2012年10月29日

◆解散をめぐり土壇場の攻防へ

〜臨時国会開幕〜

杉浦 正章



29日からの臨時国会は冒頭から政治史上でも希有な「解散」をめぐっての激突状態に突入する。閉会中は政権サイドの解散先延ばしの“宣伝”が先行してきたが、今後は野党攻勢で政界の雰囲気は解散がいつあってもおかしくない方向へと転ずる。参院では首相・野田佳彦の所信表明演説すら出来ない異常事態だ。


既に野田は、「1票の格差」是正を理由に衆院解散を先送りする考えがないことを示すなど、じりじりと土俵際に後退し始めた。自民党は解散戦術を転換、審議拒否は基本的に回避して審議に応じつつ、政権の弱点を突き、解散に追い込む方向を選択した。鹿児島3区の衆院補選で自民党候補が辛勝ながら勝ったことも解散攻勢に弾みが付くだろう。
 

国会閉会中は野党も解散に追い込む手段が全くないわけだから、自公首脳らの発言も何を言っても犬の“遠吠え”に過ぎない。しかし国会がひとたび開会されれば事態は逆転する。“遠吠え”が“噛みつき”可能な距離まで接近するのだ。焦点は赤字国債発行法案と定数是正法案が軸となるが、当初の自民党戦略の欠陥はこれを人質化しようとしてきたことだった。


確かに最近“狡猾さ”が目立つ野田のことだから、法案が成立すれば“食い逃げ”に出る可能性は否定出来ない。しかし自民党が国民生活と違憲訴訟に直結するような法案の成立を止めるほうが、解散先送りの口実をあたえることになる。全国紙の社説も、法案を成立させれば自民党の責任政党としての立場を支持し、野田に臨時国会での解散を求める論調を一層強めるだろう。
 

法案人質化などより、攻撃の材料は山ほどあるのだ。まず大局的には「近いうち解散」を言いながら公党間の約束を臆面もなく踏みにじっている野田の政治姿勢が最大の追及テーマとなる。次に首相としての“能力”が問われる。


消費増税はたしかに野田の“手柄”だが、自公の助けなしには実現しなかった。自らの能力だけでは成立は不可能であったのであり、野田の“能力”発揮ではない。先の改造劇で滞貨一掃のごとき人事を断行、直ちに法相辞任を招いた事が象徴するような統治能力の欠如が、俎上(そじょう)にあがるのだ。


外交面では前元首相と全く同じの大失態が問われる。尖閣国有化のタイミングだ。中国国家主席・胡錦濤が反対を表明した翌日に閣議決定をすることはなかった。あまりにも稚拙な外交であり、当然責任は問われなければなるまい。


加えてかってない3流閣僚で構成した結果、国会は舌禍国会の様相を浮き彫りにするだろう。全く財務に経験のない財務相・城島光力と駄弁の文科相・田中真紀子など野党が狙いをつける対象には事欠かない。これで解散に追い込めなければ自民党総裁・安倍晋三も幹事長・石破茂も逆に責任を問われる。おそらくかさにかかって責め立てるだろう。
 

こうしてまさに「背水の陣」に追い込まれるのは野田政権だ。民主党内はまだ依然として“解散恐怖症”が根強いが、一部にある衆参同日選挙論などは“噴飯物”であり、とてもそこまで政権は持たない。野田の支持率急落を見て、ようやく党内には解散を先延ばししては当選する議員も落選しかねないという危惧が中堅議員の間で出始めた。

現段階で確実に当選圏内とみられる民主党議員は筆者の見たところ70人は固く、当落線上が30人というところだ。これが野田の支持率が竹下並みに3%まで下落した場合をシュミレーションすると、当確が40〜50人止まりになりかねないのだ。遅ければよいというのは大きな誤算であることが分かって来つつある。また鹿児島補選で接戦だったことで、やり方次第で切り抜けられるという見方も生じている。
 

こうしたなかで野田の心境は大きく揺れている。半世紀近く首相の動揺ぶりを観察してきたが、追い詰められた“死に体”の首相は自分に言い聞かせるように強く出たり、急に弱音を吐いたりする傾向がある。これを繰り返しながら一歩一歩「退陣」への道筋をたっどってゆくケースがほとんどだ。突っぱねて予算編成はおろか来年の通常国会までやる姿勢をみせても、砂上の楼閣である事がやがて分かるだろう。


最近の野田は突っ張りからやや弱音に向かってきた。その証拠の発言が1票の格差が改定完了前でも解散ありうるとする27日の発言だ。野田は「国会で法律を改正し、国民への周知作業などを経てから選挙を行うのが、一般論としての筋だ。ただ、国民に信を問う状況が生まれれば、総理大臣の専権事項として、自分なりの判断をしなければならない」と述べたのだ。


臨時国会で衆議院の選挙制度改革関連法案が成立した場合、区割りと周知期間が終わっていなくても、衆議院を解散することはあり得るという考えを示した。改正した段階で解散権を行使できるという解釈だ。幹事長・輿石東もこれに追随している。いずれにしても解散という政局の核をめぐる興亡は土壇場の状態に移行する。

<今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

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