2012年12月10日

◆政治家が泣いちゃいけない

渡部 亮次郎


私が秘書官として仕えた元外務大臣、厚生大臣の園田直(そのだ すなお)はハンカチを絶対使わなかった。毎朝、天光光(てんこうこう)夫人がズボンのポケットにハンカチを忘れずに入れるのだが、外では絶対使わなかった。

日中平和友好条約の締結交渉は真夏の人民大会堂で行なわれたが、流れる汗は拳で払っていた。

「ハンカチ? 泣いている園田という写真説明を附されたらおしまいじゃないか」。欧米で政治家が大衆の前で泣くという自己抑制力の無さをさらけ出したら政治家失格の烙印を押される。日本とて同様と言うわけだった。

大東亜戦争で陸軍特攻隊に志願しながら敗戦で奇跡的に生き残った園田氏。豪胆にして情感豊かな政治家だったから、水俣病を公害と認定する前など、泣きたいような場面には何度も遭遇した。しかし絶対涙は見せなかった。ハンカチで顔を拭うこともなかった。

ところで古い産経新聞の【産経抄】によると、「▼昭和の政治家に比べ、現代の与野党の皆さんが何ともひ弱に見えてならない。例えばある経済産業相である。菅直人首相の原発政策を批判、辞任の意向を示すなど対立を深めてきた。辞めれば「菅降ろし」の決め手になるという、今「注目の人」だ。


▼首尾よく退陣に追い込めば「次」の有力候補にもなる。その氏が(2011年)7月29日、国会の委員会で「号泣」したのだという。野党議員から「いつ辞めるのか」と突っ込まれると「もう少しこらえてほしい」と涙ぐみ、しまいには大泣きだったらしい。

▼首相への反発や原発政策など苦悩が重なったため、との解説もある。確かに、将来のエネルギー政策という重い課題を背負っている者として感きわまったのかもしれない。

だが国民みんなが政治にイライラしているとき、大臣に泣かれてしまっては、一段と気が滅入る」。とある。テレビニュースでこの場面は私も偶然見た。

記者として、大臣側近として永らく政治の現場を踏んだが、人前で泣いた政治家は初めて見た。逆に言えば自己抑制の利かない政治家の第一号といわれても文句は言えまい。

省みれば昭和の政治家たちは宮澤喜一を除けば、戦争に関係し、戦場で弾丸に晒されながら生き抜いてきた「勇士」だった。だから「度胸」があった。

ある意味で戦争が度胸の据わった政治家を育てたともいえるのだろう。だから戦争を起こせとはいわない。だが、平和な世の中では、「立派な政治家」は高望みなのだと覚悟を決める以外に無い。(文中敬称略)


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