2012年06月18日

◆政局最終決戦に小沢は敗れる

杉浦 正章



イギリスでは競馬場のパドックで馬を見るとき、まず「全体を見て直感で感じ取れ」と言うが、下見では首相・野田佳彦が“大義”で輝き、元代表・小沢一郎が“邪気”にくすんでいる。次いで「現実の馬に惑わされず、縦に見よ」とも言う。馬の過去を見よというのだが、野田は政局初出場なのに対して、小沢は場数を踏んでいる。


しかし小沢には過去にあった“付き”がなく、野田には未来志向の“覇気”がある。消費税をめぐる政局勝負は18日、舞台をを3党協議から民主党内了承手続きに移して、土壇場の攻防に入る。勝ち方はいろいろあるが、直感では最終的には野田が勝って、小沢は負けるだろう。
 

聞くところによると民主党内の情勢は、消費増税法案反対を唱えていた反対派の若手が採決棄権へと落ちこぼれ始め、迷っていた中間派が賛成へと崩れ始めたという。先頭を切っていた元代表・小沢一郎は後ろを振り向くと兵力がまばらになっていることに気付くはずだ。


こうして小沢は攻めているようで逆に追い詰められているのだ。潮流は消費増税法案が3党合意という新たな力の構図で成立へと向かう。混迷しても会期内か場合によっては延長直後の衆院通過は確実視され、8月までの延長国会での参院審議を経て成立し、財政再建への悲願が端緒を開く。
 

確かに会期末まではぎりぎりの日程だ。野田が17日にメキシコのG20に出発、帰国は20日早朝となる。おそらく民・自・公党首会談が、20日にも開催されるだろうが、これは事実上の“手打ち”であろう。


自民党総裁・谷垣禎一は今国会解散の言質を取り付けたいだろうが、野田が踏み込むかは微妙だ。合意に達した背景には2月25日の野田と谷垣の極秘会談が大きく作用し続けている。3党協議緊迫の局面で、野田が輿石を飛び越して谷垣に電話で譲歩を要請できる基盤が極秘会談で出来上がっていたのだ。


依然信用出来ないのが獅子身中の虫である幹事長・輿石東だ。朝日新聞に、一部にある“輿石性善説”を吹き飛ばす情報が載っている。民主、自民両党の実務者が大筋合意した15日未明。民主党の担当者の一人が輿石東幹事長に電話で報告すると、輿石氏は「まとまると党内が困る」と口にしたという。


輿石は会談決裂で、狙っていた継続審議が可能となると踏んでいたにちがいない。それを野田の「輿石越え」の電話による谷垣説得で、小沢の先兵としての輿石は挫折したのだ。政治は性善説などと言えるほど甘くない。
 

問題は、野田不在の3日間が“大歩危(ぼけ)小歩危”なのだ。小沢・輿石ラインが何をしでかすか分からないからだ。しかし、両者共3党合意で出来上がった構図を壊すことは難しい。マニフェストの最低保障年金、後期高齢者医療制度撤廃の「棚上げ」は、ぐらついていた党内に少なからぬ沈静化効果をもたらしたからだ。


撤回ならば「なにお!」とこぶしを振り上げるところだが、「棚上げ」が“言い訳の逃げ場”となる。中間派もとうとうたる政治の潮流とこれをバックアップするマスコミの展開にエネルギーは弱まりつつある。
 

小沢・輿石ラインが、この場でできることは、党内の反対論をかき立てて、党内抗争に持ち込み、議論をにっちもさっちも行かなくして、採決をさせないようにすることだ。だが3党合意の構図はこれを許さないだろう。小沢が“ちゃぶ台返し”をすれば、自民・公明両党も民主党内事情で合意を覆されたのだから、内閣不信任案や首相問責決議案を上程せざるを得なくなる。


野田は、21日までの採決に政治生命をかけると言っているのだから、解散に打って出るしかなくなる。野党は解散歓迎だが、小沢は勢力消滅の危機に直面する。野田・谷垣・小沢の3角関係は「小沢切り」へと進まざるを得ない構図に変貌した。
 

かといって小沢が口を極めて反対してきた消費増税法案に賛成できるか。「我々自身の自殺行為で国民を冒涜する背信行為だ」とまで言い切っている小沢にとって後退はあり得ない。人物の大きさは月とスッポンで比較にならないが、事態は西郷隆盛の城山の討ち死にの図と似ている。


時代錯誤が根底にあり、時代に取り残された士族らの死に場所をつくったように、小沢はチルドレンの“死に場所”をつくってやる必要に迫られているのだ。小沢はここまで来たら、法案に賛成投票はできまい。棄権も日本中の嘲笑の的となる。反対投票しか道が残されていないように見える。


反対投票すればどうなるかだが、今度は野田が本当の「小沢切り」に出ざるを得まい。3党合意の実態は小沢の“窮鼠(きゅうそ)化”に他ならない。もともと水と油なのだから“分離”するしかない。
 

野田は何度も書くが、原発再稼働といい、消費増税法案実現への決断といい、政党政治の停滞の中に立つ、希望の灯となっている。この急流を乗り切れば、小選挙区制導入以来、混乱と停滞を重ねてきた政界にも光明が出てくる。


「決められない政治」から「決められる政治」への移行である。自民党内からははやくも、元官房長官・町村信孝のように「選挙が終わった後、大連立になるのか再編なのか、物事を決められる新しい政治のかたまり、力をつくらないといけない」と、総選挙後の大連立・政界再編に言及する向きも出てきている。


たしかに最重要政策課題での一致は、「国難回避」の原点では合意ができる前例を作ったことになる。まだ夢か幻の段階を出ないが「野田首班」での合意もあり得ないわけではない。


<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック