2012年11月06日

◆「暴走婆」田中が民主政権にとどめの一撃

杉浦 正章
 


「暴走馬」ならぬ「暴走婆(ば)」が予想通りの再登場である。思いつきのごとく文科相・田中真紀子が3大学による来年度の新設申請を不認可と裁断した。「学生も職員も人生が大きく変わる」(自民党総裁・安倍晋三)という愚挙だ。


問題は首相・野田佳彦も官房長官・藤村修も事前に報告を受けながら、問題の所在を掌握せず、これを黙認したことだ。当然野党は最大の追及材料が転がり込んだことになる。政権全体の責任問題として野党は追及することになろう。
 

安倍は5日のテレビで珍しく個人攻撃に出た。田中が秋田公立美術大、札幌保健医療大、岡崎女子大の新設申請を却下したことに関して「彼女と一緒に仕事をして彼女を褒める人を1人も見たことがない。日日言うことが違うし、平気でうそを言う。性格的な問題に根ざしていて、尋常な人ではない」と切り捨てたのだ。


たしかに立ち居振る舞いは尋常ではない。過去に文科相の諮問手続きを経て何年も検討した揚げ句、認可する直前にまでいっていた問題を根底から覆したのだ。答申が覆された例は、少なくとも過去30年間はない。雨後の竹の子のごとき“駅弁大学”制度を変えたいのなら、制度を中央教育審議会などを経て正面から改革すべきであり、既に文科省が積み上げた個個の新設方針をひっくり返しても制度は改正されない。短絡の極みのパフォーマンス政治である。
 

田中の言動の根底を分析すれば、ファザー・コンプレックスにたどり着く。そこには父・角栄の天才的なひらめきの政治があり、娘として常に比較されるから、これを何とか乗り越えたいという願望が深層心理に存在するのだ。


ひらめきの政治と言うが角栄は、常に人一倍努力をする政治家であった。多忙な昼間を避け、深夜に起きて役所の文書にすべて目を通し、頭に入れた上で物事に対応した。人間関係はとりわけ大切にした。ひとたび接した官僚は、手のひらの玉のごとくいつくしんだ。その上での指導力の発揮であり、今の民主党政権のように頭から官僚を批判し遠ざけてしまっては、政治主導など成り立つわけがないのだ。
 

真紀子を「じゃじゃ馬」と呼びつつも愛していた田中は、何とかこの性格を変えられないかと日日悩んでいた。時には喧嘩して家中追いかけ回すこともあった。ある朝筆者が、朝駆けすると手に包帯を巻いて出てきた。真紀子を追いかけて転んでねんざしたのだ。しかしこの田中の努力は徒労に終わった。真紀子は政治家になると、異常なまでの独善主義に陥った。父親とは似ても似つかぬ鬼っ子になってしまったのだ。


田中でも教育し切れなかったじゃじゃ馬が野に放たれたのだ。外相になれば「外務省は伏魔殿」と、よって立つ基盤を批判。「人間には三種類ある。家族と使用人と敵だ」と、人間関係至上主義の父親とはまるで異なる宇宙の怪獣のごとき政治家となったのだ。
 

一番悪いのは真紀子が、父親の血と汗の努力の上で打ち出す天才的なひらめきの政治のうわべだけを真似するようになったことだ。それも洞察力も展望もなく単純計算でマスコミに売り込めると考えて見当違いの“ひらめき”をするのだ。安倍が「人の人生が変わるような問題は、普通の人なら考えるが、考えないのが田中さんだ」と形容したとおりだ。これが3大学の新設却下の根源にあるのだ。


それにつけても目につくのは事務次官以下官僚のだらしのなさだ。自分が積み上げた政策をひっくり返されても、卑屈に揉み手のお追従を繰り返しているのだろう。職を賭して大臣をいさめるべきところを、それをする官僚はいない。どうせ政権交代ですぐ辞める大臣に、首を切られても仕方がないというのが文部官僚の自己保身の本音であろう。
 

加えて、藤村がはからずも述べた問題がある。それは藤村が、記者会見で事前に田中から新設不許可の方針について野田や藤村に報告があったことを認めた点だ。おそらく問題の所在を把握せず、軽い気持ちで聞き流したのだろう。これは野党の追及のポイントになる。政権ぐるみでの対応への追及となる。


自民党幹事長・石破茂は「いかなる根拠に基づいて審議会と違う見解を示したのか。法的に瑕疵があったのか。思いつきではないということをきちんと述べてもらわない限り、誤った政治主導だ」と発言、追及の構えだ。


3大学の申請については、田中が誤りを認めて撤回して責任を取るしか方法はあるまい。撤回しなければ安倍が認可を認めているように政権交代で認可されることになる。


いずれにしても内政・外交上の失政を繰り返して国民を苦境に追いやる民主党政権は、国内に“北朝鮮”を抱えているようないら立ちを感ずるようになった。首相・野田佳彦は早期に解散して政権交代をしなければ、国家が危機的状態に陥ることを認識すべきだ。


<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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