向市眞知
当病院で「緩和ケアチーム」が動き出しました。当病院では栄養サポートチーム、感染制御チーム、褥瘡対策チームに続く4番目のチーム医療となります。
メンバーは癌の痛みのコントロールをおこなう麻酔科医がリーダーで、精神的な苦痛として表われる不安や抑うつ症状、不眠などに対して薬物治療を中心にかかわる精神科医と、緩和ケア研修を修了した看護師の3名が中心メンバーです。
この3人を支えるメンバーとして、癌に対して手術、放射線治療、抗癌剤治療をおこなっている外科医師、婦人科医師、内科医師、癌の化学療法の専門知識と技術で副作用の緩和にあたる癌化学療法認定看護師。
それに自宅療養を希望される患者の条件づくりと在宅介護をする家族の不安解消に力を発揮する在宅支援看護師、痛みや吐き気、嘔吐、倦怠感などの症状緩和のために適切な薬をえらび患者に服薬指導をおこなう薬剤師、食欲がなくなったり、口からごはんが食べにくくなった時などの食事を考えてくれる栄養士。
精神的な苦痛を訴えられる患者のサポーターとしての精神保健福祉士、治療費負担や家族にも及ぶ生活への不安に対して、社会保障制度を駆使して負担の軽減を図ろうとする医療ソーシャルワーカーという多職種からなるメンバーで構成されています。
それぞれの職種がまず、癌患者に対して何ができるのかという議論がありました。そのうえで当院チームの方針を立てました。ホスピス、緩和ケアの基本的な考え方をたたき台にして「その人らしい生き方を実現させる」という理念のもとに8つの方針が立てられました。「患者は医療者と対等な存在である」、「患者があるがままの気持ちを自由に表現できるように支援する」、「家族を患者と同じくケアの対象とする」などの方針です。
これらを方針として掲げたのは、緩和ケアチームの決意の現れです。一般病棟のなかで他患者と病室を同じくする中で行う緩和ケアなので、100%のケアは今できません。
まずは疼痛コントロールがうまくいかない患者や、不安や抑うつ症状を表出している患者を対象として、主治医から相談を受けて麻酔科医、精神科医、緩和ケア研修修了看護師と薬剤師が面接します。患者と主治医の関係を中心にして主治医をサポートする体制をとっています。
癌治療の初期から平行して緩和ケアを開始します。そして月一回のミーティングでチーム全員による意見交換を行い、ケアの方針を立てています。まずは痛みの緩和からスタートさせています。最終的には家族のケアが実践できるまで力量をつまなければなりません。
癌による年間死亡者が30万人で、そのうち緩和ケア病棟を利用できた患者は2.5%しかいないといわれています。多くの癌患者は中小規模の病院で終末期を過しています。2004年に厚生労働省がおこなった、50〜300床の中小規模の一般病院の調査では中小病院の入院患者のうち終末期患者の占める割合は9.1%です。
それら中小病院で、余命が半年以下になってはじめて患者に病名を告知している割合が46%、家族にだけ告知している割合が96%、患者自身に延命処置を希望するかどうか確認している割合は15%という調査結果でした。
自分の病名も知らずに、適切な医療が行われているのかどうかも判断できないまま、自分の希望も告げることのないままに、命を終えてしまっている患者の多さに、「病院って無法地帯?」と疑いをもってしまいます。
やっと動き出した当病院の「緩和ケアチーム」。できるところから、できることをはじめていくことが大切と思っています。
大阪厚生年金病院 ソーシャルワーカー
2007年01月26日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック