2012年04月20日

◆「尖閣4月購入」など大風呂敷に過ぎない

杉浦 正章

 

長い間世俗の経験を積んで狡猾になることを「老獪」というが、この男の発言は常日頃から、トリッキーに満ち満ちている。まさに老獪が背広を着て歩いているようなものだと思った方がよい。


都知事・石原慎太郎の記者会見をつぶさに分析すれば、4月に尖閣諸島を買うというより、政府に国有化させるためにうった大芝居であることが分かる。民主党政権を揺さぶり、中国をけん制する。石原独特の“手口”である。
 

記者会見で石原は、はしなくも無知をさらけ出した。これだけの大きな買い物を議会に諮らなくて済むと思い込んでいたことが露呈したのだ。石原は、購入の時期については、現在地権者と国が結んでいる賃貸契約が切れた直後の来年4月とした。


ところが、記者から「議会に諮らなくていいのか」と聞かれ「これは専決事項だから知事の権限だ」と胸をはった。しかし「2万u以上、2億円以上の購入は議会に諮ることが義務づけられている」と突かれて「豊島園購入計画を議会に諮ったか」と職員に尋ね、職員が「議会にかけています」と答えた。これには意表を突かれたかのように沈黙して、石原は「合法的な手続きを踏んでいく」と答えざるを得なかった。
 

つまり、知事を13年間もやっていながら、議会との関係という基本中の基本の問題に考えが及んでいなかったことになる。これが意味するものは、尖閣諸島購入構想が石原の全くの独断で進められており、知事部局は関与していないことが判明する。関与していれば当然議会対策を練っているはずであり、石原の“真剣度”と“底意”が分かるのだ。


さすがにまずいと思ったのか石原は「東京が引いた引き金で国がもっと積極的に乗り出して、所有権を含めて万全の体制を敷くのなら、いつでも東京は下がります」と発言した。


要するに本音はここにあり、語るに落ちたのだ。思いつきで、購入問題を民主党政権への絶好の揺さぶり材料ととらえ、「石原新党」構想失速のばつの悪さをカバーして、あわよくば石原待望論台頭を夢見たのであろう。
 

「石原新党」構想で「国会の政治構造をシャッフルする必要がある」と散々あおっておきながら、失敗すると「新党のことは本当に迷惑だ」と他人事にする。石原程度の政治家に「綸言汗の如し」を求めるのは、魚屋で大根くれというようなものだが、発言は三文小説のように言葉遊びが先行して、自己都合の度が過ぎる。公人としての矜持がない。


だいたい民主党も自民党も議会で賛成するとは思えない。いくら都議会レベルでも半可通な議員ばかりが集まっているとは思えない。事の本質は、領土保全を国が行うか東京都が行うかの荒唐無稽な問題設定であることぐらいは、わきまえるだろう。従って「4月購入」の大風呂敷は、たとえ石原が本気になってもまず実現しない方向であろう。
 

一方、政府は首相・野田佳彦が国会で19日、「所有者と私どももコミュニケーションを取ってきた」と、国有化に向けて地権者と交渉を続けていることを初めて明らかにした。地権者は、弟によれば、「兄は年齢を考えると、この際公的所有に移した方がよいと思っている」ということのようだ。


国に売却する意志があるように見える。疝気筋に外交・安保の“急所”をろう断させてはなるまい。野田が「あらゆる検討をさせていただきたい」と言うのなら、国有化を真剣に考えるべきだろう。中国とは、今年が日中国交正常化から40周年の節目である。様々な行事も予定されている。平地に波乱を起こすような、石原の狙いには乗らず、時期を見て国有化を進めればよい。
 

それにつけても石原は、息子の自民党幹事長・石原伸晃の訪中が自分の尖閣購入発言のため中止になったことを父親としてどう思っているのだろうか。新党構想で息子を弁明に駆り立て、今度は重要なる政党の外交活動を妨害する。


不肖の息子という言葉があるが、不肖の父では息子もやりきれないだろう

<今朝のニュースより抜粋>   (政治評論家)
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