10月最後の日曜日、夏時間が終わり、冬時間が始まる。午前3時に時計の針を一時間遅らせ、午前2時に合わせるのだ。11月に入ると日の出は8時、日の入りは5時。10時頃まで明るかった夏の夕方が嘘のように、会社を出るときには街はすっかり暗くなっている。
夜のとばりが下りると、巴里のあちこちが昼間とはまったく違う顔を現す。
これまでベージュの石造りに溶け込んでいた彫刻や、くすんだ色の建造物が
ライトアップされて闇のなかに浮き上がり、その存在感を誇らしげに示すのだ。
オレンジの光で壁のレリーフが浮き上がるルーブル美術館、蒼白い光で清潔さを
感じさせる市庁舎の壁面の細かい彫刻。マリー・アントワネットが幽閉されていた建物、コンシエルジュリの照明はいつも押さえ気味で、暗い過去を想起させる。
アンバリッドの金色のドーム(円蓋)は太陽の下とは異なった味わいを見せる。凱旋門はオレンジ色に、デファンスの新凱旋門は一層白くなり、両者の対比が際立つ。
昼間は錆びたようなこげ茶色というか、ココアの粉末のような色のエッフェル塔は、外だけでなく塔の内側からもオレンジの光を当てられ、空洞の建造物であることを主張する。そして一時間ごとにめまいがするほど強烈なハロゲンランプのような光を、塔全体で点滅させる。
これが始まった2000年の元旦から、この照明をどう表現すべきか考えているのだが、いまだに「ビカビカ」という言葉しか思い浮かばない。
毎年寒くなってくるとぼくは三脚とカメラをもって巴里の夜を徘徊する。気に入ったライトアップを写真に撮ってそれをクリスマスカードにするためだ。生まれて初めて全力疾走する馬を見て感激した今年は、グラン・パレの屋根にある馬の彫刻を狙っている。
2006・11・23
添付画像:夜のエッフェル塔では、このアングルが一番好きだ。
Bir-Hakeim(ビル・ハッケン)橋の中ほどにある馬の彫刻のうしろから「ビカビカ」のエッフェル塔を望む。カメラはNikomat。