2012年06月08日

◆小沢さん「国民と民主主義」が泣いているぞ

杉浦 正章

 

確かに田中角栄が有罪判決を受けた後の、1983年12月の総選挙ほどすさまじい選挙は見たことがない。朝駆けすると田中角栄は「若い連中にはおれを批判してでも這い上がってこいと言っているんだ」と漏らしたものだ。新聞もこれを書いた。元代表・小沢一郎に言ったかどうかはしらないが、朝日によると小沢が7日若手議員との会合で、田中の言葉を引いて「俺をたたいて人気が出るなら存分にたたいていい」と述べたという。


小沢にも言っていたかも知れない。しかし本質も理解しないでうわべだけをまねることを猿真似という。いささか見当違いの発言ではないか。
 

あの時の田中には悲壮感があった。滅多に帰らない新潟3区にも度々足を運んだ。取材に行ったが、豪雪降りしきる山奥の集落で、リンゴ箱の上に立って田中は「みなさん、田中角栄がここまで来たと奥の部落の人に会ったら伝えてください」と訴えたものだ。同情票もあって田中は空前の22万票を取って当選したが、自民党は田中有罪判決がたたって、過半数割れとなった。首相・中曽根康弘は新自由クラブと統一会派を結成してしのいだ。
 

さて、小沢の場合はどうか。同じ1審判決でも無罪だ。田中の場合はロッキード事件がまさに争点だったが、今回総選挙が行われた場合は小沢判決が主要争点にはなり得ない。争点は紛れもなく消費増税の是非だ。消費税選挙で小沢批判をしてチルドレンが当選するか。そんなに甘いものでもあるまい。


世論調査では80%落選と出ている。日本の有権者はそれほど知的水準は低くない。「小沢グループに属しているのに小沢さんを批判して変な候補だ。節操がない」といわれるくらいがオチだ。小沢が田中を信奉するのは分かる。いったん近づいた政治家は敵も味方もものすごい吸引力で引け付けられる魔術が田中にはあった。しかし小沢の場合は請け売りが多すぎるのだ。
 


当時田中から受けた影響力が余りに大きいものであるから、何でも当てはめようとするのだが、政治状況にマッチせず、無理が生ずるのだ。発言はチルドレンから「地元に帰ると『小沢さんは何でも反対している』と非難される」と珍しく苦情が出たことに答えたもののようだ。


物語るのは「おれをたたけ」と言って、チルドレンを引きつけざるを得ないところまで小沢は追い詰められているのだ。心理状態が読み取れて面白い。
 


最近の小沢発言のキーワードは「国民が」と「民主主義」だ。やたらと「国民が許さない」と言う。7日も「ずっと以前から『このままの形では国民の大多数は絶対賛成しない。増税のみの押しつけは理解されないだろう』と言い続けてきたが、マスコミの調査でも、今、民主党政権が消費税だけを先行させようとしていることについては、NOの答えを出している」と発言した。


しかし同じ世論調査で国民の8割は小沢が自らの疑惑の説明責任を果たしていないと答えているのだ。それを棚上げにしてはいけない。小沢発言を支持する調査結果ではあり得ないのだ。国民にしてみれば増税は反対だが、マニフェストでだました小沢に言ってもらいたくないと思っているに違いない。


「国民が」発言は、小沢が政界で完全に孤立して、いずれは不可避と見られる解散・総選挙に向けて「消費税反対」しか訴ええるテーマがないことを物語るのだ。「国民」にすり寄るしか小沢グループの激減を食い止める手段はないと思っているに違いない。


しかし、チルドレンはそんな姑息(こそく)な手段では当選できまい。国民は民主党政権の“体たらく”全体に「ノー」を突きつけようとしているからだ。
 

「民主主義発言」は7日も出た。小沢は「『消費税を通すためには、国民と約束したことは全部放棄してでも、とにかく賛成してもらえれば、あとは全部どうでもいい』と言う人がいるやに聞いている。


これは政党政治、民主政治の破壊につながる言い方だ。それが実行されるとしたら、まさに民主主義を冒とくし、破壊する行動だ」と首相・野田佳彦を批判した。しかしこれこそは、そのまま小沢にお返しすべき発言だ。民主主義を冒涜しているのは小沢自身ではないのか。


少なくとも野田は昨年の代表選挙でただ1人消費税増税を掲げて当選している。民主主義的な党内手続きで首相になったのだ。その野田が消費増税にまい進しなかったら、まさに政党政治と民主政治の破壊につながるのではないか。昨年末に消費増税を決定した党内手続きにも瑕疵(かし)はない。


だいいち小沢の持論は著書でも書いているように、自分たちで選んだ首相は、「少なくとも任期中は協力するのが、民主主義のルールだ」ではなかったか。ご都合主義で民主主義を言ってもらいたくない。言われた民主主義が泣く。 


<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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