2006年11月08日

◆駝鳥になれということか

 
          渡部亮次郎

自民党の中川昭一政調会長が提起し麻生外相が「論議まで止めるのは言論封殺と言われる」と支持した核論議について、産経新聞に遅れること1日ながらも読売新聞が社説で「支持」した。当然である。朝日、毎日はいつ取り上げるのだろうか。

<北朝鮮の核実験に直面して、「核を持たずに北朝鮮に、どんな対抗措置が取れるのか」と問題提起するのは、責任ある政治の誠実な態度ではないか。

民主党はじめ野党は、核論議を厳しく批判し、外相罷免を求める声もある。だが、小渕政権下の1999年、西村真悟防衛政務次官が「核武装」発言で更迭された際、当時、民主党代表だった鳩山幹事長は、こう語っていた。

「核武装をしてもいいかどうか、と言った瞬間にクビを切られるとなると、国会の中で議論ができなくなる。議題に乗せることすらいけないという発想もいかがなものか」鳩山氏も、自らの発言を思い起こすべきではないか。>(8日付読売社説)

ワシントンからの報道によれば、米議会調査局は11月6日までに、北朝鮮の核実験に関する報告書をまとめ、(1)日本が保有するプルトニウムを使って核兵器を製造する事はすぐできる。(2)韓国や台湾は時間がかかる。(3)しかし日本国民の大多数が核兵器保有への抵抗感が強いため、日本が急激に核兵器開発に走ることはない。

結局「日本が、中国や韓国に北朝鮮問題で圧力をかけるため、核論議を意図的に行っている」との見方を伝えた。(8日付産経新聞)。要するに議論をしていることで一種の抑止力を十分に発揮していることが裏付けられた。

実際に日本にとって核を保有すると結論付けても、国際的規制を考慮すれば、核保有は実際にはまず、不可能だ。だからこそ議論して、中国、北朝鮮、韓国を抑止できるだけ抑止し、せめて非核3原則の修正ぐらいに着地、というのが現実的ではないか。

かつて外務省で大臣秘書官をしたとき、パリで開かれた国際原子力機関(IAEA)の会議に政府代表団の一員として出席したことがある。この組織に関する追加議定書なるものを、わが国は批准しているからだ。

従ってわが国は核拡散防止条約(NPT)の加盟国として、あらゆる原子力関連施設に関してIAEAの厳重な査察を受けている。原子力発電所などあらゆる原子力関連施設にはIAEAの監視カメラが設置され、査察官が定期的に出入りしている。

わが国は1956(昭和31年1月施行(鳩山内閣)の原子力基本法により原子力の研究、開発と利用は平和の目的に限るとし、核兵器の製造や保有を禁じた。また11年後の1967年2月には佐藤栄作総理が非核3原則を打ち出して歴代内閣がこれを踏襲。

衆院も1971(昭和46)年11月には非核3原則の遵守を求める決議を行っている。こうした時代には私も担当記者(NHK)だったのでよく、当時の気を記憶している。沖縄の核抜き本土並み返還という佐藤総理の悲願達成の担保としてのものだった。これが佐藤氏のノーベル平和賞受賞に繋がる。

さて我々は平成17年末現在で原子力発電用としてプルトニウムを国内に5・9トン、英仏の再処理施設に37・9トン計43・8トンを保有している。これらは8キロで原子爆弾1個が作れるのだから驚く勿れ740発を作れるはずだ。

しかしIAEAの監視下とあって「能力はあれど製造研究も不可能」と言うのが実態だ。仮に製造に踏み切るとなればNPT(核拡散防止条約)を脱退してからでなくてはならず、北朝鮮と同じ国際環境におかれることになる。耐える胆力を日本人は有していまい。

更に、当然のことながらNPTを脱退すれば、日米原子力協定に従って日本の核燃料サイクルは停止させられる。原子力発電が停止する。また現実に核兵器を自前で保有し管理するための面積と資金、要因を考えれば、今の日本では核兵器の保有は殆ど不可能である。

これについて畏友の元外交官岡本行夫氏は11月8日、産経新聞におこなった寄稿の中で「冷厳な国際環境の中で行う核兵器導入議論は通常の独立国なら至極当然。それすら行ってはならないというのは、砂に頭を突っ込み周囲を見ない駝鳥になれというに等しい」と嗤っている。

「あれも言うな、これも言うな。発言を控えるだけで日本の安全が保障されるのであれば、こんなラクな事はない。必要な議論なら一時的な対内・対外摩擦があっても、封印せずに尽くすことが、次の世代に対する我々の責務だろう」と。

議論の結果、現状のままと言うことになったとしても、中国、北朝鮮、韓国への気遣いや、国会運営の都合だけでいま、議論は封印すべきでは断じてない。2006.11.08

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