2012年03月19日

◆出たり引っ込んだりで民・自の大接近

杉浦 正章



俳句の季語で政治を語る第2弾。ちょうど今頃の春の季語に「啓蟄(けいちつ)」がある。地下に潜っていた虫やヘビが這い出してくることを言う。日経俳壇の黒田杏子選の拙句に「啓蟄の天道虫に雪の舞う」がある。天道虫は表に出たはいいが寒くて引っ込みたいのだろうと気持ちを詠んだ。


今の民主党と自民党の“接触”はその啓蟄で、話し合い解散やら大連立やらが出たり引っ込んだりの状況だ。しかしこの動きは啓蟄を繰り返しながらも消費増税の実現に向けて全容が姿を現す流れになってゆきそうな気配だ。
 

2月25日に行われた首相・野田佳彦と自民党総裁・谷垣禎一の極秘会談が明らかになったのは3月1日。間を置かずに野田と呼吸を合わせるように副総理・岡田克也が自民党幹部にこれも極秘で会った。おそらくかねてから親交があり、筆者も水面下で必ず会うと予言していた副総裁・大島理森との会談であろう。


この席で岡田は消費増税での大連立で5〜6人の入閣ではどうかと持ちかけたようだ。大島は独断で受けるわけにもいかず、断ったようだ。もちろん総選挙を前にして大連立などしょせんは無理な話だ。自民党幹事長・石原伸晃も「いつ沈むか分からない船に一緒に乗って航海を助ける余裕はない」とにべもない。
 

岡田も不可能を承知で“接近策”をとっているのだ。野田、岡田コンビは意図的に一種の攻勢を自民党に仕掛けている形なのだ。それは同時に党内小沢グループへもきわどい牽制球を投げていることにもなる。消費増税での党内論議が始まる前に極秘党首会談、論議が始まっている最中に極秘の副総理・副総裁会談の流布だ。2段ロケットを食らって、さすがの元代表・小沢一郎もたじたじの体であることは間違いない。


こうした動きをフォローするかのように民主、自民の双方から明らかに会談を背景にした“秋波”が送られ始めているのだ。
 

まず、岡田が17日那覇で「自民党が民主党を批判し、民主党がそれに反論するような政治は、国民が求めている政治ではない。消費税の問題などの重要な問題について、民主党と自民党がお互い国民の立場に立って議論し、譲り合って合意に達する必要がある。


そういう政治が実現しないかぎり、既存の政党は国民からますます見放されていくだけだ」と述べた。確かに読売新聞主筆の渡辺恒雄が文藝春秋誌上で「橋下市長の発言はヒトラーを想起させる」と批判した大阪維新の会の台頭の背景には、既成政党批判がある。民主党も自民党もようやくこれに気づき始めたのだ。
 

自民党幹部らも微妙な発言をし始めている。幹事長・石原伸晃が17日のテレビで「7万円を配る最低保障年金の導入や年金一元化はしないで現行制度をよくする形で社会保障を充実させる。そのために消費増税をと野田さんが言うのなら谷垣総裁も考える」と述べた。従来の突っぱねる感じが失せて、条件次第で消費増税に賛成する可能性を示唆しだしたのだ。


18日のテレビでは元官房長官・町村信孝が「自民党は4年前から消費税を上げると言ってきた。方向感覚は同じだ。最低保障年金の撤回など大胆な合意が政府・与党に出てくれば賛成の事態もあり得る」とこちらは何と「賛成」という言葉を自民党幹部で初めて使っているのだ。共通項が「最低保障年金」となっているのも、自民党内で調整した上での話である可能性が濃厚だ。


もともと野田政権にとって最低保障年金などは、現在論議の最中の「再増税」と同じで、取引材料にしか過ぎない。野田が消費税という大の虫を生かすため小の虫を殺すのは目に見えている。高いハードルではない。
 

もちろん自民党には、民主党内の論議を見据えて野田をけしかけて消費増税法案で突っ走らせ、法案の国会提出を実現させて、今度はこれを軸に早期解散を実現しようという魂胆がある。野田はその戦略を見抜きつつも、何が何でも消費増税を実現させるという意気込みで、自民党との“危うい関係”を醸成しつつあるのだ。


この流れは加速して次第に「らんまんの今朝も啓蟄明日も啓蟄」(拙句)という状態になってゆくのだろう。別に大連立などと仰々しいものは実現しなくても問題ではない。政策ごとの「パーシャル連合」もあるし、閣外協力もある。消費増税法案のためには何で出てくる春なのだ。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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