費者への影響は小さいようだ

▲ただ今までにも北朝鮮産マツタケが中国を経由し、中国産として日本に入っているという疑惑が報じられた。今シーズンも1度はマツタケの奏でる調べを聞きたいという人には、何とも無粋な不協和音が気になる秋になってしまった。

(毎日新聞「余録」 2006年10月13日 0時04分)

マツタケ(松茸)は日本の秋の味覚を代表するハラタケ目シメジ科の独特の強い香気をもつ食用キノコ。日本、朝鮮、沿海州に分布するほか、サハリン、千島列島でも生息が確認されている。

マツタケは、アカマツなの根を菌根化して共生する菌根菌である。ほかのキノコや土壌微生物との競争に弱く、有機物の少ない鉱質土壌で、空気量も小さく乾燥ぎみのやせた土地、つまり競合する生物が少ない場
所に生育する。

古くから日本人に好まれたと思われ、「万葉集」にもマツタケのこととされる記述がわずかにあるが、文献にはほとんどあらわれない。

これは、形からの連想で、いわば禁句だったためという説がある。また、クロマツやトウヒ類のアカエゾマツ、エゾマツ、ツガ類のツガ、コメツガの林にでることがあるが、ほとんどアカマツ林にしか生息しないことにもかかわりがあると思われる。

アカマツは日当たりのよい場所をこのむので、生態遷移(→ 生態学)のなかでは先駆樹木としてはげ山に最初に生えてくるが、やがて落葉あるいは常緑の広葉樹、針葉樹のトウヒ類、ツガ類にとってかわられていく。

平安時代にはアカマツ林はそれほど多くなくマツタケも希少だったが、平安末期には京都近辺では木材、燃料不足を生じるほどだったから、広葉樹やトウヒなどが生長する間がなく、アカマツ林が多くなっていたと考えられる。

兼好法師の「徒然草」にも、コイなどとならんでマツタケが高級食品であるという記述があらわれてくる。

明治期になって近代化がはじまるとともに、薪炭の利用、木材の伐採が急激にすすみ、アカマツ林もふえてマツタケの産出量も急増した。しかも、このころは落葉や下生えを肥料や燃料としてつかっていたため、林地の条件もマツタケにとって好都合であった。

しかし高度経済成長がはじまりプロパンガスが普及すると、木炭の生産は減少し山の手入れもされなくなってアカマツ林は雑木林にかわり、マツタケの生産も急減した。現在、人工栽培はできず高級食品となっているが、実現にむけて研究がすすんでいる。

焼きマツタケ、吸い物、鍋物(なべもの)、すき焼き、土瓶むし、マツタケごはんとして調理される。最近は韓国産のほか、中国産、カナダ産のものもくわわり、国内産の量をしのいでいる。香りはやや弱いが、味や歯ざわりはかわらない。

先の「余禄」によると「私の食物誌」を著わすほどの食通だった英文学者の吉田健一さん(吉田茂元首相長男)は「フライパンでバタで炒めること」「バタは松茸の香りと味を高めるだけのようで、これ以上の食べ方を知らない」と書いているそうだ。本は昔読んだが記憶がないのは、松茸への拘りが無いせいだろう。

マツタケの香りの主成分は、1930年代に岩出亥之助によって抽出され、合成してマツダケオールと名づけられた。マツダケオールは食品添加物として、インスタントの吸物などに、ひろくもちいられている。

<この香りは欧米人にはあまりこのまれず、中国人もマツタケよりはシイタケをこのむ。>とは色々な辞書に出てくるが、「スカンク」と言うのは、余程嫌われたものだ。

中国人は香りよりも食感重視なのか。味「シメジ」と日本人が好むシメジはどうだろう。そんなことが話し合える日中関係が来るだろうか。

マツタケと近縁なキノコに、オウシュウマツタケがある。この中にはマツタケと形もにおいもそっくりなものがあるといい、同種の可能性もある。アメリカにはアメリカマツタケがある。

日本にもミズナラ、コナラの林に形もにおいも似たバカマツタケがあり、香りをもたないものではシイ、コナラの林にニセマツタケ、ツガやアカマツの林にはマツタケモドキが生息する。

この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック