2006年10月29日

◆ヒラリーになるのか

                渡部亮次郎

共同通信社の常務理事だった古澤襄(のぼる)さんが2006年10月25日の自
らのブログで指摘しておられる。
http://blog.kajika.net/

<米ブッシュ政権のイラク政策は失敗している。泥沼化した状態の中で
四苦八苦している。米国民は明らかにイラクからの撤兵を求める政策変
更を求めているが、同時にブッシュ政権の下では劇的な変化が望めない
とみているようだ。

このままの状態で大統領選挙を迎えて、民主党がヒラリー・クリント
ン上院議員を擁立すれば、雪崩現象が起こる可能性も否定できない。

ワシントンからの共同報道は、ブッシュ政権のチェイニー米副大統領が、
その見方を肯定して危機感を表明したと伝えてきた。

チェイニー米副大統領は24日、米FOXテレビのインタビューで、2008
年の次期大統領選で民主党のヒラリー・クリントン上院議員が勝利する
可能性は十分あると明言したという。

副大統領はヒラリー氏を「手ごわい候補になる」と評価。「私はほぼす
べての論点で彼女に同意できないので勝ってほしくはないが、彼女を過
小評価すべきではない」と述べ、ヒラリー氏が出馬し予備選を勝ち抜け
ば、共和党にとって相当厳しい戦いになるとの認識を示している。>

多分、ヒラリーが大統領になれば、中国への傾斜が激しくなり、日本の
存在はほぼ忘れられるだろう。夫のクリントンが大統領だった時以上だ
ろう。内政優先の施策に走る可能性大だかれである。

ブッシュは明らかに間違いを犯した。民主主義がこの世で唯一無二の政
治制度だと勘違いしてしまったのである。だが、いかに大国の成功した
政治制度であろうとも、アメリカ建国の特異性を考えれば民主主義こそ
は特異な制度なのである。少なくともイラクに向かない。

欧米人は自然を征服してこそ人間だと考える。我々日本人は自然と同棲
してこそ「美」があると考える。なぜなら人間は気候風土によって生か
される動物である以上、気候には逆らえないと考える民族なのである。

気候風土。日本には主食としてのコメが生えた。だから日本人は西欧人
のように獣を山野に追うことも無く、田圃を見つめる生活を選んだ。1年
を待たなければ収穫物を手にできないとも知った。

その生活は民主主義では律する事はできなかった。水利である。田んぼ
の上流から下流に流す水は「摂理」であり「協議」では流れない。集落
の長(おさ)の独裁によってしか運営できなかった。

知力と財力を備え持ったものが「おさ」になり、上流から合理的に水を
下流に流した。田植えの順序に合わせて流した。そこから協業が自然に
組まれ、村落のルールが確立されて行った。それが敗戦までの日本の農
村の管理ルールだった。

お気づきのように、これでは貧乏人は何時までも貧乏である。天才も秀
才も百姓として埋もれる。それが厭なら村を捨てるしかない。ところが、
占領軍(アメリカ軍)の進駐によって、すべてが変わった。

農地が小作人に払い下げられた(農地解放)結果、百姓は生産意欲と肥
料、農薬の進歩、栽培手順の改良などによって生産量を4倍に増やし、豊
かになった。アメリカによる民主主義は日本ではやや成功したのである。
人口の大多数を占めていた農民を味方にした利点が大きかった。

但し、多大なものを喪失した。モラルの低下、家族主義の崩壊、拝金主
義の蔓延等々。現在の教育現場の混乱なども敗戦によって60年後に顕在
化した「喪失」でなくて何であろうか。

アメリカ旅行をしてつくづく感じる事は、彼らが実に単純な感覚で生き
ていることである。すべてを○か×、白か黒かで割り切ろうとする。と
ころが我々はロッキード事件でさえ「灰色高官」なるものを工夫?して
罪人を救った。

アメリカは人種の坩堝と言われるぐらいの多民族国家だから、あまりに
も多様な価値観と主張が衝突し、救いがたい対立に発展しかねない。そ
こで単純明快なルール、アメリカ式民主主義を確立して衝突を避けた。
賢明な措置である。

しかし、だからと言ってそれを中東やアフリカにまで適用できるほどの
普遍性があるかといえば「否」に決まっている。なぜなら中東には中東
の、アフリカにはアフリカの気候風土があって、北アメリカの気候風土
とは画然としているからである。

ブッシュとその取り巻きは、そこを理解できないものだからイラクに突
っ込み、もはや抜け出せなくなってしまった。そこをヒラリーの突かれ
れば、敗戦の危険性は十分だ。

共和党に対策は無いのか。古澤氏は次のように結んでいる。

<ヒラリー・クリントンに対抗できる共和党の大統領候補は誰か?2年
後を予測することは難しいが、私はコンドリーザ・ライス国務長官しか
いない気がする。

これも米政治史上、初の女性対決になるのだが、コンドリーザ・ライス
が右派だけでなく黒人層やヒスパニック層などの支持を集めれば、共和
党にも勝機が十分にある。

そのためにはブッシュ政権がイラク政策を大胆に転換する必要があるの
だが、2年後までもたくつことであれば、コンドリーザ・ライスでも勝
てない。

北朝鮮の核実験をめぐって世界を駈けめぐったライス国務長官を見なが
ら、ブッシュ政権はライス国務長官の露出度を高める戦略をとるとみた。
チェイニー米副大統領の発言は、その脈絡で読んだのだが、どうであろ
うか>。2006・10・29


この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。