石岡 荘十
〜専門医資格認定機構に訊く展望・
進まない心臓手術業界の改革〜
要するに、幕内教授の考えでは、
@ 専門医認定基準を一気に引き上げると混乱するので得策ではない
A 一気に専門医認定基準を挙げると、地方の過疎地に住む患者を見捨てることになる
B 日本の心臓手術の成績は欧米諸国と比較してまったく遜色がない
C 心臓疾患による年間の死者16万人の中には、最適の治療を受けられなくて亡くなった人がいる可能性は否定できない
D専門医の扱った症例報告を義務付け、データベースを作るが公表の予定はない
幕内教授は明言しなかったが、どこの業界でも改革を進めようとすると、既得権が改革を妨げるという話をよく聞く。
もし専門医認定基準をめぐってブレーキをかけようとする勢力があるとすれば論外だ。ことは患者の生命に関わる問題だからだ。業界にとっていま必要なのは、患者の利益より業界の既得権を優先する対症療法ではないだろう。
専門医制度そのものを俎上にのせて、大鉈を振るう外科治療が必要なのではないのか。ただこの手術は相当難易度が高い。
いま高齢者といわれている人たちが、存命中に改革が実現する見通しはないということである。それまでの間、あちこちで、まともな手術を受けられなくて死亡する人も出てくるだろう。いや、新聞沙汰にはなっていなくとも、現にきのう今日、そんな犠牲者が出ている可能性は否定できない。
専門医の資格認定制度が実施されたのが2004年。この間心臓手術を受けた患者は、少なく見積もっても年間5万人として、30〜40万人以上という計算になる。
「日本の心臓手術の成績は欧米諸国と比較してまったく遜色がない」と言うが、この危ない治療体制の下で起きた医療事故は内部告発で明らかになった東京医科大学の”事件“だけだ。ほかはすべてうまくいったというのは本当だろうかという疑念を拭えない。
幕内教授も心臓疾患の年間死者16万人の中に東京医大のようなケースが他にないとは「断言できない」と認めている。未熟な専門医の医療ミスで患者が死んでも、施設は申告せず、患者遺族から訴えられもせず、内部告発もない。こうして”事件“は闇から闇へと葬り去られているのではないか。(続く)