仙田 隆宣
今、「奄美に関する2冊の本の復刻版の出版」に関わっている。
1冊は、「奄美大島に於ける家人(ヤンチュ)の研究」という本である。
この本は「名瀬史誌」編集委員会の資料編として無料頒布された本である。
印刷・製本した会社は「鹿児島県教員互助会 印刷部」である。
この団体は、かつては印刷・出版の事業もやっていたのだ。当時の鹿児島県の出版物のほとんどはここの印刷・製本によるものである。そういう面では鹿児島県の出版文化に深くかかわっていたと言える。
著者は金久好という人物で、東京大学経済学部の大学院生の時の論文で、奄美大島に於ける「家人」の調査をした唯一の資料である。
「家人」というのはいわゆる債務奴隷で、封建社会の奄美では奴隷制度が歴然としてあったのである。
このことを学生だった金久好が、自分の出身地である瀬戸内町を中心に丹念に聞き取り調査し研究した資料で、「家人」の実態を伝える極めて貴重な文献である。
この本は古書店でもほとんど見かけることはないのだが、たまに見かけるとすれば何万という高価な値がつく貴重本となっている。
この金久好は長命で、99歳で2010年に亡くなった。ぼくは、その時、東京に来ていたのだが会っておけばよかったと後悔した。もっともも亡くなったことを知ったのは新聞紙上だったのだが・・・。彼の死亡記事は全国紙・地方紙問わず、全ての新聞に掲載されていた。彼が日興証券の副社長まで務めた人物だったからである。
この本を出来るだけ多くの人に読んで欲しいと思い、復刻版の出版を南方新社の社長にお願いしたのである。当時の本は活字を組み合わせた活版印刷であったため誤植もかなりある。
元の本を写真で撮って、誤植部分だけ活字を入れ替える方法もあるようだが、ぼくは息子の力を借りて全文を打ち直し、データ化した。その作業に相当な時間がかかってしまった。やっと校正も終わり、遺族の了解を取る段階まできた。
もう1冊は、「復帰運動の父」と言われた泉芳郎の詩集の復刻版である。
奄美復帰60周年の今年この本を出版しないと機会を失うということで、この話は南方新社の社長から相談を受けた。遺族を探し出すのに手間取ったが、泉芳郎の末弟が茨城県取手市に在住していることが分かり連絡を取った。
89歳の高齢なのだが、はっきりした応対で感服した。復刻版の出版は心から喜んでくれた。泉芳郎のノートも残っているらしい。それも詩集の中に新たに入れられないか検討しているとのことである。
仕事の合間のこういう仕事は楽しい。気分的にゆとりはないのだが、一つひとつ実現に近づいていくことが嬉しく、何より「奄美に関わっている」という実感が、気分を高揚させる。ありがたい。
<奄美大島郷土愛好家>