石澤 武義 (頂門の一針から転載許諾済)
2006年1月15日から約2週間急性肺炎で入院したが、その間に、前野徹著「新 歴史の真実」を読む事が出来た。その中の“戦後日本と相似するカルタゴの滅亡”という項目に目を奪われた。少々長くなるが引用させて頂く。(主宰者註:前野氏は知人。元読売新聞政治記者・元東急エージェンシー社長)
<パール判事(東京裁判で唯一日本無罪を主張されたインドの判事)と親交を結び、終始一貫して大東亜戦争「日本無罪論」を訴えてきた田中正明さんが現代日本の自虐.退廃は“カルタゴの滅亡”に似ていると指摘しています。
今から2000年前、カルタゴという古代都市国家が北アフリカに存在し
ました。英雄ハンニバルを生んだカルタゴの民はもともと聡明で勤勉、武勇にも優れていましたが、ローマにあっけなく滅ぼされてしまいました。
カルタゴは第2ポエニ戦争でローマと戦って大敗。降伏条件として次の7項目をローマから突きつけれます。
1.完全武装解除。商船を除き全艦隊をローマに引き渡す。
2.本国以外のすべての領土を放棄する。
3.カルタゴの安全はローマが保障する。
4.ただし、カルタゴに駐留するローマ軍の給与.食糧などの費用は
カルタゴが支出する。
5.脱走兵.捕虜などをローマに引き渡す。
6.賠償金一万タレント(貨幣単位)をローマに支弁する。
7.14歳以上の男子100人を人質としてローマに送る。
お気づきでしょう。このうち6や7こそありませんが、戦後のアメリカ占領(日本)政策そのものだということを。
軍備と交戦権を失ったカルタゴは、もっぱら貿易と金儲けに走り、地中海のみならずヨーロッパ大陸まで勢力を伸ばし、世界一の貿易立国となりました。しかし、肝心な独立国の気概、自存自立の精神を失い、何でも金で済ます風潮が根付いてしまいました。
経済に酔いしれ、傲慢になったカルタゴをローマは再び襲い、シーレーンを押さえ、港湾を封鎖しました(第3次ポエニ戦争)。祖国防衛の意志すら消えたカルタゴはあっけなくローマに敗れ、この地上から姿を消し再び蘇生する事はありませんでした。
まるで戦後の日本を想起させるカルタゴの滅亡。私たち日本民族もカルタゴの民と同じくこのまま亡国の民となってしまうのでしょうか。>
これを読んで感じた事は、ローマは最初からカルタゴは抹殺せねばならぬという国の基本計画を立てていたように思われる。
数年前に、中国の李鵬元首相が豪州で講演して「20年後には、この地球上から日本と言う国は消えているだろう」と喝破して物議をかもした事がある。それは単に中国の軍事経済大発展を見据えての事ではない。
100年前の日露戦争直後に米国は優秀な黄色人種日本民族の台頭、他のアジア民族への影響が、自国の長期的アジア政策に最大の障害になるとみ、1904年セオドア.ルーズベルト大統領の下問に基づき排日政策を設定し、陸海軍統合会議ガ「オレンジ作戦(Orange Plan)」をスタートさせた。
これは日本を仮想敵国と定め、日本封じ込め長期大戦略計画であった。特に日本が大嫌いだったF.D.ルーズベルト大統領(第2次大戦時)は「日本を地球上から抹殺せよ」と真剣だったという。この100年前からのDNAは彼らの根底に今も行き続いていると考えるべきではないだろうか。
1994年宮沢.クリントンの日米包括経済協議会に端を発した日米構造
協議会が始まって毎年、年次改革要望書が双方から出されるのだが、日本からの対米要望は容れられたものがほとんど無く、一方的にアメリカ側の日本改造プログラムに盛られる多岐に亘る要求は次々と実現してゆく。本来の日本の形が消えてゆく。
この米国のグローバリゼイションの圧力、その為の規制緩和と、今後中国が強めていく中華思想圧力を念頭に、李鵬があのような日本消滅論をぶち上げたものと思われる。強ち荒唐無稽の議論ではない。
今は日米安保条約があり、最大の友好国として中国、朝鮮半島、ロシアに対峙しているがこれは、飽く迄も両国の国益が合致しているからである。後で述べるように中国が変わり、脅威が薄らいだときに、米国、それを後押ししてアジア支配戦略を進める欧米金融資本勢力はどう変貌するだろうか。
今から確りと見据えて置かないと、知らぬ間に日本はアジア大陸支配への踏み台、渡り廊下的存在に落とされて、弊履の如く見捨てられている事になり兼ねない。
韓国ノムヒョン大統領並びにその取り巻きは北朝鮮との連邦制確立に狂奔し、強力な武力半島国家を目指している。中国は共産党資本主義という矛盾した体質を内臓しつつ経済発展と軍備の増強を続け、アジアに於ける覇権国家を目指し、仮想敵国日本に向けて3000発以上のミサイルを設置して脅威を与え続けている。
内政矛盾に悩む韓国、中国とも反日政策を強引に掲げて、自国のナショナリズムを煽って国民の目を逸らすべく、自国にとって最も問題や影響の少ない靖国、歴史教科書などで内政干渉を繰り返しつつ自国政権の維持に必死である。
