憂う法律家
11月13日、大阪市長選挙が告示されました。
大阪府と大阪市のダブル選挙を仕掛けた橋下徹前大阪府知事。大阪維新の会を背景に「大阪都構想」の実現を選挙公約にして、大阪府知事を辞任し、大阪市長選挙に出馬しました。
橋下氏のマスコミ戦術、イメージ戦略の手際良さが、大阪府民に物事を深く考えさせることなく、「何となく橋下」の人気を漂わせています。
しかし、私たちは、府政や市政を任せる政治家の選挙において、イメージだけで選んではいけません。政治の動向によって、私たちの日常生活すべてが影響してくるからです。
橋下氏が、大阪府知事になって、初期にやろうとしたことは、大阪府庁舎移転問題でした。
大阪市の南港にある咲州(さきしま)のWTC(大阪ワールド・トレードセンタービル)の最上階から見える眺めの良さに目がくらみ、倒産した第三セクターから巨額の買い物をして、大阪府庁を大阪の中心地から南港に移転しようとしたのです。
しかし公的サービス機関であるお役所は、みんなの一番身近で便利なところに置くべきものです。
橋下氏は、大阪のはずれに位置するWTC建物の購入について府議会の承認を取り付けたものの、結局は、府庁移転そのものは否決されたまま、府知事をやめてしまったのです。
自分の意のままに府政をかき回し、あげくのはては、府政を放置して、市長選挙出馬ですか。
ましてや、耐震性の乏しい危険なWTC建物や、地震の際、液状化現象が十分に推測される建物底地の対策を講じないまま、いとも簡単に大阪府知事の職を蹴ってしまったのです。何とも無責任な話です。
それだけでも、大阪府民を馬鹿にしています。大阪府民は、橋下氏に怒りをぶつけるべきです。
特に今回の「大阪都構想」にしても、しかりです。
大阪府民は、「都構想なるものの功罪」をほとんどの人に知らされていません。橋下氏自身、大阪府民に何ら説明をしていないのです。
イメージとして、大阪も東京都のようになる、というだけのことしかわからないのです。
ただ、橋下氏のイメージ戦略としては、府民に詳しく知らせない方が、好都合なのでしょう。 「大阪都構想」は、国が市町村併合を進めてきた「平成の大合併」に逆行する話ですし、東京都のように、中で区議会を設けるとすれば、議員の数が増大し、議員報酬の負担がとてつもなく莫大なものになります。
根本的には、「大阪都構想」など、いまの法律では、実現不可能なのです。
橋下氏は大阪府知事として、大都市制度のあり方を調査研究すべく、自ら大阪府自治制度研究会を2010年4月に発足させました。同年10月、最終意見がでました。
その結論は、「大阪都構想の導入は困難」という内容だったのです。委員5人全員一致の意見でした。 このようなことも、大阪府民は,ほとんど知りません。 現実問題として、大阪市や大阪府が、いくら都構想を議会で決議しても、地方自治法の改正が大前提となるのです。
橋下氏を応援しない民主党や自民党が、「大阪都構想」に向けた法改正に安易に応じるはずがありません。
橋下氏は、都構想の内容を大阪府民に何も説明しないまま、詳しいことは何もわからない府民に、大阪がすぐにでも大阪都になるかのような錯覚を与えて、選挙運動を進めているのです。
これは、明らかに大阪府民をだますものです。
何一つ大阪府知事として公約を実現していない橋下氏の仮面を剥ぐべきです。大阪府民は、目を覚ますべきでしょう。 真の政治家に大阪を託すべきです。(了)
◆本誌「百家争鳴」掲載の本稿は、11月14日(月)刊・渡部亮次郎氏主宰の全国版メルマガ「頂門の一針」2432号にも掲載されました。大阪ダブル選に対する法律家の視点です。この他の寄稿者のご卓見もご拝読ください。
◆ <2432号 目次>
・APEC出国前、韓日両首脳の対照的な姿:古澤 襄
・砂上の楼閣「大阪都構想」:憂う法律家
・TOC「制約理論」早分かり:平井修一
・沖縄戦「住民自決命令」(下):伊勢雅臣
・Slangとは:前田正晶
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