2012年08月02日

◆消費税成立前の不信任案が政局直撃可能性

杉浦 正章

 

衆院議員たった5人のミニ政党ながら、時には政局直撃の“妙手”を考えることがあるものだ。みんなの党が打ち出した参院での消費増税法案採決「前」の内閣不信任案上程が不気味だ。


51人集まって上程出来れば自民党の「採決後不信任案上程」の解散戦略を根底から覆すおそれがある。採決前ならおそらくみんなの党の思惑とは逆に不信任案否決、消費増税法案成立の流れとなり、今国会での解散はなくなる可能性があるからだ。同党代表・渡辺喜美は利口なようで“とろい”戦術を編み出したことになるが、みんなの“暴発”が、政局方程式を変える可能性も否定出来ない。
 

これまでは内閣不信任案問題は自民・公明両党の専売特許のように展開してきた。ミニ政党では人数が集まらないからだ。だから自公は参院で3党合意に基づき消費増税法案を成立させた上で不信任案を上程、民主党のさらなる造反をさそって可決し、野田を解散に追い込む戦略を立てていた。


ところが、渡辺が31日この戦略に横やりを入れた。渡辺は「消費税率引き上げ法案が参議院で採決される前に、内閣不信任決議案を衆議院に提出すべきだ。みんなの党だけでは、内閣不信任決議案を提出できる議員数を持ち合わせていないので、自民党や公明党以外の野党にも連携を働きかけていきたい」と不信任案の提出に必要な51人の議員を確保するため、自公以外の野党に協力を呼びかけていく考えを表明したのだ。


直ちに同党は、国民の生活が第一、共産党、新党きづな、社民党、みんなの党、新党大地・真民主と国会対策委員会長会談を開いて協力を要請した。
 

これに呼応するかのように社民党党首・福島瑞穂が「消費税率引き上げ法案が成立する前に、国民に信を問う可能性をとことん追求すべきだ」と同調した。焦点は衆院37人の生活が9人のきづなとともに乗るかどうかだが、代表・小沢一郎は1日の記者会見で党の基本政策を発表、この中の柱に「消費税阻止」をうたったのだ。「阻止」となれば採決前の不信任案上程につながり得る姿勢であろう。


しかし早期解散は生活の“早期消滅”につながる側面があり、微妙でもある。もっとも可決されないのなら“揺さぶり”効果はあり、参加する意義はないわけではない。では51人が集まった場合にどうなるかだが、当然上程の運びとなる。そうなれば最短で10日の採決前には国会の動きはすべて止まることになる。不信任案は慣例であらゆる議案に優先して採決されるからだ。
 

そこで自公は直ちに賛否の対応を迫られることになる。公明党は代表・山口那津男が31日の記者会見で、参院採決前の不信任提出に関連して、「基本的に同調しない」と発言している。自民党にも政局絡みで採決前提出論があることに対して、政策優先の姿勢を維持している。


したがって民主党250人プラス公明党21人で、民主党に落ちこぼれや欠席者が出ても241人の過半数は維持できる可能性が高い。否決されてしまえば一事不再議の慣例により、通常国会での不信任案上程はなくなり、野党は首相・野田佳彦を解散に追い込む手段がなくなる。
 

こうして、窮地に陥るのは野田ではなくて自民党総裁・谷垣禎一の方となりそうなのだ。消費増税法案を成立させてから解散の戦略が崩れる恐れが出てきたのだ。折から自民党は小泉進一郎ら若手11人が1日緊急声明を発表し「与党が採決を遅らせ、野党が採決を促す異常事態は、合意の破たんだ」として3党合意破棄を谷垣に申し入れた。


野田に法案成立だけ先食いされる可能性を見越しての対応だ。谷垣は「重く受け止める」と答えているが、3党合意破棄は自らの消費増税に対する政治信条の破棄につながることであり、まさにこちらを立てればあちらが立たずの板挟みに追い込まれる。「政局」か「政策」かの選択を迫られるのだ。
 

選択肢が「前の不信任案」か「後の不信任案」かで天と地の違いが生ずるのである。公明が否決に動いた場合には谷垣も否決へと動かざるを得ないのが流れのように見えるが、その場合、党の対応が割れる恐れもある。また今国会での解散に追い込む手段を喪失することになる。首相問責決議を参院に提出しても法的拘束力がない。とことん追い込まないままでは、野田は秋の臨時国会での「話し合い解散」にも応じないだろう。


こうして谷垣は残る国会を窮地を脱した野田の再選への流れをうらやましげに見守るしかなくなる。もちろん、手をこまねいた罰で自らの再選が危うくなるのは間違いない。渡辺の打った手はこれほどのインパクトを内包しているのだ。本人の意図と違って例え不信任案が可決されなくてもだ。


<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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