2006年12月14日

◆最も衰退するのは秋田

渡部亮次郎

私も執筆陣に加わっている会員制月刊誌『カレント』2006年10月号に出
た「成長する都市・衰退する都市」と言う巻頭論文の一節である。

筆者は経済学と工学と2つの博士号を持つ佐貫利雄さん。面識は有しない
が、うすうす感じていたことをずばり指摘した。最も衰退すると言われ
た秋田県はわが生まれ育ったところである。

佐貫さんはこれを最近の国勢調査から、少子高齢化現象を分析したもの
で、現存する2217市町村のうち成長都市(人口が増えた市町村)は611都市
27・6%に過ぎず、残り1606都市は衰退市町村だと言う。72・4%に上る。

地域別に見ると衰退市町村比率が高い順で東北89・3%、北海道88・4%、
四国85・1%、と9割近い市町村が人口減により衰退している。

さらに県別に衰退都市比率が高い5つの県に焦点を当てると第1位が秋田
県で96・5%だ。以下青森県95・8%、新潟県93・0%、高知県91・2%、福
島県 90・2%となっている。積雪寒冷地に集中している。同じ東北でも岩
手、山形、宮城がワースト5に入っていない。

ついでに羨ましい成長市町村比率の高い地域は東京だろうと思ったら違
う。第1位は名古屋を中心とした中京都市圏で、トヨタ・グループに支え
られているのだそうだ。

東京都市圏は政治、経済、情報など中枢管理機能が桁違いに集中してい
るとは言いながら第2位である。

当然のことながら大阪を中心とする京阪神都市圏は地盤沈下が顕著だと
佐貫博士は口を濁している。


さらに人口10万人以上の都市を詳しく見ると253都市のうち94都市が衰退
しており、やっぱり東北、近畿、中国、四国、九州で目立つと言う。

「このような都市衰退現象は有史以来初めてだ。当(まさ)に人口減少
社会への移行が都市の盛衰に投影いる」と佐貫博士は分析している。

当然ながら成長都市の多い地域では凶悪犯罪比率が高いが愛知県だけが
例外で、多分働く場が多いからだろうとのこと。実にトヨタ様々なので
ある。

一方、衰退市町村比率の高いところでは自殺率が高く、その代表格が秋
田県。踏んだり蹴ったりで人口10万人あたり38・5人だという。

自分の身をおいて考えると、雪が厭で秋田を飛び出したが、それは他人
も同じなわけだ。そこで若者に出て行かれた老人は更に寂しくなって首
を吊るのかもしれない。寒くて寂しくなれば病気にもなるだろうし、そ
れを苦にしての自殺もあるだろう。

ここまで書いてきて『文藝春秋』ノ2007年新年特別号で藤原正彦氏(数学
者。御茶の水女子大学教授)の「国家の堕落」を読んで愕然とした。

<全国47都道府県のうち、平均貯蓄の最も低い10県、人口当たり最も自
殺の多い10県、大学入試センター試験の平均点の最も低い10県がほぼ同
じメンバーで占められている>と言うのである。何を言う元気も無くな
る。

積雪寒冷地が衰退地域だから、これを止めるには雪を止めるしかないが、
そんなことできるわけもない。

田中角栄氏をはじめ積雪寒冷地出身の政治家や財界人は雪を避けられな
いなら、我々を苦しめる雪の溶けた水の発電で潤っている都会から国家
予算を分捕って住民の生活環境を良くしようとした。その集大成が日本
列島改造論だった。

つまり地域の盛衰問題は経済の論理では解決不能であり、政治的な解決
策だけが有効である。そこには1票の格差問題と密接に絡んだ一見、不
合理な解決策しかない。田中、竹下両首相が試みた積雪寒冷地帯への国
家予算の傾斜配分である。2006・12・13



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