2012年03月06日

◆本当に「話し合い会談」は実現するのか

杉浦 正章


一口に「話し合い解散」といっても、54年前に一度あっただけ。以後、解散ムードが盛りあがる度にその可能性が言われてきたが、実現したことはない。今回本当に実現するのかということだ。


そのカギは未だに明らかになっていない首相・野田佳彦と自民党総裁・谷垣禎一の極秘会談の中身にある。中身が確固とした確認事項か、そうでないかだが、これまでのところあうんの呼吸であった可能性が高い。「話し合い解散」ありうべしという「呼吸」だ。
 

与野党が“仲良くけんか”しようというのだから、あらゆる政局のテーマの内でも話し合い解散ほど難しいものはない。1958年の話し合い解散も、珍しく呼吸が合ったものに他ならない。


55年の保守合同後の自民党は、石橋湛山から政権を引き継いだ首相・岸信介が党内的に揺さぶりをかけられて、解散による政権基盤確立の必要に迫られていた。一方社会党は左右社会党の再統一の後だけに総選挙で党勢が伸びるという期待感があり、委員長・鈴木茂三郎も解散実現で党勢躍進を達成しようという思惑があった。


もともと55年1月の解散以来3年3か月が過ぎており、どっちみち解散は避けられないという流れでもあった。こうした中で岸と鈴木が会談して話し合い解散を実現した。総選挙の結果は自民党が微減、社会党が微増だったが、社会党の倍の勢力である自民党に勝利感がただよい、社会党が意気消沈するという状況を招いた。自社二大政党体制は確立した形となった。
 

今度の場合はその党首会談が“極秘”で行われたところが、“急所”である。なぜ極秘である必要があったかといえば、民主・自民両党とも国会で激突している最中であり、会談に失敗すれば双方の党内から突き上げを食らうことは必定であった。


公式な会談で失敗するわけにはいかないのだ。極秘会談なら、話がまとまる方向に向かわなければそれこそ極秘のままで葬り去ればよいのだ。ところが焦点の2点において冒頭述べた“あうんの呼吸”があったに違いない。それは野田が消費増税に反対する小沢一郎を切ってでも、これを実現する強い姿勢を示し、一方で谷垣もその場合なら協力する構えを見せたのだろう。


解散は「小沢切り」をして政権党が分裂すれば、憲政の常道として不可避という認識であったのだろう。この両者の「呼吸」が会談をリークさせて話し合い解散ムードを高めることになったのだと思う。自民党副総裁・大島理森と会談のお膳立てをしたといわれる官房長官・藤村修が最初に「外向けには会っていない」とリークしたのは、消費増税法案成立への流れをつくれる確信が野田の側にあったからだろう。
 

問題は双方の党内事情がこれを許すかだが、自民党は政調会長・茂木敏充が先頭を切って極秘会談をフォローしている。「首相が『最低でも(民主党内の)7〜8割はまとまった。あとの2〜3割は出て行ってもらう』ぐらいの意気込みで取り組まなければ、本格的な話し合いはできない」と発言したのは、ネガティブと受け取るより、野田へのエールと受け取るべきだろう。


前参院政審会長・山本一太が、「話し合いでなく追い込むべきだ」と流れにさおさして反対しているが、スピッツ調で説得力はない。しかしこの民主、自民の協調ムードを6月までの3か月間維持するのは、正直言って両党首ともに至難の業であることは確かだ。
 

問題は「小沢」をかかえる民主党側にある。小沢はこけにされて激怒しており、今後ゲリラ攻勢をしかけるだろう。「小沢ベトコン」は消費増税法案を閣議決定する3月中下旬に第1次攻勢、5,6月に第2次攻勢を野田に仕掛ける構えだ。野田は1次攻勢で小沢を切るか2次攻勢を受けて小沢を切るかの決断を迫られる。


1次攻勢で「小沢切り」となれば、解散のテンポは早まる。3月解散4月選挙も除外できないが、これはハプニング的な展開で予測がつかない。「0増5減」の定数是正は与野党が合意すれば一日で法案の成立が可能だが、問題は区割り作業と周知期間が必要で次の選挙には間に合うまい。
 

焦点は第2次攻勢だ。6月21日の会期切れを目指して、小沢は消費増税法案反対投票を軸に行動に出るだろう。小沢の現在の発言からすれば公然と法案採決に反対せざるをえない状況に至ることになる。


そうなれば「民主党分裂、首相解散決断」といった事態となり、「話し合い」の出番だ。法案を自民党の協力で成立を図り、解散・総選挙へとなだれ込む。その場合公式な党首会談で話し合い解散を確認することになるか、2月25日の極秘会談の「あうんの呼吸」の延長だけで突入するかはまだ分かりようがないが、事実上の話し合い解散となることには変わりはない。


要するに消費増税法案が成立し、解散となれば話し合い解散なのであろう。いずれにせよ、曲折と浮き沈みをたどりながらも、極秘会談の作った流れが主流となっていきそうな気がする。

<今朝のニュース解説から抜粋>     (政治評論家)


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