2012年01月26日

◆危ない“心臓外科専門医”(上)―C

石岡 荘十

〜これでいいのか、日本の心臓手術体制〜

◆異常に多い心臓手術の看板を掲げた病院の数

もう一つ重大な問題は、心臓手術の看板を掲げている病院の数の異常な多さだ。

前述のアンケート調査(2004年)当時、日本で心臓外科の看板を掲げている病院は813施設(厚労省統計)だった。このうち比較的、手術実績が多いとされる553の「修練施設」について「胸部外科医の処遇調査ワーキンググループ」が調査したところ、その結果は惨憺たるものだった。

修練施設というのは、専門医を育てるため若い医師の教育を請け負っている比較的大きな病院のことだが、以下のような結果だった。

<553施設のうち厚生労働省基準の「年間手術数100例以上」をクリアするためには152施設があれば十分>

要するに@400以上、つまり全体の7割を占める修練施設で、十分なスキルを習得し、維持するチャンスのない外科医がうろうろしているA心臓手術という看板を掲げているものの、その実力には疑問符がつくB「看板に偽りあり」――というわけだ。

それから3年後の2007年行なわれた同様の調査では、回答のあった202施設の年間手術数は数十から数百、平均は96例に過ぎなかった。

ところが、厚生労働省統計によれば、こうした調査結果が出たにもかかわらず、2010年現在、心臓外科を標榜する病院の数は、少なくなくなるどころか、100以上の施設が新たに心臓外科を掲げて開業し、938にまで激増している。

この中には、数は多くないが年間の手術数500例以上のところや、1000例を超える患者の手術実績を誇っているところもある一方で、残る8割近い病院には年間数十人の患者しか来ず、手術が月2〜3例という中小の病院が乱立しているのである。

数に限りある患者を、多過ぎる心臓血管外科専門医と中小の病院が奪い合う構図が浮かび上がってくる。これに巻き込まれる患者はたまったものではない。後で触れるが、中には「カテーテル治療などの内科的な治療法で治る患者まで手術室に引きずり込んで、外科医がメスを振るうという怖いケースもある」と噂されている。(続く)
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