2012年01月24日

◆危ない“心臓外科専門医”(上)-A

石岡 荘十


〜これでいいのか、日本の心臓手術体制〜

◆専門医が多過ぎることが様々な問題が引き起こしている

ところが実は、この多過ぎる専門医の存在が様々な問題を引き起こしているのだ。

心臓血管外科の執刀医には、脳神経外科と並んで、高度で微細なテクニック(手技)が要求される。たとえば、鉛筆の芯ほどの細い血管を何本も、髪の毛より細い糸で素早く縫い合わせる高度な縫合は、心臓血管外科外科医にとって基礎的なものではあるが、必須の技術である。

しかし、この技術をマスターするのは容易なことではない。少なくとも数百例の手術経験を積まないと習得できないと言われている。

海外留学中の執刀医と助手の経験を含めて、これまで8000例以上の手術経験を持つという元京都大学心臓血管外科教授(現名古屋はハートセンター副院長)の米田正始医師は「心臓血管外科医にはプロのスポーツ選手と同じ一面がある。

手術中に想定外の事態に遭遇したとしても、とっさに最適の対応を取ることのできる反射神経と、これを裏付ける高度な知識と技術が必要だ。そのためには一定の数、少なくとも数百例の手術経験と、毎年100例以上の手術をコンスタントにこなす環境が必要だ」と言う。これが、この業界の常識である。日々のトレーニングを怠れば、勘が鈍り技術力は落ちる。スポーツと同じだ。

仮に1人の執刀医が毎年100人の手術を手がけるとした場合、日本国内に600人のプロの医師がいれば、心臓病患者約6万人の「需要」に応えることが出来るわけだ。

ところが現役の外科医の中には、数はそれほど多くないものの1日当たり2〜3例、年間で数百例を精力的にこなすスーパードクターもいる。このため外科医はもっと少ない人数でも需要に応えることができる計算になる。ということは、残る千数百人もの専門医のところへは、執刀のチャンスはめったにめぐってこないことになる。(続く)

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