ほっといて勝手に言わせていけばよいものを、此れにまともに反応して自虐的な言動を伴って狼狽する日本の政治家、官僚、一部財界幹部そして一部知識階級が結構多いから困るのである。まさにオウンゴール的行動である。
然し、この両国はそんなに恐れる事は無い。韓国は北との合体を恐れる金持ちやエリ−トは外国に脱出を始めているという。北との融合後の韓国の経済的負担や破綻を恐れての事であるが、その時に、日本に経済援助や負担転嫁しようと企んでいるとしても、今の日本の政界はそこまで腑抜けにはなっていない。
ノムヒョン政策が続けば韓国の内部矛盾が露呈し、普通の民主国家に戻ってくる日があるに違いない。そのときは対日感情も変わっているはずである。
中国も同様である。膨張の頂点に達した上海は、中国企業も安い賃金を求めて内陸に移動し始めたし、政府企業も外国(東南アジア)に移転を始めたという。日本の企業は何をウカウカしているかと囁かれている。
外貨の蓄積も世界一に躍り出たが、元レート切り上げ必至を先読みした欧米ファンドは大量の元買いに入っているし、中国自身も元レート維持の為には大量の米ドル債買い増しのやむなきに至っている。
益々ドルの蓄積額が増大し、元レート切り上げの圧力が強まる。欧米ファンドの圧力も強まる一方である。元の切り上げが続いたら中国経済の先行きは目に見えている。中国の億万長者連中も海外に財産を分散し、子弟の海外留学が急増しているという。
2008年の北京オリンピック、2010年の上海世界博の後に予想される中国経済の不景気はよく言われることであるが、公害問題、エネルギー問題も益々深刻である。この転換と共に政権維持に苦悩する共産党、軍備増強ままならぬ軍部が国民生活安定化を優先せねばならなくなる。
普通の国中国に戻らねばならなくなる。それまで日本は靖国で何を言われようが、反日行動で何を行おうが悠然と受け流して日本の正しい主張を述べておればよい。
これからの日本は中国、朝鮮の問題も大事だが、亡国の坂を転げ落ちている祖国日本をどう踏みとどまらせて、背後に見える坂の上の雲に振り向かせるか、この坂を転げ落としている元凶をどう排除するかが緊急の問題である。
政治、経済、外交、教育、マスコミ.メデイア、そして憲法問題、防衛問題、皇室典範改正問題、歴史認識等々日本亡国の坂を転落しつつある現象が際限なく出てくる。
いろいろな分野の国を憂うる有識者が思い思いに正論を発表するが、なかなか国民精神振興の動きや反省の動きにつながらない。まさにゴマメの歯軋りという思いと焦燥感に駆られる。
入院中のベッドの中でこんな事を考えていると、又熱が上がる様なやるせなさである。どうすれば良いだろうか、転落の日本を引き止める手立ては無いのだろうか。
喜寿を疾うに過ぎたコチトラもうすぐあの世行きだから、後の事は知るかと言いたい所だが、アメリカの完全支配下で欧米金融資本の意のままの社会に隷属し、足軽の役に走り回される次世代の日本人を想像したくない。
明治維新の時のような回天の大事業をなす為には、現在はマスコミ.メデイアが祖国の危機の確認と反省と国民精神刷新の必要性を国民に向かって大合唱すべき事態に来ているがとても望むべくも無い。
首吊りの足を引っ張るような米中追従型売国的論調、国民を自堕落に追い込む視聴率重視のマスコミが多く全く頼りにならない。最後に藁をも掴む気持ちで考え出したのは「救国の首相」の出現である。否、国民が引き出すのである。
(1)国民特に青少年の心に刷り込まれた自虐史観を払拭する事を最優先重要課題として、祖国を再認識させ、戦後の呪縛から日本を開放する。
(2)インド、マレイシヤ、台湾を初めアジア諸国との対話、友好関係樹立が出来て、黄禍論のDNAを引きずる欧米ファンドに食い散らかされないように、アジア経済の充実と安全保障に対処する。
(3)確固たる歴史観、文明観を持って、国際的に特に中国、韓国.北朝鮮、米国、ロシアに明確に日本の主張を表明出来て毅然とした国交が出来る。
以上のような適格首相候補者が居るだろうか。考えれば考えるほど難しい。現在の私の乏しい認識と模索の範囲内では、現在の政界でより近い人物として石原慎太郎氏しか見当たらない。
70歳を超える高齢と言われるかも知れないが、救国のために老齢を捧げた首相に鈴木貫太郎氏に前例がある。色々批判する人も、右に偏り過ぎると不安がる人も多いと思うが、祖国の危急存亡の時である。小異を捨てて大同について国の基盤を再構築してから次の世代の総理に譲っていけば良い。
どうやって石原氏(彼に代わるベターな人材がおありならなお結構)を我々の代表として、国の内外に向かって施政方針演説をして貰うべく国会の壇上に送り出すか知恵(場合によっては超法規的にでも)を絞らねばならない。この時にマスコミがその波を作れれば最高だがやはり望むべくも無いか。
2006年02月06日
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