2012年01月08日

◆病院の手術実績を隠す学会(上)

石岡 荘十


【アンケート調査の詳細】

2010年、国内460余の心臓手術施設(病院)が手がけた心臓手術の実績について、日本胸部外科学会がアンケート調査の結果をまとめ、昨年末発表した。

ところが、この発表では施設の名前を明らかにせず、患者が病院の選択をする上で何の役にも立たないものだった。

しかも調査の対象となったのは、国内で心臓血管手術の看板を掲げている942施設(厚生労働省統計)のうち、比較的症例数の多いと見られる568施設で2010年中に行なわれた4つの疾患に限られている。

調査対象となった症例は、
!)心室中隔欠損症(生まれつき心室の壁に穴があいている)などの先天性の疾患

!)心筋梗塞(冠動脈が詰まる)などの虚血性心臓疾患

!)大動脈弁など4つある弁のどこかの機能に不具合がおきる弁膜症

!)胸の大動脈に瘤が出来る胸部大動脈瘤

 この4つの疾患について

・手術件数

・手術に伴う患者の死亡例の数と、その死亡率この3つを問うものだ。

これらのアンケート調査に対して、496施設が回答を寄せているが、72施設は手術実績を明らかにすることを拒否した。また回答は寄せたものの14の施設は全項目について症例数の記入がなかった。つまり白紙答案を出してきたのである。

調査に対して回答をせず、なしのつぶてというところもあった。この結果、データとして有効なところは、464ヶ所となった。

さて、その内容である。

いろいろな心臓疾患の中で最も多い、?心筋梗塞などの虚血性心臓疾患の症例数を数えてみると、年間もっとも手術実績が多かった施設は198例、少ないところはなんとゼロ。同じ心臓手術の看板を掲げていてもその実績はピンからキリなのである。

35例以上をこなしているところは71ヶ所(15%)だった。この数字は次のことを示唆する。心筋梗塞は心臓疾患全体の三分の一を占めるといわれるから、他の心臓疾患治療と合わせて、この71ヶ所では年間の心臓手術の全症例数が100を超えていると推定される。

まあまあの実績だった施設ということである。ということは、他の8割以上の病院・施設は外科医のスキルを維持するために必要だといわれる年間100例以上というハードルをクリアする手術環境にはなく信頼性には疑問符がつく。 “危ない病院”だと読み取れる。

 では患者の死亡率はどうか。

この場合の「死亡」とは、手術後30日以内に患者が死亡した症例のことを指すのだが、症例数の多いところほど死亡率が低い傾向が読み取れる。

心筋梗塞手術の全国平均死亡率は2.0%以下といわれるが、とりわけ症例数が100を超える10施設では2カ所を除いて死亡率はゼロだった。死者の出た2ヶ所でも死亡率はいずれも1%台にとどまっている。

一方、手術実績の少ないところは、年間10例以下のところが75ヶ所(16%)にのぼっている。この中で例えば、年間症例5の病院で死亡率20.00%(5人に1人)、症例6のところで16.67%。症例19の施設でも15.79%----。

症例実績の少ない施設ほど“危ない”という傾向がはっきり出ている。死者の何人かは未熟な医者の犠牲になったのではと疑われても、仕方がないだろう。

つまり、わが国全体では心臓手術の看板を掲げている施設は942ヶ所にのぼるが、極端な言い方かもしれないが、安心して手術をお任せできるところは10ヶ所に過ぎないことをこのデータは示唆している。

となると、患者としては「安心できる施設はどこだ」「危ない病院はどこか」と知りたくなるのが人情というものだが、日本胸部外科学会は具体的な施設名は明らかに出来ないというのである。(つづく)


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