2006年10月15日

◆和歌山官製談合の行方


                 城北 幹朗

福島県発注工事をめぐる談合事件で、実弟が逮捕され「同義的責任を取る」として佐藤栄佐久知事が辞職した問題が起きている最中に、今度は和歌山県で県の出納長らが逮捕される「官製談合」が摘発された。ここでも木村良樹知事の関与の有無が俄に問われる事態となってきた。

この和歌山県発注のトンネル工事入札をめぐる官製談合では、大阪地検特捜部が12日、県出納長の水谷聡明容疑者(60)と大阪府河内長野市のゴルフ場元社長の井山義一容疑者(55)、準大手ゼネコンの3幹部の併せて5人を競争入札妨害(談合)容疑で逮捕した。

関係者によると、この「官製談合」の仕組みの大筋が、徐々に浮かび上がってきた。それとは、水谷出納長の県のサイドからと、知事と親交の深いゴルフ場の井山元社長との両方向から、ゼネコン側の仕切り役だった大林組(本社・大阪市)に工事発注先の業者を具体的に名を挙げて依頼、それに沿って大林組が共同企業体(JV)の構成つくりを行ったというもので、逆三角形の相関関係図式になっている。

ところが捜査が進むにつれ驚くべき事実が、関係者から明らかになってきた。というのは、和歌山県が平成16年11月に発注した同トンネル工事入札4件のうち2件について、井山元社長が県側への口利きの見返りとして、JVの準大手ゼネコン「ハザマ」と「東急建設」からそれぞれ5900万円と6000万円。さらには大林組と準大手ゼネコン奥村組からそれぞれ9000万円を「謝礼」として渡ったというのだ。入札価格の5%に相当するものといわれ、総額約3億円にのぼるとされる。

一体、何故そんな巨額な金が、ゴルフ場の井山元社長にそう易々と渡るものなのか。なぜ和歌山県の公共工事に口利きが出来て、想像を超える「謝礼」が流入してくるものなのか。この辺りから、木村知事との親交の深さに関連があるのではないかという疑惑が浮上してくる。知事はこれに関与していないのか、である。

その木村知事は、自治省(現総務省)から大阪府の総務部長に就任、副知事に昇任して退職、平成12年に和歌山県知事選挙に出馬して当選し、現2期目。大阪府に着任する前には和歌山県の総務部長も経験している。

大阪府の幹部OBによると、木村知事は大のゴルフ好きで、大阪府庁総務部長・副知事当時に井山元社長の経営するゴルフ場のメンバーである同僚幹部に連れられて同ゴルフ場に行き始めて以来、井山元社長との親交がはじまったという。
南北朝時代、両天皇が同居されたという“女人高野宿坊”の遺跡の裏手高台にあるゆったりした玄人好みのゴルフ場だが、ここが両人の出会い場所だった。

その親密な付き合いから和歌山県知事選挙に木村知事が出馬する際は、井山元社長が実質的な裏選挙対策本部長を務め、資金面で全面支援をしても貰ったという。

木村知事は、就任直後から「談合を防ぐ入札制度の改革」にいち早く取り組むと共に、他県の改革を標榜する知事とも連動して「改革知事」のイメージを強烈に打ち出した。本メルマガにも「ドクターヘリ」の先駆的リーダーとしてしばしば登場している。

そういうアグレッシブな行動を示す一方で、就任直後の12月議会の際、同県田辺市の教育研究施設の工事計画を急遽変更。契約していた設計会社との契約を打ち切った上で、井山元社長の関係のある設計会社と契約をし直しており、この行為が知事選挙への見返りではないかと、今なお議会筋とくすぶっている。

さてその井山元社長のことだが、同元社長の縁戚が和歌山県にある超有名な宗教団体の幹部をしていることから、和歌山県にはよく精通しているといわれる。そして、知事選挙で現知事誕生に功績が多大であったことが広く知れ渡ると、県の主力基盤産業である建設業界にも不動の地位を築き、県首脳と通じる「強力パイプ役」としての権勢を振るい出したといわれる。

以来「井山詣で」が盛んとなり、公共工事の発注をめぐっては、地元3有力業者と同元社長を中心に業界調整が進められていたようだ。

その井山元社長を知事が水谷出納長と引き合わせ、以後建設業会の代表と県3の出納長とが直に連絡を取り合い、気脈を通じることになったようだと業界筋は説明する。だから今回JVの中に地元2業者を組み入れることが実現したのも、両者の合意に基づくものと見られている。

「官製談合」とは、主導役のゼネコンに対し、「官」側が「天の声」として受注者を割り振りを指示することである。<10月14日・産経新聞「主張」>

木村知事は、「そういった(官製談合の)事実は一切確認していません。地検の捜査には引き続き協力していきたい」というコメントを発表し、県の官製談合の存在を否定している。

だとすれば、水谷出納長は上司木村知事の意思に反する官製談合を勝手に起想し、自己判断で実行したのだろうか。「談合を防止したい」とする知事の意思に背いてまでも、腹心中の腹心が危険を冒してまでも遂げなければならない野望でもあったのだろうか。

地方自治体の職員は、上司の意向に反する業務の執行を忌避することをわきまえた人種であるが、悲しいかな、間違った下命でも、それが上司の意思なら従わざるを得ない宿命にあると、大阪府幹部OBがそう嘆いていたことがある。

井山元社長に流れた巨額な「謝礼金」のシステムとその迂回ルートも、だれが考え、誰の意思でそのルートを稼動させたのか。知事と親交の深い井山元社長が、知事に隠して自己利益獲得のために図った行為なのだろうか。

関係者の話によると、特捜部は裏付け捜査を慎重に進めると共に、「ハザマ」らが井山元社長に支払った金の流れを厳しく追及する方針だという。いづれにしても、木村知事に対する関与の有無が当面の大きな焦点となってきたようだ。(了)     2006・10・14
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック