2012年07月19日

◆鳩山の対抗馬擁立では勝負になるまい

杉浦 正章

 
小さなカマキリが前足を振り上げて大きな車に立ち向かうことを「蟷螂(とうろう)の斧」という。「荘子」にあるが、もはや元首相・鳩山由紀夫がそう見える。


18日も首相・野田佳彦に対抗して9月の代表選への候補擁立に言及したかと思うと、離党カードを振りかざす。離党と対抗馬擁立は180度相矛盾していることなのに、堂々とルーピーは公言する。しかし離党カードは、川柳で言えば<えっまだ居たのと驚かれ>というくらいで、ブラフにはならない。対抗馬も消費増税法案反対派にはろくな候補がいなくて勝負にならない。
 

要するに鳩山は民主党に対するオーナー意識が強すぎるのだ。18日もネット番組で「私がたった一人で動き始め、民主党を作った。私がいなければ民主党はなかった。今の変節した民主党にも愛情はある。原点を取り戻すことが可能かどうか追求したい」と強調したという。本人は金も出したし、汗もかいた。この党をにっくき野田ごときにろう断されてなるものかという怨念に凝り固まっているのだ。


ひとたび作った政党が、本人の能力に起因して、ダメージを受け続けていることなどはとんと忘れている。普天間問題で「最低でも県外」発言に象徴される支離滅裂さが、内閣退陣の直接原因になったことも忘却の彼方だ。退陣が実現しなかったら作った民主党がつぶれていたかもしれないのだ。


自らが消費増税法案をめぐる戦いに完敗したことも、全く理解出来ていない。だから代表選を「民主党が政権交代の原点を取り戻すラストチャンスだ」と位置づけ、「次の代表選挙でどういう人材を擁立すれば、民主党の原点をもう一度取り戻すことができるのか試していきたい」と対抗馬擁立を宣言したのだ。


しかし代表選の候補になり得る人材は、副総理・岡田克也も政調会長・前原誠司も政調会長代行・仙谷由人も消費増税法案賛成派だ。反対派の山田正彦や川内博史では、とても戦えない。ジョークにもならない。先が読めないからこそ反対派であることが分かっていない。
 

それでは、離党カードの方はどうか。鳩山は「外で、野党的な立場から政権に対して正しい方向を求めていくのか、その辺の決断をしなければならない時が来る」と述べているが、本当にそのカードが切れるのか。鳩山が1人で離党しても様にならない。問題は何人付いて行くかにある。


民主党は相次ぐ離党騒ぎで、衆院で単独過半数割れまで11議席、参院では第1会派転落まで3議席に迫った。参院の方はもともとねじれているから大したインパクトはないが、衆院で過半数割れとなれば内閣不信任案が可決され得る。確かに代表選挙で首相を交代させるより、不信任案可決で追い込んだ方が一見インパクトが強いように見える。


しかしこれも淺知恵だ。可決されれば野田は解散を選ぶ。総選挙では、鳩山は間違いなく除名処分となって落選しかねない。鳩山への同調者も、盟友小沢一郎の新党も壊滅する流れだ。不信任案可決はまさに両刃の剣で自分に災いが降りかかることになるのだ。それを承知で、鳩山に付いて離党する衆院議員が何人いるかだ。
 

これは野田の懐柔策にかかっていることでもある。野田は金科玉条の3党合意を破壊しかねない“きわどい”発言で懐柔し始めている。18日も国会で3党合意の修正について「参院での議論の中で新たな観点が見つかったり、より改善されるなら、そういう議論があってしかるべきだ。予断を持っているわけではない」と述べ、参院での再修正に含みを持たせたのだ。


しかし本心では野党の反発が不可避の本格的な修正などできるとは思っていまい。苦し紛れの離党食い止め発言だ。


一方、参院では幹事長・一川保夫が同日夜、不満分子十数人を集め、懐柔工作に乗り出した。とりあえずは離党を避けることで一致したようである。野田にしてみれば鳩山などは出て行ってもらって結構くらいにしか思っていまい。


しかし同調者を増やしたくないのだ。対抗馬擁立にせよ離党にせよ、1人の当事者能力に欠けた政治家の言動をマスコミがもてはやしすぎるところにも問題はある。無視すればいいのだが、センセーショナリズムがそれを許さない。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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