2012年04月12日

◆「言葉尻戦」の底流には依然融和路線

杉浦 正章


党首討論を表面的に掌握すると、今朝の朝日新聞のように「民・自泥仕合」と受け止めることになる。激しい言葉の応酬が討論のすべてのように見えるのだが、政局は“流れ”で判断しなければならない。蹴飛ばしあいの影にある真意を見極めると、首相・野田佳彦は解散・総選挙への姿勢をいよいよ鮮明にしている。


一方で自民党総裁・谷垣禎一は、「消費増税待ったなし」と問題意識の共有を明らかにしている。これは2月25日の極秘会談の融和路線を継承するものであろう。
 

確かにやりとりでは面白いが激しい言葉が行き交った。野田が与野党協議や党首会談に応じない谷垣を「土俵に上がったのに待ったをかける」と非難すれば、谷垣は「待ったをしているとは無礼千万。のしをつけて返したい」とやり返す。また谷垣がマニフェストをとらえて「うその片棒を担いでいる」となじれば、野田は「自民党だって郵政改革が違う方向に進んでいる」と逆ネジをかませた。


このやりとりに幻惑されると激突の泥仕合という判断になる。しかしやりとりは「言葉尻戦」で終わっていることを見逃してはなるまい。シャモの蹴飛ばしあいで致命傷にはならないのだ。
 

重要ポイントの一つは野田が自らの「政治生命をかける」という発言を解説した点だ。「政治家ととしての集大成の思いを込めてこの言葉を使った。そういう覚悟であることは理解してほしい」「政治家としての重い言葉であると強く自覚している」と述べたのだ。


これは首相の立場を考慮しながらも、ぎりぎりの表現を使って消費増税に連動した解散・総選挙への決意を表明したものに他ならない。


一方で谷垣は野田から消費増税が「待ったなしの段階にあることを共有して欲しい」と求められたのに対して、「待ったなしの問題意識は共有する」と表明した。これは両党首の大局観が明らかににじり寄っていることを物語っている。大局観とは消費増税で解散をせざるを得ないという認識と、今国会での消費税処理は不可避という判断である。


野田がみんなの党代表・渡辺喜美を切り捨てたのも、自民党席から拍手が生じたほどだ。渡辺は自民党の谷垣の質問時間を分けてもらったのにもかかわらず、礼も言わずに質疑に入り、民主党を「出来損ないの自民党」と決めつけた。質問内容も、大阪市長・橋下徹の主張にこびを売った消費税の地方移管論だった。


これに対して野田は「自民党の枠で質問しているのにその表現はおかしい。荒唐無稽(むけい)のアジテーションだ」と一蹴した。この結果、渡辺は初陣であえない“最期”を遂げたのだった。
 

一連の質疑で浮かび出たものは、極秘会談で「話し合い解散」などの可能性を話し合った路線が依然壊れておらず、継続されているということであろう。しかし野田にとっても課題は大きいことが露呈していることも確かだ。


谷垣が、小沢側近の民主党幹事長・輿石東が消費税法案の早期審議入りを渋っていることをととらえて「審議が早く進むとうまくない。ゆっくりしようという議論が聞こえてくる。危惧(きぐ)している」と皮肉ったことがポイントだ。これが物語るのは「小沢切り」に踏み切らない野田へのいら立ちであろう。


谷垣は小沢グループの造反の動きをとらえて「覚悟を示すのなら、覚悟が体臭となって殺気となってにじみ出ないとおかしい」と強調した。協力を求めるのなら、「小沢切り」をしてからにして欲しいということだ。けしかけているのだろう。
 

しかし谷垣にしてみても、突っ張ってばかりもいられないお家の事情がある。自民党内の早期解散圧力が強いのに加えて、「谷垣降ろし」も本格化しかねない状況なのだ。解散・総選挙で自民党が第一党になれば首相の座が待っている可能性が強いだけに、この機を逸したらすべてが海の泡と消えてしまいかねないのだ。


したがって消費税審議が始まり、鼎(かなえ)が煮え立ってくれば、妥協に転ぜざるを得まい。野田が討論の中で数度にわたって党首会談の開催を“懇願”したのをむげにするわけにもいくまい。第2次極秘会談や党首会談を経なければ煮詰まるものも煮詰まってこないのだ。


谷垣は、野田のいう「トップ同士の腹合わせが大事であり、やらせてほしい」という立場を認めたいのはやまやまなのだ。むしろ谷垣の方も党首会談を必要としているのだ。


こう見てくると、朝刊の見出しでは朝日の「民・自泥仕合の党首討論」が皮相的であることが分かる。読売の「ゴールは一致 道筋にずれ」が深く読んでいることになる。

<今朝のニュースより抜粋>  (政治評論家)
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