2012年01月13日

◆ボールペンとの出合い

渡部 亮次郎


私にとって最初のアメリカは父が東京から買ってきたボールペンであった。昭和25(1950)年の秋だったのではないか。それまで見たことも聞いたことも無い筆記用具の出現だった。

ボールペンは先端に金属又はセラミックスの極小の球(ボール)が填め込まれており、このボールが筆記される面で回転することにより、ボールの裏側にある細い管に収められたインクが送られて、線を描くことができるペンの一種。この一連の機構がユニット化されたものをペン軸の内部に収めて使用する。

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』に言われてみればこの通りなのだが、鉛筆と万年筆しか見たことのない田舎の少年にとっては、革命的な出合いであったのだ。当時の日本の筆記用具は筆と鉛筆か万年筆しかなかった。

1884年にアメリカ人のジョン・ラウドが着想しているが、インク漏れを防止できず実用にならなかった。

1943年にハンガリー人のラディスラオ・ピロの手で、一応の完成を見る。すぐにレイノルズ社とエバーシャープ社が量産化、戦後アメリカでブームとなったが、インク漏れをほぼ完全に防止でき、安定した製品が市場に出されるのは、1950年代に至ってからだったそうだ。

日本でも1950(昭和25)年代以降国産化されたが、当初は高価で普及せず、公文書に用いることも認められなかった。しかし、量産効果と改良で品質改善・低価格化が進み、公文書への使用が可能となった。1970年代以降は万年筆やつけペンに代わる、最もありふれた筆記具となっている。

現在では太さ、色、インクの特性(油性、水性など)、ペン先の繰り出し方(キャップ式、ノック式)などにより多くの種類が存在する。

ボールペンの特徴として、独特の構造により弱い力でスムーズな線を描ける事などが挙げられるが、このインクは先端に送られるために重力を必要とするため、仰向けで長く筆記することができない。

特に微小重力の空間ではボールペンはまともに動作しないため、宇宙船内などではインクを窒素ガスで強制的に送り出す特殊なペンを使っている。 また、最近では超高粘度インクを利用した消しゴムで消せるボールペンなども市販されている。

また、ボールペンの欠点として、凹凸面があるとボールがうまく回転せず、筆記した線が湾曲してしまう点、長期間の放置に弱い点がある。

ボールペンの場合、万年筆と違い紙面に直角に近い角度で保ち筆記することが求められる。この結果、書道的手法が無視されるため、字は下手になる、と私は信じている。

ボールペンを発明するにあたっては、ペン先用極小ボールの高精度な加工・固定技術と、高粘度インクの開発が必要であった。従来の低粘度インクでは、ボールの回転と共に多量のインクがにじみ出してしまい、シャープな線を描くことができなかったのである。

ペン先用ボールの太さは 1.0mm、0.7mm、0.5mm のものが主流だが、技術革新により0.3mm、0.25mm、0.18mm といった極細のものも登場している。

これまでは主として油性、水性が主流だったが、油性ペンは長時間使わずに保管してしまうと時間が経過するに連れてチューブにあるインクが固まってしまい書き味が鈍ってしまったり、また水性ペンだと書き味はある程度保障されるものの、水にぬれてしまうとインクが消えてしまうなど弱点が多かった。

これらの弱点を改善するため、近年のボールペンでは油性インクの場合、インクの固まりを抑えて長時間保管しても書き味が維持できる「低粘インク」を採用したり、また「水性顔料(染料)インク」も登場している。

水性顔料(染料)インクは、水性ではあるが、たとえ紙が水にぬれた場合でもインクの脱色がないこと。また万が一手についた場合でもすぐに水洗いで落ちること。低粘インクと同様に長時間の保存でも書き味が落ちないなどのメリットが多数ある。

主なボールペン・メーカー

三菱鉛筆 (なぜか三菱グループではない)、コクヨ 、トンボ鉛筆 、サクラクレパス、 ぺんてる、 ゼブラ、 パイロット 、セーラー万年筆、 サンスター文具 、京セラ、 ビック 、オート 。

ところで私は父の机から勝手に持ち出したボールペンを学校で遺失してしまったが、誰かが拾って届けてくれた。その経緯を思い出そうとしても思い出せない。

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