2012年10月15日

◆輿石軟化でジワリ解散への流れ

杉浦正章

 

政局を読むには針の落ちる音が聞こえるくらいに「心耳」を研ぎ澄まさなければならない。心耳を澄ませる訓練をすれば針の落ちる音がやがて五寸釘を落とす音くらいに聞こえるようになる。その五寸針が何本も落ちだした。だんだん頻繁になっている。


首相・野田佳彦側近が選挙事務所を開設した。野田がマニフェスト作成を指示した。側近らが野田はうそをつかないと言いだした。そして極めつきが14日の幹事長・輿石東の大転換だ。急に柔軟姿勢に転じたのだ。これらの動きを見て何かあると感じないようでは感性に欠ける。
 

面白いのは経済産業副大臣・近藤洋介が13日、地元の山形県米沢市に選挙事務所を開いたという報道だ。「首相からは『(解散時期は)嫁さんにも言わない』と言われたが、投票日は早くて12月9日だろうと思い、2カ月前に(事務所を)開くことにした」と述べたという。近藤は野田の側近中の側近であり、普段なら野田は何でも相談する。


しかし野田が「嫁さんにも言わない」と述べたのは、近藤が事務所を開設した方がいいかどうかを聞いた証拠だ。その結果側近だから言葉の端でピーンと来るものがあったに違いない。一般論として野田が、「準備は常に怠るな」と言えば、声の抑揚だけで分かる。ましてや近藤はかつて敏腕記者だった。
 

野田は10日午前、民主党の幹事長代行・安住淳や政調会長・細野豪志を官邸に呼び、次期衆院選のマニフェストについて「できる限り国民の声を聴いてまとめてほしい」と作成を指示した。何も解散しないのなら今この時点で指示する必要はない。これを受けたように安住は13日「野田佳彦首相は誠実な人柄。約束は守る」と述べた。「近いうち解散」の約束は守るというのだ。これに先立ち国家戦略相・前原誠司も6日「首相は約束をたがえる人ではない。言ったことは守る人だ」と発言している。


こう見てくると野田に近いほど「解散近かし」と見ていることが分かる。遠くなるほど疑心暗鬼を生じさせているのだ。自民党幹事長・石破茂に到ってはまさに“暗鬼”が背広を着たような顔で毎日「解散」と唱えている。「赤字国債を通した途端に約束を忘れる」と“疑心”を述べるが、いくら野田でもそれはできまい。
 

こうした中で、口を開けば「衆参同日選挙」論を唱え、臨時国会早期開会にブレーキをかけ続けてきた輿石がNHK討論番組で大転換したのだ。持論のダブル選挙について聞かれると「勉強会で話題になったから、『参院は6年、衆院は4年の任期がある。任期を全うするのが本来の姿』と言っただけ」と、一般論に転じたのだ。


加えて固執してきた「0増5減」の定数是正と比例定数40削減、連用制一部導入の同時決着についても「各党が『定数削減は先送りしよう』ということであれば、そこは考慮する余地はある」と転換した。定数是正の先行で決着を図ろうとする姿勢に転じた。臨時国会についても「『民主党が衆議院の解散をおそれて、先送りしようとしているのではないか』と言われるが、できれば、今月からでもいいのではないか」と月内開催を認める妥協に出たのだ。


重要ポイントは「近いうち解散」の約束が、谷垣が辞めた後も継続されるかどうかについて「民主党代表野田首相との約束であり、谷垣さんも自民党の代表。その立場であるからつながっていると見るのが普通だ」と現在も有効であることを確認した点だ。
 

これではまるでジギルからハイドへの変貌だ。まさかジギルのように薬を飲んだわけでもあるまいが、なぜだろうか。筆者は野田の意向が強く作用しているに違いないと思う。この時点でのNHKでの発言ともなれば“公約”と同じ事になる。事前に首相に断りもなく政局の重要事項について発言できるわけがない。


首相日程を見れば発言前日の13日には約35分間会談している。ここで臨時国会月内招集、党首会談の早期実施、定数是正の先行実施の大筋を確認したのであろう。野田に近い議員ほど野田がうそをつかず、柔軟姿勢であることが分かっており、ようやくこれが輿石にまで“波及”してきたのだ。
 

野田が腹をくくったかどうかは別として、ボディーランゲージでは、野田は赤字国債と定数是正と引き替えに「“近いうち”の約束を守る」方向に傾いた事がうかがえる。しかし輿石は小沢との関係についてのみ自分の意見を述べている。「小沢さんとは消費税では一致出来なかったが、その他の面では同志であった。再協力を求める道もある」とも述べている。


筆者が先に報じたように小沢と組めば野田「信任」決議可決や、不振任案の否決など解散阻止の手段はいくらでもある。百鬼夜行はこれからが正念場だ。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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