2012年06月12日

◆野田は“中央突破”で小沢を排除できる

杉浦 正章

 
消費税制局はいよいよ今週土壇場の攻防段階に突入する。与野党協議の流れは、重要ポイントの「社会保障制度改革国民会議」への棚上げで、曲折をたどりながら修正協議合意の流れだ。そうなれば民主・自民党首会談で“手打ち”となり得るが、首相・野田佳彦はお膝元の“造反”を抱える。幹事長・輿石東がせっせと“落とし穴”を掘っているのだ。

修正協議が合意に達しても、輿石は「持ち帰って党内協議」という高いハードルを設定して、最後の逆転を狙おうとしているのだ。野田はその場合、もう元代表・小沢一郎と決定的対決も辞さず、中央突破の腹を固めるしかない。


 「鼎(かなえ)の沸くが如し」とはまさにこのことを言う。協議ができる日数は実質5日となり、与野党協議が最高潮に達している。協議は最初から筆者が指摘している通り「国民会議」が焦点となり、民主党側はこれを受け入れる方針を固めた。


最大の障害である最低保障年金制度と後期高齢者医療制度撤廃問題は、この場に移して1年間かけて議論するという、事実上の棚上げだ。15日までの消費増税法案と関連法案の衆院採決で決着が付くかどうかだが、与野党協議が休日返上で続くのはその努力の現れであろう。


10日の協議では、民主党が「会議」方式を了承。しかし「最低・後期両制度」の根幹をなすマニフェスト政策の撤回を自民・公明両党が要求、民主党側は受け入れず、平行線となった。自民党は自ら主張する「会議」への棚上げの流れが出てきた以上、両制度撤回にこだわるのは論理矛盾である。法案が提出されてもいない問題で、これ以上求めるのは他党への内政干渉でもある。自民党は思い上がらない方がいい。いずれは軟化せざるを得まい。


 
順調にいけば18日に野田がG20でメキシコに行く前に自民党総裁・谷垣禎一との党首会談で“手打ち”となり得るが、またまた民主党内の問題が浮上してきた。G20などに行っていられなくなる可能性も出てきた。


元代表・小沢一郎の“代貸し”輿石がうごめいている。合意しても党に持ち帰って両院議員総会での協議が必要だというのだ。ここは政局の“急所”になり得る。なぜなら与野党協議で成案を得たものを党内論議でまたまたぶり返そうというのだ。輿石は一からやり直そうとしているのだ。


もしそうなって、問題がこじれれば、ことは確実に与野党激突につながる。自民党は、与野党協議合意を民主党がまたゼロからやり直そうとすれば、政権の当事者能力を問う動きに出ざるを得ないだろう。つまり、ぶちこわしとなれば内閣不信任案と問責決議の上程だ。内閣不信任案は否決できても、問責は可決される。そうなればすべてがご破算となり、野田は結局、総辞職か解散に追い込まれる。


 そこでどうするかだが、野田はまず輿石の暴走を食い止めなければならない。与野党合意は両院議員総会で“大衆討議”にかける必要など全くない。一方的「報告」で十分だ。なぜならもう党内の手続きは終了しているからだ。小沢がどう出るかだが、小沢陣営は粛々と関ヶ原の決戦に向けて兵力を集結し始めている。


小沢はもう消費増税反対の旗を降ろすまい。旗どころか消費税反対ののぼりが事務所に山積みされている。のぼりを立てて街頭で国民に直接訴えようとしている。ということはもう政策では聞く耳持たずで、ひとえに政局化を狙っていることになる。これが意味するところは、小沢は総選挙になっても消費税反対ののぼりを立てれば自らのグループの大敗を食い止められると踏んでいるのだ。

のぼりの意味するところは、大阪の役を招いた方広寺の鐘の「国家安康」の銘文よりも露骨だ。家康の家と康を分断したと看做され、大坂の役による豊臣家滅亡を招いたあの銘文だ。のぼりで反党行為は明々白々であり、野田は放置できないところまできている。


 したがって野田はもう小沢を説得しても無駄と悟るべきだ。そして最終的に覚悟を決めるべきときだ。澎湃(ほうはい)たる反対論を突破して原発再稼働に動いた野田である。意志の強さは証明された。自民党を含めた歴代首相でもまれに見る名裁断である。


これに消費増税への決断が加われば、戦後復興の吉田茂、日ソ交渉の鳩山一郎、日米安保改定の岸信介、沖縄返還の佐藤栄作、日中国交正常化の田中角栄らの名宰相に匹敵すると言っても過言ではない。消費税を逃げて郵政民営化などに走った小泉純一郎などは大きく凌駕する。

ここは「政治生命をかける」とした自らの言葉通りに、小沢を無視した中央突破に出るときだ。政局のすべては野田の意気込みにかかっている。中央突破すれば、自民党も野田を見る目が変わる。連立政権ならまさに“野田首班”になり得るところだ。解散が1番恐ろしいのは小沢とそのグループだ。尻は割れているのだ。


野田は消費増税を阻止されれば当然解散に踏み切るだろう。のぼりを立てても小沢グループは雲散霧消だ。解散権を握る限り、この勝負は野田の勝ちで小沢に勝ち目はない。陣頭指揮で白熱のやっちゃ場に臨むべきだ。

<今朝のニュース解説から抜粋> (政治評論家)

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