2012年01月23日

◆危ない”心臓外科専門医(上)−@

石岡 荘十


〜これでいいのか、日本の心臓手術体制〜

産婦人科や小児科の医師の数や病院が足りないといわれる一方で、心臓血管外科専門医や心臓手術の看板を掲げる病院だけは患者の数に対して異常に多い。心臓・血管の疾患は高齢社会の宿痾とでもいうべきものだ。

しかし、多過ぎる心臓外科専門医や病院が多過ぎるという現実が患者を惑わせている。それだけではない。手術を受ける年間6万人の患者の命を危険にさらし、未熟な専門医の手術によって人知れず犠牲者が出ているのではないかと懸念されている。

見かねた厚労省は2011年10月、「専門医のあり方」を見直す検討会を発足させた。報告書が出るのは2013年の春だという。

高齢社会で確実に増え続けている心臓病や動脈瘤など血管疾病の患者の治療体制を上・中・下にわたって検証してみる。

◆乱立状態が続く心臓血管外科の医師と病院

市場原理がきちんと働くマーケットでは、供給は需要の大きさによって自然に決まっていく。売れないものを作りすぎたりすれば商売は成り立たないからだ。

医療業界での「需要」は治療を希望する患者であり、「供給」は医師や看護師などの医療従事者、さらには病院などの医療施設ということになるが、いろいろな診療科の中で心臓血管外科だけは需要をはるかに超える専門医が次々と世に送り出されている。

また心臓血管外科の看板を掲げる病院も乱立した状態が長年続いていている。専門医も病院も、数が多ければいいというものではない。問題は医師や病院の“品質”である。

その患者の数と、心臓血管外科専門医の“品質”との関係に着目してみよう。

2008年時点での日本胸部外科学会の調べによると、日本国内で心臓血管手術を受けた患者(末梢血管の治療を除く)の数は年間5万9000人ほどだった。

最近の数字はまだ算出されていないが、社会の高齢化に伴って患者は確実に増えているのは間違いないから、手術が必要な患者の人数はざっと6万人に達していると考えられる。

これに対して必要な手術の執刀を許されている心臓血管外科専門医の数は2011年11月現在で1742人である。単純に、患者の人数(約6万人)を、専門医の人数(1742人)で割ると、年間34〜35例ということになる。

つまり1人の専門医が、1カ月当たり1〜2人の手術をこなしていけば、遅滞なく患者からの「需要」に応えることができるわけだ。つまり「供給」体制は十分に整備されており、ここには産婦人科や小児科などのような医師不足の問題はない。(続く)

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