2006年11月16日

◆県知事の辞職マップ


渡部亮次郎

<「命懸けて県政執行」/佐藤雄平知事が初登庁

前知事の辞任に伴う福島知事選で初当選した佐藤雄平知事は15日、初登庁し、一連の談合事件で混乱した県政の立て直しと信頼回復に向けスタートを切った。

(渡部註:佐藤新知事は会津訛の黄門様・渡部恒三代議士の甥。長く恒三氏の秘書をしてから参院議員を経て今回知事に当選した)。

佐藤知事は午前10時に公用車で県庁に到着。・・・女性職員から花束を受けると満面の笑みを浮かべた。

知事室に入り、いすに座った佐藤知事は「知事の責任の重みをあらためて感じる。命を懸けて県政に当たっていかなければならない」とコメントした。

引き続き行った初訓示では、参事以上の幹部職員に「(一連の談合事件で)厳しい状況は続くが、1日も早く明るくさわやかな県政を確立したい」と決意を述べた。>(福島民報 16日)

「命がけで県政を推進」とは威勢がいい。結構だ。しかし、1回に何千万とか何億とか噂される4年後の選挙資金はどうやって集めるのか。資金パーティーを開いても田舎ではさっぱり集まらない。現実は命を賭けても集まらないものは集まらないのだ。

まさか知事の報酬を貯めて選挙資金にするといっても限度がある。先代の佐藤知事だって好きで談合をやらせていたわけじゃない。あれをやる以外に資金確保の方法がみつからなかっただけだ。だから「よみうり寸評」(16日夕刊)はこうだ。

〈県知事の辞職マップが出る予感〉――時事川柳はとうにこう皮肉っていた。福島に続いて和歌山でも県知事が辞職表明から逮捕という事態になった

◆どちらも県政トップが官製談合にかかわり背景に選挙があった。談合の摘発は果てしなく続く感がある。自治体と建設業者の癒着構造は根が深い

◆冒頭の川柳は〈自治体の談合マップが出る予感〉としてもいい。福島、和歌山両県の不祥事は「よその県の話」ですませる事ではないのではないか。自らの県や市に談合の事実や体質がないか厳重に点検の必要がありそうだ

◆和歌山県では出納長がすでに逮捕されていた。知事は辞職表明後、公舎に引きこもり状態だった。これで県政三役の二人が不在。全くさまにならない

◆福島も和歌山も初当選はクリーンが売り物だった。二人とも地方分権を主張する改革派の旗手といわれた。が、結果は地方分権を妨げるようなもの。権力が堕落するのに時間はいらないことも思わせる

◆和歌山県知事公舎の捜索で出たいくつもの高級腕時計……。身ぎれいでないしるしにも見える。>(2006年11月16日13時55分読売新聞)

衆院選挙が小選挙区に細分化されて以来、選挙区での同党候補同士の監視体制が消滅した。第一、知事に対する圧力も何分の一に弱ってしまった。いうなれば国会の先生は知事にとっては怖いものではなくなってしまった。

そこでゼネコン(General Construction 総合・大手土木建設会社)も地元の中小業者も国会議員を越えて知事と直接取引をして公共工事の談合を仕組むようになったのである。これはまさに小選挙区論者たちの思惑の至らぬ点だった。

しかし、知事の方も彼らからカネを直に受領するのは逮捕の危険に繋がるから「代役」を立てることになる。福島では知事の実弟、和歌山では出納長らが役を担った。

要するに知事をめぐる事件は次期選挙の選挙資金確保のための、いわば知事の「必要悪」みたいなもので、構造的な事件とみるべきなのだ。だから県知事の辞職マップ(分布図)が出る予感という川柳が出て、事件を有権者の方が予測しているのだ。もう出てきた。

<宮崎知事側、指南役に5千万円 談合容疑で関係先捜索

宮崎県の安藤忠恕(ただひろ)知事(65)側が03年7月の知事選直後の9月、知事自身が「政治の指南役」と呼ぶ元国会議員秘書(68)に対し、現金5000万円を渡していたことが分かった。

元秘書は「受け取れない」と知事本人に返却。知事は約2カ月間、公舎に現金を保管した後、後援会に預けたという。宮崎地検と同県警は、原資と授受の趣旨に重大な関心を示しており、全容解明を目指すとともに、授受に関与した関係者らが絡む県発注工事についても捜査を進める方針で、16日、関係先の強制捜査に着手した。 (以下省略可)

宮崎県警捜査員らは同日午前、県発注工事で談合があった疑いが強まったとして競売入札妨害容疑で、知事と関係が深い東京都江東区のヤマト設計本社や同県新富町の同社宮崎支店、宮崎市の社団法人宮崎県測量設計業協会などに家宅捜索に入った。ヤマト設計は橋梁(きょうりょう)やコンクリート工事が専門の設計会社で、社長(56)ら関係者数人への任意聴取もしている模様だ。

関係者によると、社長は元秘書とも懇意で、5000万円問題では、知事らとともに関与し、現金を元秘書に手渡す役回りをしたとされる。

関係者の話を総合すると、安藤知事が03年7月の知事選で初当選した後の9月、知事の後援会側から知事が「政治の指南役」と呼ぶ元秘書に現金5000万円が届けられた。元秘書は選挙直後に後援会の事務所に短期間出入りし、事務局長を名乗ることもあった。

安藤知事はこの現金の授受が発覚した今年9月、「後援会長が個人的に銀行から借りて渡した」などと釈明。しかし、知事によると、その後、元秘書は「受け取れない」として知事に500万円を返却。

知事は2カ月も知事公舎に現金を保管した後、後援会に預けたという。5000万円の趣旨については「コンサルタント料」などとしている。

当初、知事はこの現金の授受について、後援会の政治資金収支報告書への記載の必要はないと強弁していたが、その後、収支報告書への記載漏れを認め、03年分の収支報告書の収入欄に「5000万円」を後援会長からの借入金として計上。支出欄に5000万円と利息を後援会長に支払った旨を記載し、訂正した。

知事は元秘書との関係について「政治に詳しい方。後援会組織の作り方を指導してもらったり、支持者の広げ方、演説の指導を受けたりした」としている。

また、5000万円の趣旨については「(元秘書の)後援会事務所入りには猛反発があった。正式決定がないまま、事務局長の名刺を勝手に持ち回り、困っていた。後援会に『こちらで処理する』と言われ、その後、『無事に処理が済んだ』と報告を受けた」とも述べ、「手切れ金」だったことを暗に認めている。

しかし、安藤知事は一連の経緯について記者会見などで「後ろめたいことはしていない。私が責任を問われない自信はある」と言っている。 (Asahi Com 2006年11月16日15時19分)
2006.11.16
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