2006年11月23日
◆ 巴里だより
昔ばなしと「ギュー、チュッ」
岩本宏紀(在仏)
昔ばなしの絵本
男一人女一人で登場人物すべてを演じるテレビ番組「まんが日本昔ばなし」は
今でも続いているだろうか? のほほんとした絵は大人が見てもほのぼのする、
いいアニメだった。子どもがまだ小さい頃、我が家には寝る前に昔ばなしの絵本を読んでやる習慣があった。主に母親だったが、ときどきぼくも読んだ。そのとき
「まんが日本昔ばなし」がいい手本になった。
受けがよかったのは「だんご」という物語。
おじいさんが友達の家でたいそう旨いものをごちそうになった。是非とも同じものをおばあさんに作ってもらおうと思い、名前を尋ねた。それが「だんご」である。忘れてはいけないと、「だんご、だんご」とつぶやきながら歩いていたが、道の真ん中に水溜り。「どっこいしょ。」と飛び越えた。
それ以後ずっと「どっこいしょ、どっこいしょ」になってしまう。
家に着くやいなやおばあさんに
「どっこいしょを作っておくれ。」と言うと、
「何をばかなことを言っているんだい。」とおばあさんは相手にしない。
頭に来たおじいさんはけんかを売る。両者譲らず激しい取っ組み合いなり、
ふと見るとおばあさんのおでこに、だんごのような瘤が出来ている。おじいさんは
「どっこいしょが出来た。」と喜ぶ。
おばあさんはその時、「どっこいしょ」が「だんご」のことだとわかる。
「それならお安いご用。」と言って台所に消え、しばらくすると山盛りのだんごを持って現れ、二人は旨い、旨いと言いながら仲良くそれを食べる。めでたし、めでたし。こんな筋書きだった。
ぼくにはどうということのない話だったが、子どもたちによくせがまれた。
知っているひとを主人公に
しかし毎回同じ人物、同じストーリーでは読むほうが飽きてくる。不真面目なぼくは、そのうちに絵本を見せずに、自分で少しずつ内容を変えるようになった。まずは登場人物を変えた。
「昔々あるところに、へいじろうじいさんとやえばあさんが住んでおりました。」
娘たちの本当の曽祖父、曾祖母が登場するので、「えー! それでそれで。」と反応は上々。就寝前なのにふたりの目はぱっちり冴えてくる。名前はぼくの気分次第でどんどん変わる。あるときは彼女たちの祖父、祖母、あるときは近所のご夫婦と何でもありだ。
けんかの場面はプロレスの技や、なんとかライダーのなになにキックを登場させて、臨場感のある展開を心掛けた。おばあさんの一撃でおじいさんがダウンすると、二人は拍手をして喜んだ。
「ギュー、チュッ」でおやすみ
寝かせつけるのが目的なのに興奮されては困るのだが、この後には「ギュー、チュッ」が待っているから大丈夫だ。 「めでたし、めでたし。」の声を合図に妻が子供部屋にやって来て、ベッドに入っている娘たちを順番にギューと抱きしめた後、「それではおやすみ。」
と言って頬にチュっとキスするのだ。これで安心し、じいさん、ばあさんの取っ組み合いの興奮もおさまるらしい。 灯りを消してドアを閉めれば、あとは静かな子ども部屋になる。
ぼくもせがまれてときどきやっていた。ちょっと照れくさかったが、今思えばとてもいい習慣だ。生まれ変わってまた父親になれたら、毎晩でも「ギュー、チュ」をしたいと思う。
2006年11月19日
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