石岡 荘十
〜専門医資格認定機構に訊く展望〜
◆結局、改革には“外圧”が必要
このような異常な状態から脱出するためには
@何よりも業界の自力改革、
Aそれを促す強力な世論、
そして最終的には
B一国の医療体制の構築に責任ある行政のはずだ。
ところがこの3者とも、決定打を欠いている。「すべての専門医に手術症例の登録を義務付ける」方向だと幕内教授は言うが、東京医科大の“事件”が内部告発によって明るみに出たように、医療施設長が進んで正直に申告するとは思えない。
データベースの公開もしないという。なんといってもカネも時間もあるが、医療問題や業界事情に疎い無邪気な心臓病“適齢期“の方々、団塊世代という700万人のカモの大群が眼の前をひらひらと飛んでいるからだ。
業界では、この”マーケット“でひと稼ぎするビジネスチャンスを見逃す手はないという心理が働いているとしか思えない。
ならば、世論に期待したいところだが、少なくとも大手マスコミで今年の資格試験と、これがもたらすリスクをまともに取り上げたところはなかった。日本胸部外科学会への「大手マスコミからの取材は1件もない」(折原正典事務局長)という。まことに不思議なことだといわねばならない。
改革のために残る手段は、医療行政に責任を持つ国の強力な調査・指導、場合によっては規制という“外圧”が必要なのではないか。国民の命を守るのは国の責務であり、同時に今日までこの問題を放置してきた責任が問われなければならない。
厚労省は10月13日、初めての「専門医の在り方に関する検討会」(座長 高久史麿自治医科大学学長)を開き、報告書をまとめることとなった。
報告書では(1)求められる専門医像、(2)医師の質の一層の向上、などが取り上げられ、専門医の認定プログラム・基準、専門医資格更新の基準などについても踏み込んだ検討を行うとしているが、結論が出るのは2012年度末をメドとしている。
この問題は最早放置できないと気づいた厚労省だが、「検討会の結論に期待して見守りたい」(植木誠医政局医師臨床研修推進室長)とのんびりしている。それまで“危ない”外科医を野放しにしておくことになる。
東京医科大学病院であったように危ない心臓血管外科専門医の執刀で患者が死亡するようリスクを杞憂だと見過ごすことは出来ない。いま同様のケースが表沙汰になったら、国はどう責任を取るつもりなのだろうか。
もしこの間に、重大な医療ミスが発覚するようなことがあれば、病院や認定機構などの業界だけでなく、国も心臓手術が“危ない状況”にあることを認識していながら放置した責任、未必の故意を厳しく問われることとなるだろう。(続く)