2012年10月24日

◆自民党は審議拒否戦術を転換か

杉浦 正章


自民党執行部が早くも解散戦略の修正を迫られている。発足早々から審議拒否の強硬路線で突っぱねてみたが、野田の解散先送りの壁にあい、振り上げた拳を降ろさざるを得なくなったのだ。かねてから筆者が指摘してきたように審議拒否では事態打開は出来る見通しが立つわけがないのだ。


折から法相・田中慶秋の“仮病辞任”など首相・野田佳彦の責任を追及する材料は山ほどある。ここはごね得を狙っても始まらない。さっさと方針転換して審議に応じたうえで早期解散に追い込むべきだ。
 

それにつけても野田政権というのはここに来て本当に悪くなってきた。潔くない。解散に加えて田中辞任にまでうそをつき始めたのだ。野田がまず23日辞任の理由について「引き続き加療が必要なためだ。非常に残念なことだ」とすべてを病気のせいにした。官房長官・藤村修に到っては「首相の任命責任にはつながらない。体調不良で辞めることは、いかんともしがたい」と見え透いた逃げの手を打った。田中は決算委員会などに呼ばれても憲法違反の欠席を繰り返したが、なんと欠席をそそのかしたのは民主党執行部であったのだ。


おまけに入院を勧めたのも執行部だ。組織ぐるみのカバーアップをしておいて、逃げられないとみるや病気のせいにする。まさに見下げ果てた政権だ。24日付読売の編集手帳が野田について「就任した頃の純朴で誠実な印象はメッキが剥げた」と看破しているとおりだ。たしかに最近の野田は「どずるい」本性丸出しだ。
 

昔首相・橋下龍太郎は、ロッキード灰色高官の佐藤孝行を総務庁長官に任命して12日間で更迭せざるを得なくなったとき「自らの不明を恥じる」と述べたものだ。これが首相たる者の対応だ。「任命責任は認めるが職務にまい進する」では全く責任を認めたことにならない。


大阪の疝気筋・橋下徹が「人事の失敗は組織ではあり得る」と、相変わらずとんちんかんにも擁護に回ったが、弁護士のくせに「確信犯」を知らないのか。確信犯の用語は思想犯・政治犯・国事犯などに見られる道徳的・宗教的または政治的確信に基づいて行われる犯罪と、知りながらあえて行う悪い行為に分けられるが、野田の対応ぶりは明らかに後者だ。
 

法相辞任一つ取っても首相の任命責任追及の材料には事欠かない。ましてや首相の「近いうち解散のうそ」に始まって、復興予算の流用など追求すべき材料は山積している。宝の山を前にして審議拒否などしても国民の求める政権の欠陥解明義務は果たせない。


そもそも自民党は新執行部が出来たときの勢いもあってか、最初から審議拒否を打ち出している。幹事長・石破茂は5日、都内で記者団に「嘘をつく政府・与党を相手に国会審議に応じることにはならない」と審議拒否を明言している。


それが党首会談で解散問題が行き詰まり、野党間も共産、社民両党や日本維新の会が審議に応じる構えで、足並みが乱れる事態となった。おりから赤字国債発行法案が成立しなければ、11月末で国家財政は底を突く。民主党は自民党に責任を転嫁しようとしている。
 

このため執行部の方針もぐらつき始めた。自民党総裁・安倍晋三は22日、臨時国会について「審議拒否をするとか、私は一言も言っていない」と軌道を修正。石破も「審議拒否すると決めているわけでもなく、発言もしていない」とこれまた臆面もなくうそをついた。どうも石破は「その場限りの理路整然」の傾向があるが、気をつけた方がいい。竹下登の口癖「理路整然と間違う」の常習犯にならによう忠告しておく。
 

自民党執行部が煮え切らないのは通常国会で問責決議を可決させた経緯があり、この効果を持続させたいという思いがあるのだ。しかし事態はめまぐるしく展開しており、過去の問責を軸に野田を解散に追い込むことは極めて難しくなっている。


逆に赤字国債発行法案を前に審議拒否をすれば世論の矛先は確実に自民党に向かう。自民党は新戦術、つまり「寝る」のではなくて「起きて暴く」しか方策は無くなってきているといってよい。
 

それには常に急進的な「関東軍」となる参院自民党を押さえ込まなくてはなるまい。安倍も参院との調整の必要を漏らしている。しかし毎日によれば自民党参院国対委員長・脇雅史は23日開かれた参院野党国対委員長会談で「政府提出法案に協力することはあり得ない」と前置きしながら、特例公債法案について「自民党が(反対ではなく)欠席すれば参院で法案は成立する」と述べたという。


苦肉の策だがこのような手段を講じてでも、国会審議は拒否すべきではあるまい。むしろ蛮刀を振りかざさずに、赤字国債や定数是正にけりをつけつつ、野田を解散へと追い込む高等戦術に転換すべき時だろう。それが出来るかどうか。執行部の能力を問われている場面だ。


<今朝のニュース解説から抜粋>    (政治評論家)
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